阿蘇市の合戦場橋 薄層床版のコンクリート舗装に
ショーボンド建設 低弾性ラテックス改質超速硬コンクリート『コンパクトジェット-L』が初採用
阿蘇市が所管する農道橋である合戦場(かっせんば)橋で、RC床版補修とコンクリート舗装を兼ねる補修工法として、ショーボンド建設が開発した低弾性ラテックス改質超速硬コンクリート『コンパクトジェット-L』が初採用された。同材料は、損傷している既設床版と同等の低弾性係数(26.5kN/㎟±5kN/㎟)を実現した超速硬コンクリートで、補修後は既設床版と一体となった挙動を実現できる。低弾性を実現できているのはラテックスによる改質効果と骨材の一部に「特殊弾性骨材」を混和しているため。圧縮強度は4時間で24N/㎟の強度を発現するため、早期解放が可能であるが、4週強度は50N/㎟までしか上がらず、既設床版との乖離がないような材料設計としている。現場での材料混練も4tユニック車に載せた150ℓ練りのコンクリートミキサーに砂利と砂とセメントと速硬性混和剤材がプレパックされた材料(1袋333~334㎏)、ラテックス1缶(18ℓ)、水(10ℓ)を入れ、2~3分ミキサーで攪拌するだけで手軽に供給できる。スランプは18㎝程度で施工性にも優れており、支間長17.9m×幅員3mを2~2.5時間程度で打設することができた。その現場を取材した。(井手迫瑞樹)
コンパクトジェット-Lの製造状況①
コンパクトジェット-Lの製造状況②
スランプは18㎝程度
床版厚は140㎜と薄層 床版上下面とも損傷目立つ
合戦場橋は1973年に供用された橋長36.8m、有効幅員3mの2径間単純非合成H型鋼橋。設計道示は昭和39年鋼道路橋示方書で、床版厚は140㎜、これに50㎜のコンクリート舗装が載った状態であった。床版下面をみるとかぶりコンクリートが剥落して鉄筋が露出している個所や大きなひび割れが生じている個所が散見された。特にA1~P1間の損傷が大きく、幅員のうち桁の外側部分については、「ブレーカーによるはつり作業中に鉄筋近傍でひび割れが拡大するケースもあったため、あらかじめ早強コンクリートで断面修復した上で『コンパクトジェット-L』を打設した」(元請のダンテック)。それでも上面はかぶりコンクリートが無い個所もあり、不陸も大きく、P1-A2間に比べて2割ほど多くの材料を必要とした。
床版の損傷状況①
床版の損傷状況 (右写真)A1~P1間は損傷が大きく予め早強コンクリートで補修した
骨材粒径20㎜タイプを使用
『コンパクトジェット-L』は用途に応じて13㎜と20㎜タイプの2種類の粒径の骨材を使い分ける。今回用いたのは20㎜タイプで、上面鉄筋裏までの補修や床版増厚、5㎝以上のコンクリート舗装厚が必要な個所については同タイプを用いる。13㎜タイプは上面鉄筋被りの補修や小規模な補修、5㎝未満のコンクリート舗装などに使用する。いずれもNEXCO3社の『「床版上面における断面修復の性能照査項目」(平成29 年7月)性能試験』に合格しており、粒径20㎜タイプで合格している材料は「『コンパクトジェット-L』のみ」(ショーボンド建設)ということだ。
打設前にひび割れ含侵プライマー及びボンドを塗布
材料混練は1バッチ2~3分ほど 敷き均しに特殊な機械は不要
コンクリート舗装は1径間ごと2日間に分けて施工された。両日とも8時半過ぎに開始した。打設前日までに上面のコンクリート舗装及び床版脆弱部をはつった後、打設当日はまず、浸透性エポキシ樹脂接着剤『PDプライマー』と2液型エポキシ樹脂系打継ぎ用接着剤『PDボンド』をRC床版上面に適量塗布し、その後に『コンパクトジェット-L』を敷きならしていく。プライマー及びボンドを塗布するのは、既設床版のマイクロクラックに浸透しひび割れを補修する効果があることと、付着強度を向上させるため。「ラテックスだけでも2N/㎡の付着強度を有するが、プライマー及びボンドを塗布すれば3N/㎟に向上し、コンクリート補修もある程度行える」(ショーボンド建設)ためだ。
敷き均しは幅員中央部の厚さが75㎝、両端部が50㎝の両勾配になるよう施工した。特殊な機械は使わず、棒バイブとレイキ、コテで均し、最後に箒目を付けた。施工の際に使う皮膜養生材は攪拌の際に入れるものと同様のラテックスを使用した。攪拌製造が2~3分と短時間であり、かつ本現場における材料の移動はすべてバケットをクレーンで吊り上げて行ったため、非常に効率の良い施工ができていた。材料の可使時間は30分程度だが時間内に十分敷きならすことができた。比較的損傷の少ないP1~A2は21バッチ(1バッチ0.15㎥)、不陸が大きかったA1~P1間は26バッチを2~2.5時間で打設を完了できた。
クレーンでバケットごと吊り上げて運び、バケット内の材料を床版上面に落とし
バイビングしつつ、レイキで敷き均していく
箒目をつけて仕上げる/ほぼ完了した状況
防水効果も期待
LCCや早期供用性に優れる
元請のダンテックは、「非常に素早く施工ができた。耐久性の面でも材料もさることながら、施工前に打継ぎ面のひび割れに浸透するプライマーおよびボンドを塗るため、アスファルト舗装における床版防水効果も得ることができる。従来のコンクリート舗装は、漏水による損傷が目立ったが、そうした損傷も防ぐことができるのではないか」(組永健一工務部長)と話していた。
ショーボンド建設では、今後市町村の小規模橋梁における床版上面補修とコンクリート舗装を兼ね備えた材料として、「アスファルト舗装のように一定期間で打ち換える必要がなく、床版防水も不要なライフサイクルコストの縮減及び早期供用性に優れた材料ということを前面に出し、採用を増やしていきたい」方針だ。
元請はダンテック(熊本市東区)。
(2020年3月30日掲載)