湿式のポリマーセメントモルタルの品質を現場で簡易かつ短時間に測定
やわらか管理クンがNETIS登録を完了
大分工業高等専門学校の一宮一夫教授と東亜コンサルタント(大分市)は、湿式のポリマーセメントモルタル(PCM)の品質を現場で簡易かつ短時間に測定、評価できる専用機械「やわらか管理クン」を開発した。「やわらか管理クン」はエムティ創研(大分市・財津公明社長)が営業展開しており、このほどNETISに登録を果たした。登録番号はQS-140013-A。
湿式タイプのPCMは構造物の吹付け補修などに広く用いられているが「材料の飛散によるロスや作業環境面での安定した施工品質の確保などに課題がある」(一宮教授)。これらの問題解決には各工程における「適切な品質管理が不可欠」(同)で、そのための評価装置、評価指標が望まれていた。
一方、従来は、フロー試験か、ミニスランプ試験で品質を確認していた。しかし、試験時のハンドリングの悪さや一定時間経過時に測定できないなどという、課題があった。
やわらか管理クンは、機械そのものの重量が約16㌔と軽く人力で運べるほか、フロー試験機のような重い土台も必要ないため、吊り足場上でも適時に設置、測定できる。測定は専用の鉄製モールド容器の中にPCMを入れ、攪拌用の羽根をその中に挿入、固定してスイッチを押し、台座を回すだけ(1分間に120度)で、3分間で品質を測定することが可能だ。
吊り足場上でも設置可能(左) 3分間で品質を測定(右)
その場でフレキシブルに確認が可能
こうした短時間で評価可能になったのは、経過時間毎の材料の有するせん断力の上下限値を各メーカーに予め提出させ、それを閾値としているため。練り混ぜ製造時の時間(起点)さえ確認しておけば、その後、何分たってもそのPCMの品質が閾値内にあり適切かどうか、を確認できる。
せん断力の値は、固定した羽根の上にあるトルクを感知する装置(回転翼粘度計)により、負荷を計測し、求める。測定された値は、柔らか管理くんの側面についているUSB端子により、パソコンと繋げるだけで、「その場でフレキシブルに確認できる」(東亜コンサルタント)。
今後は国土強靭化の進展により、補修補強業務の件数も増え、PCMによる吹付け補修補強も増加することが予想される。そうした時に「場所を問わず短時間に品質を確認できる装置として提供していきたい」(同)としている。
また、この機械はポンプ圧送性、ダレ性、最大吹付厚さという指標(指標1)とチクソトロピー性(指標2)、従来の指標との関連性(指標3)を解析できる。これらの指標を有する曲線は素材・製品ごとに異なるため、「新製品のスムースな開発の一助にもなるのではないか」(一宮教授)としている。
青と黒はポンプ圧送時も施工後も性状が変わらないPCM、赤はポンプ圧送時は抵抗(トルク)が少なく、施工後の形状保持性が高く厚付けが可能なPCMであることを示している。「やわらか管理クン」はこれが短時間である程度確認できる。(一宮一夫教授提供)