オイルダンパー、鋼材ダンパー代替、新しいクレビスも開発
首都高速道路 新しい制震装置を続々と開発
首都高速道路は清水建設と共同でこれまで橋梁の制震装置として使われてきたオイルダンパーに代わる高性能制震装置として「橋梁用ダイナミックスクリュー(DS-DP)」を開発した。また、青木あすなろ建設と共同で橋軸直角方向の鋼材ダンパーに代わる制震装置として「橋梁用ダイス・ロッド式摩擦ダンパー(DRF-DP)」を開発した。さらに、こういった橋軸・橋軸直角方向用ダンパーが両立できるよう横河ブリッジ、オックスジャッキと共同で上下だけでなく横方向にも可動可能なダンパー用クレビス(取り付け金具)「ユニバーサルクレビス(U-CLV)」を開発した。DS-DPとDRF-DPはいずれも建築用途で実績のある制震装置で、これを橋梁用途にカスタマイズしたものだ。
DS-DPは、ボールねじ機構を利用した回転慣性質量ダンパー(下図)だが、外観は既存のオイルダンパーと似ており、橋桁と橋脚間に取り付ける手法は変わらない。ただし、制震機構は全く異なり、地震時に橋桁の水平運動を錘の回転運動に変換し、エネルギー吸収することで橋桁の移動量や橋脚や基礎への負荷を軽減する。ボールナットと一体化したフライホイール(回転錘)の回転慣性モーメントにより、実際の回転錘の質量の数百倍~数千倍以上の慣性質量効果を発揮できることから、従来のダンパーと同程度の大きさであっても大きな効果を発揮する。
また、「橋の固有周期に合わせて回転錘の位置を調整し、逆位相の動きを起こす事で、橋が共振する地震波に対して効果的に制震機能を発揮させることができる。既存の橋梁をモデルとしてL2地震動(タイプⅠ、Ⅱ)、Ⅲ種地盤(3波)を入力波として解析した結果、DS-DPを橋脚と橋桁の間に設置すると、橋桁の水平移動量を約40%、橋脚の変形量を40%縮減することができた」(同社技術推進課 蔵治賢太郎氏)としている。
橋梁用ダイナミックスクリュー(DS-DP)
DRF-DPは、橋軸直角方向と固定支承部の橋軸方向に適用するもの。従来、伸縮装置設置個所では、地震時に橋軸直角方向へ働く小さな震動で伸縮装置が破損し、事後の供用性に大きな影響を与えてしまうことからオイルダンパーは使用できず、代わりとしてエネルギー吸収性には優れるが、繰返し利用ができない鋼材ダンパーが採用されてきた。DRF-DPは金属の輪(ダイス)の中にその内径より少し太い金属の芯棒(ロッド)を押し込み、ダイスがロッド上を摺り移動することで地震エネルギーを摩擦熱に変換して吸収するダンパーだ。ダイスには特殊な構造用鋼材、ロッドにはばね性に優れ、強度が高いリン青銅を使用している。ダイスとロッドの径を変えることで現場に応じた適切な摩擦荷重に調整することができる。部材強度が高いことから横変位拘束及び落橋防止構造を兼ねることも可能だ。「L2地震動を想定した入力波により解析した結果、DRF-DPを橋脚と橋桁の間に設置することで、阪神淡路大震災相当の内陸直下型地震でも橋脚基部の損傷が6割以上低減できるといった結果が得られている」(同)。
橋梁用ダイス・ロッド式摩擦ダンパー(DRF-DP)
ユニバーサルクレビスは、従来のクレビスに直交する副軸ピンを追加することで、主軸周りは±90°、副軸周りは±15°の回転ができるようにしている。試作機も製作し、オイルダンパーの両端に取り付けた状態でクレビスが円滑に動作することを確認した。「構造上ユニバーサルクレビスに強度を負荷することが容易であったことから、首都高速道路㈱で開発中の落橋防止構造兼用型オイルダンパー(ACO-DP)や横変位拘束構造兼用型摩擦ダンパー(DRF-DP)の両端に設置することができるようになった」(同)としている。
ユニバーサルクレビス(U-CLV)