シリーズ「コンクリート構造物の品質確保物語」㉓
沖縄県におけるフライアッシュコンクリートの配合及び施工指針(案)の概要~2017年12月に策定~
琉球大学工学部
工学科(社会基盤デザインコース)
准教授
富山 潤 氏
【共著】
アール・アンド・エー
代表 風間 洋 氏
沖縄県土木建築部 技術・建設業課 技術管理班
班長 砂川 勇二 氏
沖縄県建設技術センター 試験研究部 試験研究班
主任技師 比嘉 正也 氏
1.はじめに
2015年に道路構造物ジャーナルの連載にて「沖縄県の離島架橋の整備状況とコンクリート構造物の耐久設計・品質確保に関する取り組み」という記事を投稿させて頂き、沖縄県の厳しい自然環境に対するコンクリート構造物の劣化事例や対策などの紹介を行った。そこでは耐久性への取り組みの概要として、2015年1月31日に開通した伊良部大橋にフライアッシュコンクリート(以下、FACと称す)の活用事例を紹介し、さらに伊良部大橋以降にFACが用いられた、あるいは利用が検討されているコンクリート構造物の紹介を行った。また、課題として、FACの利用に関する指針やコンクリート構造物の品質確保への取り組みをあげた。
そこで、今回の投稿では、初稿の課題のうち、進展のあったFACの指針について、「沖縄県におけるフライアッシコンクリートの配合及び施工指針(案)、(以下、FAC指針(案)と称す)」[1] が2017年12月に策定されたことを受け、FAC指針(案)に示された配合決定の根拠とFAC指針(案)の概要を紹介する。
2.フライアッシュコンクリートの指針
沖縄県は、亜熱帯海洋性気候に属する島嶼県で、年間を通して高温多湿である。このため、コンクリート構造物は、塩害劣化が促進されやすい厳しい環境下にある。また、近年では遅延膨張性骨材によるアルカリ骨材反応(ASR)も確認され[2]、多くの離島架橋を有する沖縄県では、コンクリート構造物の耐久性向上・長寿命化が重要課題となっている。このような状況の中、宮古島と伊良部島を結ぶ伊良部大橋(2015年1月31日供用開始)は、100年耐久性を目指し、耐久性向上対策として沖縄県土木建築部管理橋梁では初めてのFACを採用して建設された。
この実積を受けて、県内の重要構造物においてFACの利用促進が図られてきたが、沖縄県にはFACに関する指針やマニュアル等がなかったため、各現場において、その都度、専門家の意見や助言を受け、FACの検討および採用が決定されていた実情がある。そのため、沖縄県土木建築部では、コンクリート構造物の耐久性向上や長寿命化を図るとともに、産業廃棄物の有効利用による環境負荷低減効果を目的にFACの配合方法や施工に関する標準的な考え方を示したFAC指針(案)を策定した。なお、本指針(案)は、沖縄県が調査検討によりその性状・品質等を確認してきた県産の分級フライアッシュを対象に作成されたものである。
FAC指針(案)では、従来のレディーミクストコンクリートと同様の製造・強度管理が可能なFACとして、耐久性向上効果等の目的に応じ、3つの配合タイプを示しており、県内土木工事のほとんどを網羅できる配合案となっている。本指針(案)については、沖縄県土木建築部 技術・建設業課のホームページから参考資料を含む全文(PDF形式)をダウンロード可能である。
「沖縄県のコンクリート構造物の耐久性向上に向けた取組み」
http://www.pref.okinawa.jp/site/doboku/gijiken/kanri/jigyou/concrete.html
3.フライアッシュコンクリートの配合ポイント
沖縄県では、主に水和熱による温度応力の低減、塩分浸透抑制およびASR抑制の3つの耐久性向上を目的にFACの配合を決定している。
表-1には、目的とする耐久性効果(使用目的)と、セメントと質量置換するJIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」に規定されるフライアッシュ(以下、FAと称す)の質量%を示している[3]。ここで、沖縄県内で産出されるFAは、JIS Ⅱ種FAであり、同表から前述の3つの耐久性向上が期待できる置換率は、20~30%(内割り配合)である事がわかる(表中青色表示)。なお、沖縄県産のJIS Ⅱ種FAは、5年間のデータから安定している事が確認されている[4]。しかし、FAの品質は、原料となる石炭に依存するため、継続した品質確認が必要である。
4.調査検討事項
沖縄県では、フライアッシュコンクリートの採用検討において、前述の3つの耐久性向上に加え、フレッシュ時の性状確認や強度増進の確認などの調査が行われている。実施された検討内容を以下に示す。なお、前述のとおり、検討結果は県産の分級FAを用いて実施したものである。
4.1 フライアッシュコンクリートの耐久性検証
表-2は、伊良部大橋で採用したFACとその基本配合であり、FAは、セメントの一部と置換する配合(内割り配合(F1))と、細骨材の一部と置換する配合(外割り配合(F2))に分けた配合量を示している。FACの耐久性検証には、これらの配合を用いて行われた。