夜間時の施工距離は15mから45mに向上
首都高渋谷線で中空床版上面を乾式吹き付け工法を応用したPCM舗装で補修
首都高速3号渋谷線の大橋JCT~谷町JCT間で4月16日午前5時から24時間1車線を交通規制した集中工事が始まった。工事は全て日曜日に同様の規制方法で行い、全4回(4月16日、5月28日、6月4日、7月2日)で、舗装打ち換え、ジョイント交換、壁高欄の塗装、ガードレールの補修などが行われている。また、舗装切削機によって削られたRCホロースラブ上面の補修・補強に、昨年3月に首都高速1号上野線で初めて施工された乾式吹き付け工法(リフレドライショット)を応用したPCM舗装が採用されている。1号上野線ではPCM舗装の1夜間1車線規制での施工延長はわずか15mであったが、その後45mまで伸ばしており、さらにこの集中工事では83m(幅3.25m、面積270㎡)を連続施工している。その現場を取材した(井手迫瑞樹)。
中央環状線開通により昼夜連続集中工事が可能に
首都高速3号渋谷線は東名高速道路にアクセスする重交通路線のため、交通規制を伴う工事は交通流に対する影響に配慮し、夜間施工が採用される。今回、集中工事が行われる大橋JCT~谷町JCT間約4kmの2016年度の1日平均交通台数は平日が7~8万台(4車線で片側2車線)、休日でも6~7万台であり、「日中に交通規制して工事をすることは交通流への影響が大きかった。しかし、中央環状新宿線と品川線が開通し、他路線への迂回が可能なネットワークとなったことから、夜間施工では騒音で周辺環境への負荷がかかる舗装やジョイントの工事を昼夜連続の集中工事で一気に終わらせることを計画した」(首都高速道路)としている。
施工区割り図
版厚100mmを下回る箇所も
RCホローの円筒型枠直上部
集中工事は1、2日目が上下線とも左車線、3、4日目が右車線を規制して行われている。同区間のうち、渋谷から道玄坂までの区間が1964年10月に先行して供用しているが、この最も古い区間のうち上り渋谷出口付近にRC中空床版橋(ホロースラブ)が採用されている。この橋梁は内部に円筒形の中空を有する床版橋のため、コンクリート工施工時に円筒型枠の浮き上がりにより床版上面の版厚が薄くなっている場所がある上、その後の舗装打ち換えに伴い舗装切削機により床版上面が削られ、「RCホロースラブ上に舗設されたアスファルト舗装の厚さは設計上80㎜なのに対し、コアを抜いてみると130mmある場所があった」(同)という。円筒型枠直上のコンクリート版厚は設計値でも150mmしかないが、円筒型枠の浮き上がりと舗装切削機による床版上面切削により、版厚が100mmを下回る場所もあった。
①施工前/②舗装の剥ぎ取り/③瀝青材の撤去
ブラスト工を省略、工程をラップ
作業を効率的に進める
1号上野線でPCM舗装の施工を開始した時は、舗装切削後に床版上面をショットブラストで研掃していた。しかし、コンクリート床版上に浸透型防水材(マルチプライマー)を塗布することもあり、PCM舗装とコンクリート床版の付着強度がコンクリート床版上面の状態で決まらないため、その後同工程を省いている。具体的には、「ショットブラストの投射の有無に関わらず、コンクリートの脆弱な部分は上からハンマーで叩いて除去しているし、表面のゴミはブロアなどで吹いた上で浸透型防水材を全面塗布し、その上に硅砂を撒いて高性能エポキシ樹脂接着剤(スマートボンド)を塗布している。さらに現場での引っ張り試験の結果、施工の有無は付着強度に影響していないことが確認された」(同)ため。同工程の省略により、施工時間が約2時間短縮できたことから夜間施工時の舗設距離を当初の15mから45mまで延ばし、さらに60mの試験施工を予定している。
④-1 マルチプライマーの塗布/④-2 プライマー塗布後の珪砂散布
⑤接着剤の塗布
⑥-1 PCMの排出/⑥-2 PCMの打設
⑦シートによるPCMの養生
作業を効率的に進めるため、集中工事では、工程をできるだけラップさせている。既設舗装切削、浸透型防水および接着剤塗布工は30分程度のタイムラグで、順次追いかけ施工し、次工程のPCM舗装も接着材塗布開始から1時間程度のタイムラグで同様に追いかけ施工している。その後、21時頃からPCM舗装上にアスファルト塗膜型防水工(フレッシュコート)を施工し、表層工として最大粒径5㎜で別名「超低騒音舗装」とも呼ばれている「小粒径ポーラスアスファルト混合物(t=30㎜)」を舗設して、午前2時頃に完了した。
PCM舗装工程表
⑨-1 防水工の施工(カチコートX)、⑨-2 防水工の施工(フレッシュコート)
⑨-3 フレッシュコート施工後の珪砂散布/⑨-4 フレッシュコート施工完了状況
5mmトップのポーラスアスファルトを採用
PCM舗装を含む舗装工事は全てNIPPOが担当した。舗装打ち換えはA~Dの4班+PCM班の計5班に分かれて施工している。集中工事で打ち換えられる舗装面積は4日間で約40,000㎡に及ぶため、1日あたり使用するダンプの台数は150台にもなる。集中工事の大半を占める高架部の舗装構成は、表層が最大粒径5㎜の「小粒径ポーラスアスファルト混合物(t=30㎜)」、基層がバインダーにポリマー改質Ⅲ型-Wを採用した最大粒径13㎜の「密粒度アスファルト混合物(t=50㎜)」である。
⑩-1 表層舗装の敷き均し/⑩-2 表層舗装の転圧/⑪区画線の復旧作業
⑬施工完了状況
高欄部には「防水塗料」を採用
吹き付けによる施工試験も進める
なお、首都高速3号渋谷線では、壁高欄補強鋼板の防食および表面被覆材に防水塗料を採用している。同工法は厚塗りのウレタン樹脂を地覆から高欄にかけてゴムヘラで手塗り施工するもの。ただし、「手塗りではコバ面やボルトなどの突起物部の施工に時間を要することから、吹き付けによる施工の試験も進めている」(同)とのことだ。
施工前の高欄(鋼板補強部)表面/素地調整状況/プライマー塗布
一層目の塗布/トップコートの施工
防水塗料による施工が完了した地覆および高欄表面
また、集中工事では渋谷出入口が通行止めとなることから、通行止めとなった出入口のスペースを利用してJFEエンジニアリングがアルミ製常設足場「橋梁用ノンスルーフロア」の設置を進めている。この常設足場は3号渋谷線の渋谷区道玄坂一丁目付近~目黒区青葉台四丁目付近の530mで設置が進められているものである。
橋梁用ノンスルーフロアの設置