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鋼床版厚が12㍉の既設橋部

新利根川橋でSFRCを用いて鋼床版を補強

公開日:2015.02.16

 国土交通省宇都宮国道事務所は、新4号国道の茨城県古河市・五霞町の市町境の利根川渡河部にある新利根川橋既設橋部の鋼床版補修補強対策を進めている。同橋は1981年4月に当時の日本道路公団(JH)が建設、供用した橋長751.1㍍の鋼3径間連続鋼床版箱桁橋×3連の橋梁。2001年には無料化し、国土交通省に管理が移り、その時期から爆発的に交通量が増加(JH管理時には1日当たり10,000台前後だったが、現在は26,000台を超える)し、大型車交通量も62%に達している。とりわけ既設橋の鋼床版の厚さは12㍉と現行より薄く、大型車混入率の増加による疲労により鋼床版のUリブなどに多数の疲労亀裂が発生しており、舗装においてもわだち掘れやひび割れが生じていることから、新橋の供用(4車線化)を機に、既設橋部の抜本的対策として亀裂部の当板補修および鋼床版上の舗装基層部に鋼繊維補強コンクリート(SFRC)を打設して剛性を高める予防保全対策を行っている。注目の現場を取材した。(井手迫瑞樹)

 基層部にSFRC を45~50㍉
 表層部は改質Ⅲ型WF

 構造概要
 今回の工事は、新利根川橋および隣接する総和高架橋の既設橋部の橋長800㍍、7,400平方㍍が対象。基層に低収縮型の超早強SFRCを45~50㍉厚打設し、表層に改質Ⅲ型WFを用いたアスファルト舗装を30㍉厚敷設する。鋼床版上の負曲げが生じる主桁直上部にはCFRP製の格子筋を配置している。


                       舗装断面図

 発注に先だって技術開発 
 技術開発・工事分離型調達方式を全国初採用

 鋼床版の予防保全的な疲労対策は、鋼床版上部の舗装をSFRCに打替える工法が首都高速道路を中心に採用が多く、NEXCOや阪神高速道路などにも広がっている。宇都宮国道事務所でも過年度に大平高架橋、五霞高架橋、新利根川橋(上り線)の右岸側3径間部の鋼床版上の予防保全として舗装75㍉全厚一層仕上げのSFRC舗装を施工している。
 ただし、今回の工事では①鋼床版の疲労耐久性向上と②車両の走行性を確保し維持管理の容易性を重要視するという2つの機能を両立させるべく、基層にSFRC、表層にアスファルト舗装という2層構造を採用することにした。


                              補強効果

 また、2層構造を採用するにあたっては、それぞれの層が薄層化することへの課題や既に桁に疲労亀裂が発生していることからSFRCを敷設する段階で鋼床版だけでなく桁の変形や温度変化、施工段階ごとの荷重条件、それらに応じて生じるSFRC舗装への負荷が品質確保や耐久性に大きく左右される。そうした不確定要素を考慮しながら技術を開発する必要があるため全国で初となる技術開発・工事分離型調達方式を採用した。
 開発目標としては①(SFRCを)床版の一部とした性能、②適切な舗装性能、③必要となる技術実証の確認――を挙げている。
 ①は具体的にたわみ、防水性、SFRCのひび割れ抑制、施工品質管理、鋼床版の局部応力低減による亀裂発生の抑制、鋼床版との一体性の6項目で、道路橋示方書、鋼道路橋の疲労設計指針、道路橋床版防水便覧などの規定を満足するもの。
 ②は供用後5年以上で、わだち掘れが15㍉以下になること、段差が10㍉以下になること、すべり抵抗が動的摩擦係数で0.25以上になること、ひび割れが表層のアスファルト舗装で20%以下、基層のSFRCで20㌢/平方㍍以下になることなどを要求した。
こうした要求を掲げた結果、4社から技術提案が有り、うち3社の技術提案(下表)を開発することとした。その結果3技術とも新利根川橋で採用可能と判断し、総合評価方式で工事公告した結果、コストや施工実績、施工性、耐久性の観点から最も優れていた提案を行った鹿島道路の技術を採用することにした。


               3社の技術提案

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