国土交通省東北地方整備局仙台河川国道事務所は、仙台西道路の郷六橋上下線の床版取替工事を進めている。1月10日に上下線中央に架設した仮橋に上り線の交通を切り替え、11日から上り線の床版取替に着手した。同事務所で行う更新防災事業では初めての施工で、NEXCO各社が進めている床版取替と同様に既設RC床版を撤去してプレキャスト(PCa)PC床版に取り替えていく。上り線から着手しており、下り線も入札公告済み。来年中の事業完了を目指す。
仙台西道路の概要と郷六橋位置図
(図・写真は以降全て拡大できます、仙台河川国道事務所提供、以降注釈なきは同)
郷六橋は上り線が1973年に供用された橋長101mの3径間連続非合成鈑桁(5主桁)で有効幅員は9.5~13.75mで昭和47年示方書によって設計されており、RC床版厚は210mm、舗装厚は50mmとなっている。下り線は1986年に供用された3径間連続非合成鈑桁橋であり、有効幅員は9mで昭和55年示方書による設計で、床版厚は230mm。いずれも設計荷重はTL-20だ。上りと下りで形状が違うのは、上り線橋梁部が仙台宮城ICで連結しており、その出路として多少バチ型になっているため。計画交通量は28,000台であったが、現在は55131台に達しており、24時間の大型車混入率は1割弱となっている。
2001年の初回点検時において、ほぼ全面にひび割れが発生し、2方向に進行して遊離石灰を伴う部位も多数見られた。04年には塩化物含有量調査を行い発錆限界値1.2kg/㎥を超え、床版が土砂化している個所もあった(最大含有量は7kg/㎥を超えていた)。その後、07年3月に床版防水工を設置、09年に床版下面を炭素繊維シートで補強するなどし、小康を得ていたものの、12年の定期点検では角落ちや格子状の床版ひび割れ、浮き、漏水や遊離石灰が生じており、14年には非破壊検査を行った結果、コンクリートの劣化やかぶりの不足・過大などを確認(かぶり厚は薄い箇所では25mmしかなく、過大な個所では90mmに達していた)、15年には土砂化が頻発し、一部で抜け落ちが発生したことから、床版の部分打替えを行っていたが、全面的な取替が必要と判断した。
下り線は02年10月の初回判定において、ほぼ全面に床版ひび割れが生じていた。但し、密度は小さく様子を見ていたが、07年10月の定期点検で床版のひび割れに加えて新たに漏水や遊離石灰が確認された。09年には伸縮装置を取替えたが床版防水工の設置は明確ではない。さらに12年11月の定期点検で床版ひび割れ、漏水・遊離石灰に加えてさらに剥離・鉄筋露出、舗装の異常が見られた。特に舗装の異常は土砂化の兆候があり、14年に衝撃弾性波法による詳細調査を行った結果、床版コンクリートの品質が不良ないし不可になっていることを確認し、こちらも床版を取り替える判断を下した。
下り線床版の土砂化の兆候/床版抜け落ちの発生
上り線路面の異常/電磁波レーダーによる詳細調査
平成16年度の詳細調査/平成24年度の詳細調査①
平成24年度の詳細調査②および③
平成24年度の詳細調査④/下り線 床版に関する維持管理履歴
施工の際に大きな障壁となるのが、既存交通である。NEXCOなどでは車線規制を行った上で複数断面に分けた床版取替を実行する、あるいは下り線に対面交通規制を行った上で、上り線全体を施工する、ことなどで対応している。しかし、郷六橋は東北道と仙台市内を繋ぐ重要な交通路であり、かつ交通台数も多く、代替路が見つけがたく、また道路線形上、対面交通規制をするには仙台西道路の大部分で対面交通規制を行わなくてはならないことから、青葉山トンネルを出てすぐの個所からセパレートしている上下線の橋梁の中央のスペースを使って仮橋を架け、そこに上り線または下り線施工時の交通を流し、本橋上の床版を取り替えるやり方とした。仮橋は河川を跨ぐ個所にあり、一部堤体にもかかる厳しい条件であったが、8月に施工に着手し、12月には約100mを架け終えた。