東日本高速道路は、札樽道銭函IC~朝里IC間の大野川渡河部にある大野橋上り線について損傷した床版の取替を行っている。輪荷重の繰り返しによる微細なひび割れや凍結防止剤による塩害が主因で床版上面は土砂化や鉄筋腐食、床版下面は亀甲上のひび割れからエフロレッセンスが生じており、今回北海道支社で初めて大規模更新にあたる床版取替工を施工するに至っている。その現場ルポをまとめた。(井手迫瑞樹)
防水は現在まで未設置
上下線毎に10000台超の交通量、大型車混入率は3割弱
損傷状況および対策概要
同橋上り線は1971年に供用された橋長162.6㍍、有効幅員9.0mの鋼4径間連続非合成3主鈑桁橋である。既設RC床版の厚さは220mmで、過去に床版増厚は行っていない。床版防水は平成16年に初めて現在のグレードⅠに相当する防水工を敷設した。それ以前は防水工は未設置だった。勾配は橋軸方向が1.9%、橋軸直角方向は走行車線側(山側)に3.13%から最大6%の下り勾配となっている。凍結防止剤は20g/㎡/日とかなりの量を撒いており、鉄筋近傍の塩化物イオン量は最大で7.02kg/㎥に達している。舗装には所々ポットホールが生じており、舗装を剥がしたところ、凍結防止剤の影響と推定される床版上面の被りコンクリートの土砂化や鉄筋の腐食が生じていた。
大野橋の所在地および工事規制方法、損傷状況(NEXCO東日本北海道支社提供、以下注釈なきは同)
大野橋の概要/損傷状況詳細
床版下面を見ると全般にわたり亀甲状のひび割れやエフロレッセンスが発生しており、床版の打ち継ぎ目からはモルタル分流失による「つらら」が生じていた。やはり水の影響により下り勾配側の損傷が大きかった。
こうした損傷状況から、同橋では床版取替を全面積(1,374㎡)で行うこととした。ただし、鋼桁には大きな腐食や孔食などの深刻な損傷は見られておらず、今回は塗装塗り替えなどの対策は同時に行わない。9月5日~10月15日までの間、上り線を通行止めし、下り線を対面通行規制にすることで施工した。工事手順はフロー図の通り。人数は元請側職員10人、一次下請以下の職人は昼間30人、夜間6人態勢で行う。
施工フロー
スパイダーパネルを採用
足場・高欄撤去
具体的には、まず準備作業としてスパイダーパネルを用いた養生足場を設置した後、舗装を切削し、高欄を撤去した。スパイダーパネルは、従来の単管+足場板+板張り防護に比べ組立の安全性のほか、走行車線規制による組立の為パネル式により資材パーツ(クランプなど)が少ないことから、従来より組立・解体の工期を短縮できる。また、全面開口無の足場となるため板張り防護の作業が短縮され、組立後のシート養生のみとなるため採用した。
着工前の舗装上面/設置された吊足場(スパイダーパネル)
既設高欄は路肩部が鋼製、中分側がRCプレキャスト製であり、鋼製高欄はビーム、支柱ともボルトを外して撤去、RCはワイヤーソーで縦切断後、延長方向に最大4mずつのブロックに小割し、ブロックごとに吊り下げ孔を2か所配置、固定用アンカーのボルトを撤去後、25tラフタークレーンで吊り上げて撤去した。
路面切削/鋼製高欄の撤去
壁高欄の切断/撤去
伸縮装置の撤去/吊上げ用のコア削孔