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東日本高速道路 維持管理リレー連載⑤

関東支社管内の高速道路における橋梁の劣化と維持管理

東日本高速道路株式会社
関東支社
技術部 構造物指導担当専任役

鈴木 裕二

公開日:2015.03.20

 1.関東支社管内の概要

 関東支社は、現在、20路線1,305㎞の道路管理と144㎞の道路建設を担当している(H27.2.1現在)。道路管理延長に対する橋梁の比率は約16%であり、橋梁種別は鋼橋が55%、PC橋が30%、RC橋が15%を占めている。
 関東支社管内の交通状況(H26年データ)は、全体日平均交通量が約42,400台/日で、最大区間交通量は約126,000台/日である。また、大型車混入率は、高速全体平均で約25%である。
 関東支社管内には、第三京浜道路や京葉道路等の供用後50年を越える路線があり、橋梁年齢が30年を超過する橋梁が3割を占め、そのうち、50年を超過する橋梁が約3%含まれている。5年後には30年を超過する橋梁が4割を越えるとともに、経過年数が60年を超過する橋梁も現れ、急激な老朽化による損傷の増加が懸念されるところである。

 



 

 2.橋梁の変状・損傷に対する桁端漏水対策等の技術開発・運用

 関東支社においても、東日本高速道路㈱の他3支社と同様に上信越道や関越道、東北道の山間部が管理区間に含まれており、12月~4月の間は凍結防止剤散布等の雪氷作業を実施している。凍結防止剤の散布量が年間50㌧/kmを越える区間もあり橋梁構造物に対して厳しい状況となっている。
 橋梁構造物の劣化は「水」が大きくかかわっている。特に寒冷地の道路は、凍結防止剤として塩化ナトリウムも使用されることから、塩害、アルカリ骨材反応及び凍害の発生が多く見られる。「水」に起因する劣化箇所としては床板と支承を含めた桁端が挙げられる。床版は近年性能の高い防水層施工が高速道路では標準となり、今後その効果を大きく発揮することが期待される。しかし、遊間の狭い桁端からの漏水に起因するコンクリートの劣化、鋼製支承や鋼桁の腐食は、補修を行ってもその原因となる漏水を防止しない限りいずれ同じ状態になるのは明らかである。また、以前は伸縮装置を止水型に変える以外に狭い桁端の遊間を止水する方法がなく、伸縮装置が健全な場合、全く手つかずの状態でもあった。このため、桁端漏水対策工法の必要性を考えて約7年前から桁端止水工の開発を開始した。様々な構造・施工条件に対応した対策工法を検討・開発し、昨年これらをまとめて「桁端漏水対策工法の手引き」を作成して、関東支社管内に配布、周知を図っているところである。以下に、これらの内容を中心に紹介する。

 2.1 伸縮装置が健全で、止水機能を追加する場合
 (1)基本的な考え方
 伸縮装置の車両走行上の機能は果たしているが、止水機能が欠損、あるいは劣化して漏水がある場合、止水機能を追加する必要がある。遊間の幅や施工条件から選定する工法を分けている。検討の流れを図―1に示す(なお、超小遊間止水工法は現在開発中である)。

 

      
               図―1 止水機能を追加する場合の検討の流れ

 

(2)小遊間止水工法
 小遊間止水工法は、今まで手が入らず止水ができなかった遊間が30㍉から80㍉までの橋梁に適用する。施工は遊間内に渡して張ったワイヤーを用いて施工する。ケレン洗浄の後、ワイヤーから吊した充填バッグを遊間内に通し、この中にシール材を注入する。充填バッグは上面のみ細孔があいてあり、シール材を充填バッグに注入すると最初に壁面に密着するようふくらみ、さらにシール材を注入すると細孔のある上面にシール材が漏れ出し、止水層を形成するものである。施工手順を図―2に示す。なお、本工法は伸縮装置の側面から施工するため、交通規制の必要がないものである。現在まで約600㍍の施工実績を有している。

 


                            図―2 小遊間止水工法施工手順

 

(3)中遊間止水工法
 小遊間止水工は充填バッグがバックアップ材として働く。しかし、遊間が80㍉以上になると自重が大きくなり、現在の方法ではワイヤーの固定ができない。また、伸縮量が大きいと上部工伸縮により、ワイヤーが遊間中心から外れ、充填バッグを吊すワイヤーがシール材を痛める可能性がある。このため、図―3に示す断面の構造を考え、充填バッグの両端にバックアップフォームを設置し、バックアップ部の重量を軽減するものとした。また、写真―1のような構造で桁が伸縮してもワイヤーの位置を常に遊間中心にあるものとした。なお、この工法は施工総研にてネクスコが定める性能試験に合格しているものである。

 


        図―3中遊間止水工法断面図               写真―1 中遊間止水工法ワイヤー固定構造

 

(4)分割鋼製ジョイント二重止水工法(シームレスW止水工法)
 鋼製ジョイントは車線ごとに交通規制を行って設置するため、必ず伸縮装置に接続箇所が生じてしまう。このため、止水材もこの部分で不連続となる。現在ネクスコではこの接続部の止水性も試験に合格しなければならない。試験時の接続は直線となるが、現地では車両が通行するために直接測量ができず、接続部で折れ曲がることがある。これでは試験体での止水性が確保されてるといっても現地では止水性が確保されない可能性がある。また、二重止水の樋は一般に伸縮装置の下面に設置されるため、固定する箇所のコンクリートが十分に充填されない可能性がある。(写真―2 鋼製簡易ジョイントの施工例)

 

          
                   写真―2 鋼製簡易ジョイントの施工例
 このため、止水材及び樋に継目のない構造を考案した(図―4参照)。鋼製ジョイント内にC型形鋼を溶接しておき、二重止水となるゴム板の上にシール材充填バッグを乗せ、その両端にワイヤーを巻いたものをC型形鋼の中を通す。橋梁横断方法に一枚の樋が形成されたのち充填バッグ内にシールを充填することにより、止水シール材及びゴム樋(二重の止水)に継ぎ目がない(シームレス)ものが形成できる。

 


               図―4 分割鋼製ジョイント止水構造
     
               写真―3 鋼製ジョイント接続部施工状況

 

 この工法は施工総研で伸縮量100㍉の止水性能試験に合格している。また、本工法は製品ジョイントのみならず、鋼製フィンガージョイントにも適用可能である。乾式止水材と同様に手が入る伸縮装置の止水工法にも適用できる。斜角がきつい場合は乾式よりも変形に追従できるので長期耐久性があると考えられる。
 (5)桁下から直接施工できる場合
 このような場合は乾式止水工を施工する。同様にシームレスW止水工法も可能である。

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