道路構造物ジャーナルNET

シリーズ「コンクリート構造物の品質確保物語」㉗

群馬県編③ 数値化や施工プロセスの評価が施工者の意識向上につながる

横浜国立大学
大学院 都市イノベーション研究院
教授

細田 暁

公開日:2018.08.16

 群馬県におけるコンクリートの品質確保の取組み第3回目は、取組みを進めて行くなかでの施工者の意識変化や現場での工夫、産官学協働が施工者にもたらすものについて、河本工業の金子智彦執行役員に聞いた。(聞き手:細田暁横浜国立大学教授 編集:大柴功治)

取組みのなかで施工業者の意識が変化
 面倒くさいという感覚はなくなる

 細田 コンクリートの品質確保の取組みが長い期間を経て行政の正式なシステムとして運用されることは画期的なことだと思います。金子さんは最初の頃から取組みに関わっていらっしゃいましたが、どのように感じていますか。
 金子執行役員 群馬県の方々が中心となって進められて、私はそのサポートをできるだけしてきたという立場です。実際は、県の方がまとめられてきたことが成果になりました。
 私が研究会に入ったのは第2回目の会合からです。参加当初はそのようなことまでやるのかと感じましたが、最近はそこまで考えてやっているのか、という感覚に変わりました。
 関わっている官民の方々も面倒くさいという感覚はなくなりました。取組みに対するアンケート結果も出てきており、少しずつですが業者の意識も変わってきていると思っています。
 細田 群馬県はアンケートをかなり取っています。私は面倒くさがりで集計するのも面倒と思ってしまいます。アンケートを取ると方向性が変わったり、改善したりする効果はあるのですか。(回答者が)どのように思っているかを定量的に把握できるのですか。
 金子 本当にきちんと回答しているのか? ということをおっしゃりたいのは分かりますが、まとめてくれた結果をみると、回答者の考えていることやニーズがわかります。考え方が変わってきたことも実感しています。

指標の増加と点数化により意識が向上

 細田 金子さんは施工者の方々の気持ちがわかると思うのですが、施工者の雰囲気は本当に変わっていったのですか。
 金子 他社さんとの交流の場がそれほど多いわけではないので、すべてはわかりませんが、当社のことを話しますと、先輩方がその時代でさまざまな構造物においてきれいなコンクリートをつくろうと試みていたので、そのような意識をもって施工はしていました。
 加えて、近年は品質確保の取組みが始まって、定量化できることが多くなってきました。これまでは、コンクリートの圧縮強度しか定量化していませんでした。しかし、ここ数年の取組みにより、目視評価で砂すじや打重ねの良し悪しに点数がつくことや、表層品質試験でコンクリート表層の緻密さがある程度数値化されるなど、指標になるものが増えてきました。
 当社でも現場に携わる技術者・技能者がそれらを意識して、これまで以上に気泡がでないように施工する、などの意識が上がってきたことが見受けられます。点数がつくことが意識の向上につながっていると思います。

施工プロセスもチェックシートを使って評価
 発注担当者が現場に来る回数が増加

 細田 努力したことが適切に数値に出れば、モチベーションにもなります。逆に数値として出ると、モチベーションが低下するような指標もあります。ひび割れなどがそうですが。
 金子 施工プロセスもチェックシートを使って評価をしてくれることになりました。きちんと施工はしたけど、ひび割れが発生してしまった、という対話になります。次の施工時はこの部分を直してがんばろうということを言い合えて共通認識化できるようになったことや、結果について発注者と施工者で合意できることは、モチベーションの向上になると思っています。
 細田 現場によって違うとは思いますが、発注者との意味のある対話は増えていますか。
 金子 発注者の担当者次第ですが、少しずつ変わってきていると思います。チェックシートができて、現場を見に来る回数が増えたと聞いています。
 これまで県の職員さんは現場にほとんど来ないことが多かったのですが、品質確保の取組みで、職員さんも何を見に行けばいいのかポイントがわかるようになったと思います。ただ見に来るのではなくて、見るポイントを決めていただいて、来てくれるということだけでもずいぶん進歩していると思います。

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