国土交通省近畿地方整備局および阪神高速道路は、大阪湾岸道路西伸部の海上長大橋の橋梁形式について、中間とりまとめ(Ⅱ)を公表し、新港・灘浜航路部については中央径間を均等割り(端部390m、中央3径間が650m)にした鋼5径間連続斜張橋(4本主塔)、神戸西航路部については、1主塔の鋼斜張橋をそれぞれ選定した。いずれも主塔は鋼製、主塔基礎は鋼製矢板構造。新港・灘浜航路部の主塔形状は橋軸A型、神戸西航路部はダイヤ型をそれぞれ基本とする。新港・灘浜航路部の最大支間長約650mは、連続斜張橋としては世界最大規模、神戸西航路部は最大支間長が約480mに達するが、これも1本主塔の斜張橋としては世界最大規模となる。(井手迫瑞樹)
新港・灘浜航路部に5径間連続鋼斜張橋を選定したのは①地震時にリスクの高い桁端部が少なく、その桁端部も陸上に近接した箇所に存在するため、緊急点検時のアクセス性や修復性に優れること、②中央部に主塔以外の橋脚を必要とせず、航路の妨げにならず点検・補修も容易なこと、③均等割りの連続斜張橋のため景観性に優れること、④地震動や地盤変位に対して構造冗長性が高いーーことなどが理由。しかし、摩耶断層が深いところに位置し、3P主塔基礎が摩耶断層のとう曲帯の範囲内にあることから、ここについて今後詳細な検討が必要になる、とした。
(国土交通省近畿地方整備局発表資料より抜粋、以下注釈無きは同)
神戸西航路部にも共通することであるが、主塔を鋼製構造にしたのは、軟弱地盤への影響、基礎の極大化を避けるには重量の軽い鋼製が適していたため。
主塔形状をA型にしたのは、主塔剛性を向上させるには形状による対策が最も効果的であると判断したため。連続斜張橋の構造特性として、端橋脚および中間橋脚による拘束効果がないため、中央主塔の見かけの剛性が小さく、鉛直荷重が橋軸方向に偏って載荷されると斜張橋全体の変形が大きくなる。そのため主桁や主塔(基礎含む)の剛性見直しや、追加ケーブルによる変形特性の改善を検討した結果によるもの。
主桁は中央に開口を有する鋼2箱桁を採用した。
神戸西航路部について、1主塔鋼斜張橋(ポートアイランド側)を選定したのは、①1本主塔のため維持管理性が高く、②景観性にも優れる、③撓曲部を避けた位置に主塔を配置しているため地震時のリスクが少ないーーことが理由。主塔形状はダイヤ型、主桁本数は鋼1主箱桁とした。いずれも経済性や計画コンセプトへの適合性の観点から採用した。
両橋梁とも、今後は詳細設計に入り、指摘された細部を詰めていく。
事前検討は大日本コンサルタント(新港・灘浜航路部)、長大(神戸西航路部)が担当した。
一方で、中間とりまとめ(Ⅱ)ではワッフル型UFC床版と、鋼管集成橋脚の2つの新技術についても、その評価が示された。
ワッフル型UFC床版は、すでに信濃橋入口において、採用された工法であり、今次の評価でも鋼床版代替として期待されていることが示された。鋼管集成橋脚については、現地地盤を考えるとフーチングレス杭基礎一体型が有望視されている。軽量なことやフーチングレスのため現地地盤液状化が起きた際の(橋脚基礎に対する)慣性力や流動圧が軽減できるためだ。一方で、上部構造を常時受け持つ橋脚としての現場実績がないことや、地盤の不確実性の影響を受けるのではないか、という指摘もあり、試験的に施工することで現地データの収集・分析を進める必要がある、とされた。
いずれにせよ陸上部区間は、六甲アイランドの一部区間においては鋼桁形式が選定されており、ポートアイランドや和田岬の区間においても、基礎地盤が悪いことから上部工はより軽い形式が望まれている。橋脚の軽量化、基礎の極小化ができる鋼管集成橋脚は、液状化への対応が確認されれば、有効な下部工形式といえる。
(2019年12月23日掲載)