-分かってますか?何が問題なのか- ③「道路メンテナンス会議」は本当に機能し始めたのか
これでよいのか専門技術者
(一般財団法人)首都高速道路技術センター
上席研究員
髙木 千太郎 氏
2012年(平成24年)12月の中央道・笹子トンネル事故を契機に国内においてメンテナンスの必要性が叫ばれ、道路橋などの道路施設において「安全・安心」を国民に提供する大きな役割を担っている?はずの「道路メンテナンス会議」は本当に機能し始めたのか!について私の感ずるところを述べることとする。
1.「道路メンテナンス会議」の役割について
国土交通省から公表された資料によると、適正な道路管理を行わなければならない管理者である都道府県(特に、市町村)が抱えている課題は、資金の不足、人員の不足、技術力の不足であり、それら課題解決のために国として支援する具体的な方策の一つが「道路メンテナンス会議」であると示されている。ここに示されている「道路メンテナンス会議」とは、種々な道路施設を計画的、効率的・効果的に維持管理、補修・補強、更新等を行うために都道府県単位で全国に設置され、各道路管理者が相互に連絡調整し、協力して情報の共有や発信を行うことによって、点検・診断や修繕計画等の調整、技術基準類の理解、技術の研鑽、技術的支援等を促進する等、道路施設の予防保全・老朽化対策を強化することを目的としている。
写真-1 道路メンテナンス会議
具体的な取り組み内容は、第一は、橋梁等の点検・診断等に関して、社会的に影響の大きな路線や構造が複雑な施設等について必要があれば、国の職員等から構成される『道路メンテナンス技術集団』を当該組織に派遣し、『直轄診断』を実施し、支援結果等を記録するなど、技術的支援の体制や制度を構築するとしている。 その際、財源の不足については財政的支援も含めて国が支援を行うこととなっている。第二には、高度の技術を要する橋梁等の緊急的な修繕・更新については、地方自治体に代わって国による業務の代行制度を活用するとしている。 さらに、重要性、緊急性の高い橋梁等は、利用状況を踏まえた集約化・撤去を進めつつ、必要に応じて、国や高速道路会社等が定期点検や修繕等を代わりに行うと考え方によって手厚い補助体制である。なお対象としては、高速道路などの幹線道路ネットワークや新幹線等の主な鉄道ネットワークに架かる橋梁等としている。 第三には、メンテナンス体制を強化するため、地方公共団体の職員や民間企業の社員も対象とした研修を充実し、専門技術者の育成をも行う考えである。第四は、請負業務として好ましい契約状態となっていないメンテナンス関連業務の発注において、地域単位での一括発注や複数年契約など効率的な方式を導入するとし契約制度の変更をも行おうとしている。ここで示した支援体制は、国内のメンテナンスにおける現状を知らない人々から見れば全国津々浦々安全な道路が確保され、これで国内の道路管理体制は完璧になったと感ずる人々が多くなるかもしれない。しかし、施策の発表から1年と数か月が経過した国内の状況を見ると、元の状態に戻りつつあると疑問に感じているのは私だけではないと感じている。スタートの勢いは良かったが、メンテナンスに取り組み成果が発現するレベルは産官学ともに同様で、空回りし遅々として進まないのが現状である。なぜ国内に適切なメンテナンス執行のサイクルが回らないのか海外情報の収集という観点から考えてみる。