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破損確率と影響度から優先順位を求める

RBM活用し橋梁維持管理システムを高度化

公開日:2014.09.30

 IHIインフラシステムは、ボイラーやクレーンなど民間資本の維持管理システムとして既に確立されているRBM(Risk Based Maintenance)を利用した橋梁の長寿命化対策向けの維持管理システムを展開している。既に同システムを応用した技術として、古くは「ペイントビュー」(NEXCOが導入している鋼橋塗膜劣化度診断システム)、最近では「コンクリートビュー」(分光分析法を用いた非破壊コンクリート診断システム)があるが、同社は、今後の維持管理量の増加を見据えて、より広範な適用を目指していく方針だ。
 RBMは、リスクを指標として、維持管理の順位付けの選択を行う手法。リスクは損傷係数基本(劣化度)、検査要因、施工・管理要因を定量化したものからなる「破損確率」(破損の生じやすさ)と、安全性(人的災害に関する影響度)、経済性被害(補修に関する影響度)の2項目について定量化したものからなる影響度を掛け合わせて求められるもの。部材の重要度、劣化要因やその進行状況、検査のし易さ、第三者被害の可能性や大きな損傷が生じた場合の経済に与える影響などを加味した上でリスクを評価し、補修補強を行うべき橋梁の順位付けや、個々の橋梁の補修補強すべき部位の優先順位を決定することができる(下表およびグラフ)。

 同社は実際の橋梁を用いて実証実験も行っている。国土交通省が策定した「橋梁定期点検要領(案)」に基づき、上部構造(主桁、横桁、床版など)、下部構、支承部、排水施設など258部材全てを点検し、リスク評価を行うもので、具体的には損傷程度はそれぞれの部材に対して目視で点検した結果をa~eの段階で評価し、影響度を掛け合わせて、リスクについて①許容可能、②条件付許容、③要計画変更、④許容不可の4カテゴリに区分けした。最もリスクの高い④については、生じるリスクに対する低減方法を具体的に提案している。同橋の評価の結果では、フィンガージョイントの遊間不足により、ジョイントの先端部分に応力が集中して発生しているため、破損して走行安全性に影響を与える可能性が指摘され、伸縮装置の交換など適切な手法を提言している。
 RBMの今後の課題は、破損確率の評価要因を橋梁形式や複数橋梁で定量的数値としてどれだけ提示できるか、であろう。それはすなわち点検・解析を実施することで破損確率を大きく下げることができる、ということと同義であり、補修補強コストを縮減するためには、適切な点検方法、箇所を選択することがもっとも有効である、ということを具体的な数値で示すことにつながる。またそれは点検・解析だけに留まらず、補修補強の方法に関しても、ただ機能を回復させるだけでなく可能な範囲で劣化しにくい構造への変更(新工法・材料の採用や点検しやすさ=検査有効度を向上させることによる劣化進行の抑制)の提案能力の向上にもつながる。
 実際に冒頭の民間資本へのシステムの適用現場では、そうした「技術者各個の実力の定量化は既にある程度なされている」(同社・戸田勝哉氏)。国土交通省も橋梁・トンネルなど道路構造物の長寿命化においては、そうした技術力の向上を求めており、RBMが「リスクの低減方法」を具体的に数値化できれば、診断精度の向上、維持管理システムのさらなる高度化が期待できそうだ。(2014年9月30日掲載)(井手迫瑞樹)

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