1kg当たり94000mgの鉛含む既設塗膜を除去
滋賀県 野洲大橋で循環式エコクリーンブラスト施工現場の見学会を開催
滋賀県南部土木事務所は、一般県道小島野洲線の一級河川野洲川渡河部に架かる野洲川橋の塗り替えを進めている。同橋は既存塗膜に鉛を含有していることから、通常の塗膜除去工で1種ケレンすることができない。そのため循環式エコクリーンブラスト工法を採用して、塗膜除去し、塗り替え工を施工している。3月22日に同地で開催された現場説明会を取材した。(井手迫瑞樹)
同橋は、橋長417.2mの鋼単純活荷重合成I桁×13、床版は場所打ちRC床版で幅員は9.5m(有効幅員8.5m)という構造だ。過年度にP8~A2間の塗替えを終えており(ここでも循環式エコクリーンブラストを採用した)、現在はA1~P8間延長262.5mの5,980㎡について塗り替えを進めている。
現場見学会には滋賀県庁の職員だけでなく、周辺市町村からも多くのインハウスエンジニアが参加した
同橋の既設塗膜は8層で構成されており、(下地から)2層目に鉛丹ペイント、3、4、6層目に鉛系錆止め塗料が入っており、分析の結果1kg当たり94,000mgの鉛が含有されていることから、有害物質を含有する既設塗膜除去に多くの実績を有する循環式エコクリーンブラスト工法を採用した。ブラスト施工にあたり、滋賀県では発注時の特記仕様書において「受注者は湿潤化した場合と同程度の粉塵濃度まで下げるための換気計画などを作成し、粉塵濃度を低減させる対策を講じること」という言葉を明記し、受注者に対策を求めた。それに対して、過年度に受注し施工した建装工業、現在受注し施工しているヤマダインフラテクノスとも、適切な集塵排気装置を設け、作業員に対しては送気式マスクまたは電動ファン付きマスクなどを着用させ、必要な安全対策を行っているため、作業者が被爆する恐れが無い計画を示した。その上で、大津労働基準監督署に施工の是非について確認し、現在の方法での施工が認められた。
野洲大橋
また、循環式エコクリーンブラストブラスト工法は研削材に金属系研削材を使用し循環再利用しているため、施工後の廃棄物量が従来の非金属系の研削材を用いたブラスト工に比べて、大幅に削減する事が可能となる(1/40~1/50)。また廃棄物処分に必要なコストも大幅にコストダウンが可能となる。従って、上述の事柄が採用の大きな理由となった。
また、本工事の特徴として、同橋に鉛などの有害物質を含む塗装がなされている可能性が高かったことから設計書に仮設工として負圧集塵装置設備(集塵機、ダクトなど)、エアシャワー設備(エアシャワー、簡易セキュリティルーム)、吊足場(全面板張り防護密閉締切)を計上、共通仮設費(積上)として鉛溶出試験費を予め計上している。従来のように受注後の頻繁な協議、変更を招かないように努めている。
施工完了箇所
ブラストの出来栄えや設備面を見るため、現場に入った各自治体のインハウスエンジニア
従来に比べて各種安全設備がコストプッシュしている一方で、鉛等の処分費は処分量が劇的に減少するため、大きく縮減できる見込み。また、労務者の安全に大きく寄与することや、今まで(安全対策的や費用の面で)1種ケレンによる施工を躊躇していた現場でも施工ができるようになったことも大きな成果と言える。その一方で「スケールの小さい橋梁では、設備費は同様のものが必要になる一方で、処分費の削減はこうした費用を吸収できるほどの幅になるか判断が難しい」(滋賀県南部土木事務所)、としており、スケールメリットの大きい鋼橋塗り替え程採用し易いとみなされていると言え、こうした声にどのように対応するかが、循環式エコクリーンブラスト工法普及のカギになりそうだ。
こうした声に対し、循環式エコクリーンブラスト研究会は「湿式工法(2種ケレン)+ブラスト工法(1種ケレン)を採用した場合でも、集塵装置や保護マスク等の各種安全設備の計上は必要になる為、施工費+安全設備費面でも、コストダウンは可能になるのではないか。比較検討を確りと提示して普及をして行きたい」としている。