主要国道や県道、モノレール交差箇所にある歩道橋 下地塗料にアースコートを採用
北九州国道 三萩野歩道橋で塗膜剥離剤やIHを使って塗膜除去
国土交通省九州地方整備局北九州国道事務所は、北九州市小倉北区の国道3号と同10号、福岡県道266号、さらには北九州モノレールが交差する三萩野交差点を跨ぐ三萩野歩道橋を塗替えている。直下の交通量が多く、バスや大型車も走行しているため、足場の高さは抑制せざるを得ず、さらに北九州中央病院などの施設があり、歩行者も多いことからその安全に配慮しながら塗替えをする必要がある。鉛入りジンクリッチペイントや鉛丹を含む既設塗膜であるため、塗膜剥離剤やIH、自動排じん回収装置付きサンダーなどを併用しながら塗膜除去を進める現場を取材した。(井手迫瑞樹)
同橋は、1966年に供用され、50年以上が経過している鋼製の歩道橋。P1-P2間が34.0m、P2-P4間が16.0m、F1-F2間が27.8m、F3-P3間が42.0mという径間長をそれぞれ有している形式としては鋼ラーメン橋、鋼鈑桁橋で、全幅は1.95m~2.3m、有効幅員1.75m~2.1mとなっている。既設塗膜の膜厚は、一般部が下塗:鉛系さび止めペイント、中塗:長油性フタル酸樹脂塗料、上塗:長油性フタル酸樹脂塗料で最大膜厚662μm程度(主桁添接部や隅角部)、橋脚などの張紙防止部が下塗:変性エポキシ樹脂塗料、中塗:張紙防止塗、上塗:張紙防止塗料で最大膜厚929μm程度(橋脚部)、蹴上部が下塗:変性エポキシ樹脂塗料、中塗:超厚膜形エポキシ樹脂塗料、上塗:ポリウレタン樹脂塗料で最大膜厚326μm程度(階段裏)となっている。塗装面積は合わせて3,134㎡に及ぶ。
塗膜剥離剤はネオリバー泥パックType2を使用
IHはエレクトロリムーバー
膜厚や塗膜構成は全て2004年に塗り替えた際の内容であるが、現場の塗膜の内容を見ると、鉛入りジンクリッチペイントだけでなく、鉛丹のような色をした下地もある。塗膜除去の際の労働者の健康障害防止や、粉塵の外部への飛散が無いように施工しなくてはならない。同現場では、何種類かの塗膜剥離剤を比較試験した結果、「ネオリバー泥パックType2」を選定した。膜厚が厚い個所では1回では除去できず2回ないし3回塗布・養生・掻き落としの作業が必要となる。その作業を短縮するために、主桁側面・下フランジ・手摺りの平滑部、階段蹴上部には、小型IH式塗膜剥離工法『エレクトロリムーバー』を使用した。「平滑な面は、1回の電磁誘導加熱で厚膜の剥離が完了するため、施工スピードの向上に大きく寄与した」(一次下請のハットリ工業)ということだ。また、歩行者に開放しながらの施工である為、橋面は片側を防護しながら施工せねばならず、その際に蹴上部等は、剥離剤を施工せず、IHのみで剥離作業を行っている。
塗膜剥離剤の施工
エレクトロリムーバーの施工①
エレクトロリムーバーの施工②
その後のケレン作業(2種ケレン)は、集塵機および集塵機付のディスクサンダー(自集塵タイプ『NEWアートサンダーF』)を併用して、作業を行った。
最小クリアランスは僅か400㎜
下地塗料は錆転換型の防食塗装システム『アースコートシステム』
特に下フランジから足場の高さは一番クリアランスが少ない個所で400㎜しかなく過酷な現場であり、塗膜剥離やケレン作業は非常に難易度が高く、ブラストなどは打てる環境ではなかった。そこで2種ケレン後の下地塗料には、錆転換型の防食塗装システムである『アースコートシステム』を採用した。同システムは、下塗り2回(60μm×2、エポキシ樹脂系)、中塗り(30μm、ウレタン樹脂系)1回、上塗り(25μm)1回(ふっ素樹脂塗料によるトップコート)で構成され、「2種ケレン相当の下地処理でも高い耐久性を有する塗膜を形成できる」(同)。
非常に低いクリアランスでの施工を余儀なくされた
アースコートシステムの施工
同橋では塗装以外にも縁端拡幅や落橋防止装置の設置などの耐震補強、断面修復や鋼桁の補強などを進めていく。
設計は西部技建コンサルタント、元請は岡本土木、一次下請はハットリ工業。