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供用から50年以上経過、本線の舗装を全面打替え 鋼床版SFRC補強やRC床版の複合床版防水も

阪神高速道路3号神戸線(湊川~京橋)を終日通行止めしてリニューアル

公開日:2019.07.01

 阪神高速道路は5月24日、阪神高速道路3号神戸線(湊川~京橋)間を10日間(5月24日4時~6月3日6時)終日通行止めして行っているリニューアル工事を公開した。同路線は、単純PCTおよび鋼床版箱桁などを主とした上部構造で、柳原~京橋間は1966年、湊川~柳原間は1968年供用といずれも供用から50年以上経過している。また、前回2009年に行ったリフレッシュ工事から10年が経過しており、舗装やジョイントの劣化が生じていることから、舗装の打替えを本線部全て合計約10万㎡施工し、鋼床版部のSFRC補強を約14,000㎡、RC床版部の高性能床版防水工を約72,000㎡それぞれ施工した。ジョイントの交換を136レーンで、ジョイントレス化を36レーンでそれぞれ施工した。


舗装の損傷状況

舗装の剥ぎ取りを完了したRC床版(左、中)と鋼床版(右)、RC床版は劣化も見える

 今回の区間は1日交通量10万台を超える重交通路線であり、大型車混入率も3~4割に達する。一方でRC床版厚は150~180mmと薄く、以前に鋼板を下面接着する補強を施している。鋼床版部は12mm厚のUリブ床版であり「疲労による亀裂も予想された」(同社)。
 しかし、RC床版に関しては、鋼板接着の効果もあり大きな損傷は見受けられず、一部に浮きや表面の欠損が見られたものの、無収縮モルタルなどで断面修復する程度で済んだ。鋼床版についてはデッキプレート貫通亀裂のような深刻な損傷はなかった。RC床版部は長期的に上面から供給される水によるすり磨き現象から劣化が生じる可能性があるため、複合床版防水工法を採用した。コンクリートの生じたひび割れに浸透する樹脂により一次防水し、なおかつ上面にアスファルト加熱塗膜防水を施工する工法(『ハードフレッシュ工法』と、『HI-SPECシール工法(LTタイプ)』)だ。ハードフレッシュ工法は3工区、HI-SPECシール工法は1工区でそれぞれ採用された。

ハードフレッシュ工法

 HI-SPECシール工法は従来、一次、二次防水の間に不陸修正を目的としたプライマーを塗布していたが、本現場では短い施工時間下での効率的な施工を要求されたこともあり、不陸修正材を抜き、なおかつ防水性能を向上させるために一次防水材と二次防水材双方の樹脂成分を増やしている。さらに施工の面では、3m程度の幅に対し、20cmピッチでノズルを配置し、4面を鋼板で遮蔽して吹き付ける装置を採用し、施工効率の向上と吹付時の飛散防止を両立させた。


HI-SPECシール工法

 鋼床版については基層部分(45mm)にSFRCを打設することにより補強することで、疲労耐久性を向上させる。補強前には鋼床版上を調査して、亀裂などが発生していないか調査し、発生している個所はストップホールなどで対応した上で、個別の補修を行った。健全部はショットブラストなどで表面を研掃した。今回の現場では。施工前にキャリブレーションした結果、ブラストの投射密度を250㎏/m2とした。付着性を高めるため接着樹脂を塗布した上でSFRCを打設し、防水工を施工、表層(排水性舗装、35mm)を敷設する。


鋼床版上のショットブラスト 事前にキャリブレーションして施工した

SFRCの施工

 舗装やジョイントの撤去にあたっては通常の手斫りなどの工法では、大きな打撃音が発生する。そのため特に静粛性を求められる病院や住宅などの隣接区間については、鋼床版上の舗装撤去はIH(電磁誘導加熱)式舗装撤去工法、ジョイント撤去はSJS(サイレントジョイントスライス)工法を用いることで、騒音を抑制した。SJSは92レーン中60レーン、IHは鋼床版面積24,640m2中5,380㎡で用いた。


SJS工法/IHによる舗装撤去

 ジョイントの連結は床版連結を4レーン、PC鋼棒による連結(1主桁当たり4本のPC鋼棒を用いて両側の桁を連結する)と埋設ジョイントを組み合わせた工法を32レーンで採用した。
 元請は舗装(床版含む)が世紀東急工業、大成ロテック、鹿島道路。ジョイント補修(取替含む)がスバル興業。
(2019年7月1日掲載、文:井手迫瑞樹、写真:右上写真のみ井手迫瑞樹撮影、他、阪神高速道路提供)

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