上信越道の湯川橋下り線で採用
NEXCO東日本 橋梁レベリング層用グースアスファルト混合物を床版防水層として施工
東日本高速道路は、昨年11月、上信越道の湯川橋(佐久IC~佐久平PA間湯川渡河部に位置、橋長53㍍、鋼4主鈑桁、RC床版)の下り線で床版防水工および舗装の打ち替えを行った。規制時間が限られていることから通常施工するグレードⅡ(GⅡ、高性能床版防水)ではなく、また、ある程度の耐久性を担保する狙いからグレードⅠ(GⅠ、従来の防水工)でもない橋梁レベリング層用グースアスファルト混合物を床版防水層として施工したのが特徴だ。その内容を取材した。(井手迫瑞樹)
NEXCOは床版防水についてGⅡを基本としている。しかしGⅡは多層構造であることから施工に手間を要し、供用路線で床版防水が施工されていない個所や、GⅠの傷んでいる箇所を施工するには工程的に厳しい状況にある。そのため、時間を短縮しつつGⅡの性能に近づける床版防水工法として、グースアスファルトに床版防水性能を持たせる工法を開発したもの。新しい工法は従来工法に比べて施工時間を3/4程度に短縮できると期待している。
橋梁レベリング層用グースアスファルトとは
グースアスファルトは、昭和30年代から鋼床版の基層として採用されてきた。空隙が小さく水を通しにくい、他のアスファルト混合物と異なりたわみ追従性が高く、ひび割れが生じにくい長所を有する反面、たわみ追従性が高いゆえに、耐流動性に劣るため塑性変形しやすい、高温側の温度依存性も高いといった短所がある。また、原料をトリニダード・トバコの天然アスファルトに依存し、それとストレートアスファルトをブレンドして生産するため割高な傾向があったが、今回は専用のポリマー改質アスファルトを開発しており、材料入手が容易になった。コンクリート床版は鋼床版と違い、打設後も内部の水が蒸発し、この蒸発水がブリスタリングを引き起こす要因となる。グースアスファルトは空隙率が1%程度と非常に少ないためブリスタリングを起こしやすい構造であるが、これを抑制するために舗設温度の基準値を240℃から180℃に下げられるように設計している。
加えて動的安定度も従来の300回/㍉程度から1,000回/㍉程度に改善させた基準値を設定しており、わだち掘れの軽減・表層施工時の変形軽減に役立てている。
橋梁レベリング層用グースアスファルトを用いた床版防水層は従来SMAやFB(フラットボトム)13が使われている基層部(35㍉程度)に打設するもので、基層と床版防水層両方の性質を併せ持つことを期待して施工される。下地(床版上面)に少々の不陸があっても、グースアスファルトは所定の位置に流し込み、フィニッシャで敷き均すだけで表面をレベルに保つことができる。下地の凹凸に沿って凸凹が表面化しない。ローラー転圧などを用いた締固めも必要ないため手間が格段に減るというメリットがある。ただしランプ橋および近傍部など縦横断勾配が厳しい箇所(おおむね6%以上)では流れる可能性があり部分的に打設していく等の工夫が必要だ。
施工に使用するグースアスファルトは千曲川沿いの長野県東御市加沢250-1にある塩沢アスコンから出荷し、小諸ICを経て現場へ運ぶ。輸送時間は約50分。主要資材はニチレキ製の高性能グース用バインダ(仮称)を採用している。骨材は長野県東御市の安山岩からなる粗骨材・細骨材を用いる。事前コアの採取をしており、平均厚さ33~38㍉とばらつきはあるが、概ねレベリング層相当の厚さを確保している。骨材は13㍉トップのものを使用した。