昭和4年に架設した鋼トラス橋
宮城県丸森橋 14層の既存塗膜を塗膜剥離剤+ブラストで除去
宮城県大河原土木事務所は、一般県道45号の阿武隈川渡河部に位置する丸森橋について、塗り替え工事を進めている。昭和4年に櫻田機械製作所(後のサクラダ)によって架設された橋長133.6㍍の鋼中路式単純鈑桁(19.2㍍)+鋼下路式単純トラス橋2連(57.28+57.32㍍)の橋梁で、平成2年度に上部工の塗替、平成19年度に床版、伸縮装置補修、高欄部分の取替・再塗装、平成26年度に床版の部分打替、高欄交換を行っている。今回の塗り替えは、当初、トラス桁下部の縦桁、横桁全面1,542平方㍍を施工する予定であったが、剥離剤の面積当たり使用量が設計時より増加することが確実となったため、特に損傷の著しい橋梁の端部をメインに863平方㍍を塗り替える方針に改めている。現場を取材した。(井手迫瑞樹)
丸森橋一般図(当初は1,542㎡塗り替える予定だった)
実際の塗り替え範囲
14層に達する既存塗膜
鉛を中心に有害物質を含む
現場は、大河原大橋同様1月24日雪が降りしきる昼間に取材した。「県南でこうした雪が降ることは珍しい」(大河原土木事務所)ということ。いずれにしても厳寒下での塗り替えは塗膜剥離剤の剥離養生に時間がかかることは確実で、施工の苦労が偲ばれる。同橋の塗膜構成も極めて特殊だ。左図を見て分かるように塗装の積層数は実に14層、膜厚は一般部でも500µm、リベット部では最大700µm超に達する。塗り替えは少なくとも2回行っており、7層目に鉛入り錆止めペイントが確認されることから3回以上行っている可能性もある。なお、3~6層および8層目の塗膜成分は詳細が分からないという状況だ。有害物質の含有量は、PCBが0.03mg/kg、鉛が32,000mg/kgに達している。そのため、通常のブラストは使えず、黒皮部以外の塗膜を全て剥離させた上で、有害物質をほとんど含まない残部についてはブラスト施工を行い、市民アンケートで要望された同橋の建設当初の色である赤色に塗り替える。
トラス桁部(左)とリベット部(右)で剥離試験を行った
塗膜剥離剤は3回塗布
養生シート上に掻き落とし、そのまま除去
施工に先立って行った塗膜剥離試験結果では、3回塗布(1回当たり約0.7kg/平方㍍塗布)、合計で2.2kgの塗膜剥離剤(バイオハクリX-WB)を使用する必要があることが分かった。1回目は14~12層、2回目は12~4層、3回目は4~2層を除去する設計で、当期の厳寒下における塗膜剥離剤の反応速度を考え、養生には1回当たり最長48時間の養生期間を確保して施工している。剥離剤使用に際しては、全面足場の下部に白いシートおよび緑色のシートを敷き、剥離剤は同シート上で施工し、完了後緑色のシート上にスクレーパーなどでかき落とした塗膜片を、緑色のシートにそのまま包んで除去する。次いで白色シート上で上面にも蓋をして密封した状況にした上で各種安全対策を装備した作業者がブラスト工を施工して黒皮を研掃、生じた塗膜片や研削材を白色シートに包んで除去し、その後塗り替えを行っていく。
塗膜剥離工の施工状況。3回塗布が必要
ある程度塗膜除去を進めた状況。黒皮や錆はブラストで落とす
冬季の施工であるため、塗膜剥離剤および塗替え塗装ともに適切な温度・湿度管理が必要だ。そのため内部にジェットハーネスを入れて加温養生して施工を行う。そのために必要な電気の供給は、安全を考慮し、近くの電線から配線を引き込み分電盤により操作している。
半ば閉断面な斜材部にブラストをどうやって打つか
今年度試験施工を予定
今後は桁下残部およびトラス桁本体の除去を来年度以降に行う予定だが、そこで問題になるのは、半ば閉断面と化している斜材部や内部に泥の詰まった下弦材部である。上弦材も含めて、塗装や錆の発生、腐食(一部で層状錆や孔食も散見される)ことから、塗膜剥離剤だけでなくブラスト施工は必須である。しかし半ば閉断面ともいえる箇所(写真)についてはブラストノズルの挿入方法や施工後の確認方法を検討していく必要があり、施工は困難を極める。また、添接方法はリベットを使用しており、それも(残置かボルトへの転換か)考慮する必要がある。大河原土木事務所では、今年度にも上下弦材や斜材の一部を使って、ブラストも含めた塗膜除去方法、閉断面箇所の部材取り換えおよびそれによるブラスト工の施工し易さの追求などの試験施工を行う方針だ。
格点部は塗膜の劣化が著しく層状錆や一部で孔食が生じていた(左)、半ば閉断面な斜材部(中)
上部の塗膜劣化も目立つ(右)
今年度、残部の塗り替え方法を模索するため試験施工を行う予定だ。
補修設計は日本工営。元請は東北化工建設、塗装一次下請はコウリョウ。