NEXCO西日本 1000μの厚膜を一発で剥離
関門橋で既存塗膜の撤去にRPR工法を初採用
NEXCO西日本九州支社は、関門橋の既設塗膜の除去にIH(電磁誘導加熱法)を用いた塗膜剥離工法「RPR工法」を採用している。同工法は外気温の影響を受けずに施工できるため、時季を選ばず適用できる。また関門橋の既設塗膜は多いところで1,000μを超える膜厚を有しており、既存の塗膜剥離剤では2回以上塗布し、そのつど養生する工程が必要であったが、RPR工法は1,000μ以上の膜厚を1回走らせるだけで除去することができた。NEXCO西日本ではRPR工法は初採用。(井手迫瑞樹)
RPR工法は鋼橋の既存塗膜除去を対象とした電圧400VのIH(誘導加熱)式塗膜除去装置を利用した工法。同装置は①接面せずに塗膜を除去できる、②必要以上に鋼材表面を過熱しないために移動速度に応じて自動的に誘導加熱のための高周波を調節できる機能を有する、③形状に応じてアタッチメントを変更できる、といった特徴を有する。また、②のように温度制御可能なため、対象となる塗膜以外を傷めないほか、既存塗料内に含まれる鉛やクロムの融点および沸点以下の温度に制御して剥離できるため、有害物質が気体となり拡散することを防ぐことができ、安全に除去することを可能としている。
RPR工法の施工状況
施工方法は、車輪がついたIHヘッドを鋼材表面に走らせ、剥離した既存塗膜をスクレーバーで掻きだすというもの。部位や形状にもよるが、平滑面ならば「1日当たり50~70平方㍍の施工が可能」(販売元のイーエナジー社)。浮き錆もある程度剥離可能。ただし素地形成レベルは2種ケレン相当で、アンカーパターンは別途ブラストなどで施工する必要がある。
平滑部分の約17,000平方㍍を施工
季節に関係なく剥離可能
今回の工事では、事前に供試体および実橋の一部で試験施工し、約23,000平方㍍のうち、IHのヘッドを走らせやすい、平滑な部分の鋼桁を対象に約17,000平方㍍を施工した。「塗膜剥離剤と比べて施工速度が速く、外気温の影響も受けないため季節に関係なく施工できるため、その点では非常に良いと考えている。実際に今回も冬季を含む期間(9月~4月間)に施工したが問題なく塗膜を剥離することができた」(同社北九州高速道路事務所)。コスト面でも「薬剤やブラストを使わず、電磁誘導により加熱して塗膜を剥がすため廃棄物も増えないことや、養生に時間を取らないことから延べ人工も減らせるためコストは同等以下を見込んでいる」(同)。ただ、ボルト周りや隅角部などは現在のIHヘッドでは既設塗膜を剥離させることが形状的に困難であるため、塗膜剥離剤を塗布して除去している。
機材は発電機(2㌧)、冷却用の水タンク(1㌧)、機械本体(200㌔)からなるため、適当な設置スペースが必要。施工の際に作業員が持つヘッドおよびトランスフォーマーも10㌔程度ある。関門橋の現場では「補剛桁を囲む形で強固な足場で完全に囲っているので、そうした重い機材を足場内に搬入することができた。(補剛桁が)トラス形式だからできたともいえる。そういう意味では都市高速など鈑桁の(足場が構築しにくい個所では)施工では、高架下に機材を配置するか、車線規制で搬入するなどが必要になるかもしれない」(同社)と指摘している。
同橋では、RPR工法や塗膜剥離剤で既存塗膜を除去した後、下地の亜鉛溶射層を傷つけないよう、重曹ブラストで最終的にケレンし、塗り替えを行っている。
施工は横河工事、富士技建、RPR工法による塗膜剥離はオーシャンテック(一次下請)。