床版増厚材料にPCMをラインナップ
首都高 新しい舗装設計施工要領を販売開始
首都高速道路は、平成27年4月23日から子会社の首都高技術のウエブサイトで新しい「舗装設計施工要領」の販売を開始した。
新要領では、現在、舗装の表層に使用している骨材の最大粒径が13㍉のポーラスアスファルト混合物(排水性舗装)のバインダ規格と骨材配合を見直し、トンネル部以外の表層に損傷耐久性を改善した新配合の「小粒径ポーラスアスファルト混合物」を採用した。同混合物は損傷耐久性に優れているだけでなく、これまでの粒径が大きな混合物と比べて、通行車両のタイヤと路面から発生する騒音値の低減効果が高く(従来品99.1dBに対し新規格品では93.7dBに5.4dB低下した)、温度低下速度が緩やかで施工しやすいという長所を有している。
小粒径ポーラスアスファルト混合物(キメが細かい)(写真左)、従来のポーラスアスファルト混合物(キメが粗い)(写真右)
また、それ以外にも現場条件に合わせて選択できるように標準の舗装構成のほかに多様な舗装構成を示した。損傷が進行しやすい場所には耐久性の高い舗装構成が採用されることで打換えサイクルの平準化を期待している。舗装の試験方法も重交通下で酷使される舗装材料を適切に評価するため、骨材飛散抵抗性について従来の水浸ホイールトラッキング試験だけでなく、20℃でのカンタブロ試験(マーシャル安定度試験用の供試体をロサンゼルス試験機(粗骨材のすり減り試験法に規定する機械)に入れ、鋼球を使用しないでドラムを300回転させ、試験後の損失量を測定する(日本改質アスファルト協会の用語解説より引用))と60℃でのタイヤすえ切り試験を追加、カンタブロ試験では損失率を従来の20%から全数3%以下に、後者では骨材飛散量を従来の平均400㌘程度から全数300㌘以下に厳しくすることで高い骨材飛散抵抗性を要求している。
加えて、首都高グループ5社とNIPPO、住友大阪セメントで施工法と材料を共同開発した舗装の基層(厚さ50㍉)を利用したコンクリート床版の増厚工法も本要領には掲載している。
具体的には、増厚材料を従来の繊維補強コンクリート(FRC)にかわり乾式のポリマーセメントモルタル(PCM)による吐出工法したもの。
乾式のPCMを用いることにしたのは、「SFRCの打設に用いるモービル車の量が全体的に不足している」ことや、施工時の車両配置の手間などを省くため。乾式のPCMはモービル車による練り混ぜが必要なく粉体(主材)と液体(ポリマーエマルジョン入りの混練水)を吐出寸前にノズルの先端にある機構で回転させて混練し、PCMを吐出させそれを敷き均すことで増厚するもの。PCMを使うことで緻密なひび割れのない増厚層を形成できるほか、弾性率の低い設計にすることで既設床版との層間剥離を生じにくい構造にしている。また、増厚床版の施工前には予め接着剤を塗布した上でPCMを打設することで接着強度を増している。
またフェールセーフとして、PCMの基層の上には床版防水層を設けた上で表層を敷設する構成となっている。