千葉県 妙典橋P3~P4 高田機工が施工
東京メトロ車両基地直上100㍍の桁を送り出し架設
千葉県葛南土木事務所は20日、一般県道船橋行徳線の江戸川渡河部(市川市妙典)に建設中の妙典橋において、右岸側の東京メトロ車両基地を跨ぐ個所(P3~P4間)115㍍(厳密にはP4からP5側に15㍍程度地点のベントから架設)部分の桁(今回は主に架設桁部分)のうち手延べ桁と合わせ100㍍を約4時間で架設する工事を行った。手延べ桁、本桁と合わせ820㌧を架設するもの。東京の大動脈である東京メトロの心臓である車両基地上空の架設は、通常に比べ、高い安全率を確保しながら施工しなくてはいけなかった。また、同基地内にベントを仮設することも許されないため、例の少ない100㍍を超える長支間の一括送り出し架設が採用された。その詳細について報じる。(井手迫瑞樹)
事前工(鋼桁の地組など)
今回の桁は、既に桁架設を完了している江戸川上のP4~P5桁上に地組みし、そこから送り出す方法を採用した。送り出しについては、軌条設備を利用するため、まず軌条設備および台車を組んでから、その上に桁を地組みした。
具体的には、まず軌条設備について120㌧吊トラッククレーンなどを用いて設置、次に現在、P4の河川側(P5側)手前にあるベントをP4橋脚まで増設し、76.5㍍の手延べ桁をP4側陸上部よるクレーンで順次縦送り架設していく。同時にP3側には架設用の門型構台を設けた。
主桁は、高田機工の和歌山工場で製作して3,000㌧台船に積込み、和歌山工場岸壁から東京辰巳ふ頭まで海上輸送した。辰巳から現場までは、江戸川の水深が浅いため、喫水の浅い500㌧台船に積込み、7回に分けて河川内を輸送。江戸川航路(P7付近)から既設主桁上に順次縦送り架設し、一連になったものを手延桁付近まで縦送りした。架設には200㌧クレーン付き台船を用いた。その後、全断面現場溶接を行い、手延べ桁と連結した。
合計820㌧、橋桁と手延べ機あわせて約200㍍の桁を地組み、縦送りするのは既設の鋼床版箱桁上、「どうしても撓む」(高田機工)。例えば支点上は山形勾配になり、反力の大きな前方台車付近は勾配が大きく変化する。そのため、「どこでも車輪が追随できるように前方台車(1,280㌧)の前輪と後輪は電車の連結車両のようにボギーで繋ぐように構造的に注意した。また、下の鋼床版に影響を与えないように軌条の支保工は2㍍ピッチ、特に前方台車が通過する箇所についてはピッチを1㍍に短く配置し、荷重が分散するように配慮している。またその下、鋼床版と支保工の間には無収縮モルタルを敷設し、鋼床版を傷つけないようにしている。
施工直前
東京メトロ車両基地直上を架設する(左)/手延べ桁先端部(右)
1,280㌧台車(左)/桁の最後部(右)
ダブルツインジャッキ(左)/1分に1㍍の速さで送り出していく(右)
3分の2程度送り出された桁(左)/下流側から見る(右)
架設完了直前(左)/手延べ桁が門構に到達した(右)
P3上に門構を設置するのは桁と橋脚との架設時のクリアランスが11.3㍍に達し、最終的にはPCストランドジャッキによる吊下げを行わなければならず(後述)仮置きする必要があるため。門構は30㍍ほどの高さになるが、地震時の水平力に対して十分な耐力を有するよう、通常の転倒安全率よりもグレードを上げ、「倍ぐらいの安全率になるように設計している」(同)。
同じくP4前の補助ベントに関しては、1/4モデルを実際に制作し、耐力を確認した上で設置している。
手延べ桁による架設
10時半にき電停止し、その後15時までの間に架設するもの。施工はスムーズに進み、14時半手延べ桁先端部がP3上門構に到達し、当日の架設を完了した。。
今回の架設の特徴は、送り出し用ジャッキとしてダブルツインジャッキを使ったことと、前方台車に1,280㌧という大型台車を使用したことだ。
ダブルツインジャッキはラム運動ジャッキとシリンダ運動ジャッキの併設方式を採用しているもので、ラム運動ジャッキが稼働して架設物を押している間にシリンダ運動ジャッキが反転戻し運動を行うため、連続稼働が可能なジャッキである。今回の桁重量であれば1分間に2㍍ほどの架設速度が可能だが、現場の安全性を考慮し、1分間に1㍍の速度とした。また、大きな荷重のかかる前方台車は2台配列にした1,280㌧台車を用いた。これは曲率半径が600㍍とあることや、桁の傾きで「万一、100%の不均等が生じ、桁の荷重が全て左側の車輪だけに懸かっても安全に受けることができる構造にした」(同)。前方車両に対する架設時の最大荷重は640㌧で全荷重が片側にかかっても大丈夫な台車を使っている計算となる。
当日は土曜日ということもあり、400人以上のギャラリーが見守る中での施工となった。
49人(元請25人、とび17人、ジャッキ7人)が施工に従事し、合計820㌧の桁を無事架設し終えている。
今後
今後は送り装置を水平ジャッキに盛り替えて、約20㍍ずつ5週間に分けて送り出し、架設桁をその都度撤去して完成形に近付ける。その後、桁降下させ、所定の橋脚位置に据え付けるが、降下量が大きく(11.3㍍)、かつ左右の降下量差が大きい(3.9㍍)ことから桁の吊り下げは通常工法ではなく、PCストランドワイヤーで吊り下げるストランドジャッキ工法を使用する。同工法はワイヤーを使用するため揺れや横方法の力に柔軟性があり、より安全な施工が可能になるため採用したものだ。P3~P4間の架設は4月には完了する予定。
元請は高田機工。一次下請は長谷川建設(架設)オーテック(仮設設備など)、ジャッキはオックスジャッキ。(2016年3月1日記事公開)