首都高速道路が建設を進める小松川JCT、渋谷入口(下り)の供用が12月に迫っている。小松川JCTは複雑な線形形状、道路構造をしかも本線を供用しながら架設し、改良していく難工事であり、完成に近づきつつある。渋谷入口も同様に様々な構造を有する難工事であり、隣接する都道に配慮しながら慎重に工事を進めていった。東品川桟橋・鮫洲埋立部の進捗状況と含めて、高橋三雅・同社東京西局プロジェクト本部長に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)
中央環状線3か所の改良工事(首都高速道路提供、以下注釈なきは同)
小松川JCT 中央環状線と7号小松川線を連結
小松川出口を付替 中環小松川入口も新設
――まず小松川JCTから
高橋 2015年3月に全線開通した中央環状線の機能をさらに向上させるために、現在接続されていない中央環状線と7号小松川線とを連結する小松川JCTを設置する工事です。特に中央環状線の埼玉方向と7号小松川線の千葉方向は交通需要が多いと予測されており、この方向を結ぶ連結路が設置されることにより、首都高速道路ネットワークがより強化されるものとなります。小松川出入口において中央環状線(埼玉方面)との出入りが可能となるよう、入口を追加するとともに、現在の出口を7号小松川線の北側に付替えます。また、これらの整備に伴い、7号小松川線の附属街路第3号線、第4号線を付替えます。これらは中央環状線のジャンクションの機能が不足している箇所への連結路の追加等を行うものです。
小松川JCT事業概要図(左:整備前、右:整備後)
当該箇所は、かねてから直角に立体交差しているだけでアクセスができませんでした。建設時には用地上の問題や河川上を占用するということにもなるので、事業について長年検討してきた中で、このような整備形態を計画しました。
構造的なポイントとしては、中央環状線の接続部については河川部に入るため、河川に対する影響の回避に努めました。陸上部については、7号小松川線本線がさらに拡幅され、用地取得が必要な箇所も出てきましたが、用地取得に当たっては丁寧な対応をして、住民の皆様の理解を得ながら事業を進めてきました。
小松川JCT河川部構造一般図
北側の連結路から見ていただきますと、中央環状線から南下してきて、中川を横断し、7号小松川線に合流した先には現状では小松川の出入口がセンターランプとして配置されています。中央環状線から7号小松川線本線に合流した交通が現状の7号小松川線の小松川出口に右分流をしていく場合、交通流が交錯してしまいます。それを回避するために、右分流している既設の小松川出口を廃止し、左分流する小松川出口に新たに付け替えて交通流の交錯を回避する改造を伴うのが陸上部の特徴です。
一方、中央環状線方面に行く導線は、これも同じで、現状の小松川入口がセンターランプで7号小松川線本線に対して右から合流していく形態になっています。ここから中央環状線に行くには距離が不足しているということもあって、中央環状線方面の入口(中環小松川入口)を新たに設けまして、そこからJCTをご利用いただくという形態になっています。
結果的に、都心環状線方面へ7号小松川線をご利用いただく方は従来通り7号小松川線本線の右側から合流していただく既存の小松川入口を、中央環状線方面をご利用いただく方は新たに設ける中環小松川入口を利用していただきます。案内標識には新しい入口の名を「中環小松川入口」と記して、利用者のご理解を少しでも頂けるようにしています。舗装の色も工夫し、中央環状線に行く方を青、都心環状線に行く方を赤にし、標識も色を変えた矢印で示すことによりご理解いただく工夫を行っています。
ルート選択の幅が広がる
下道の混雑も緩和
――整備効果は
高橋 ルート選択の幅が広がります。今までは都心環状線方面に行くことしかできなかったわけですが、中央環状線を経由することで埼玉方面や千葉方面にも行くことができるようになりました。千葉外環から中央環状線を経由する選択も可能になります。これがネットワークの機能として向上した点です。首都高速道路経由でも2ルートあって、中央環状線経由の方が(時間帯によっては)時間短縮を図ることができるという選択も可能になってくると思います。江戸橋、箱崎経由で行くよりも、中央環状線を使い板橋方面へ行くと、時間短縮が見込まれるという事です。
次にアクセス性の向上です。例えば、一之江や篠崎界隈にお住いの江戸川区の方々が中央環状線を使うとすれば、現在は街路を走り平井大橋まで行かなければなりません。最寄りの一之江とか小松川から直接首都高速に乗ることができるので、下道の混雑緩和の効果もあります。一般道もすき、交通安全にも寄与できます。
――工事の進捗状況は
高橋 構造物は完了して、舗装と設備、付属物の工事を行っています。設備工事とは料金所関係の電気設備、デリネーター(視線誘導灯。高欄の上で光るもの)などの電気設備工事です。また、遮音壁の復旧工事を一部行っています。また、街路工事も進めています。
P82橋脚 支圧板を拡大して抵抗面積を広くしアンカーボルトへの負荷を低減
支圧板の拡大は全周 基礎に対するアンカーボルトの増設は行わず
――構造上と施工上の特徴は
高橋 河川部の範囲は、中央環状線の接続部から中川を横断する最初の橋脚までとなります。連結路を支持させる橋脚はたくさんありますが、P1、P2、AP3、AP4、BP3、BP4が新たに新設した基礎橋脚となります。
中川横断部の新設基礎橋脚についてはAP3、AP4、BP3、BP4がありますが、7号小松川線本線を支持する既存橋脚(小302、小303)と同一流向上に配置することで、河川への影響を軽減させました。
河川部工事概要図
P1、P2は荒川の中堤に位置している基礎橋脚で、既設の基礎と同じように鋼管矢板基礎を新たに堤体内に構築しています。計画、設計、施工上の大きな特徴としては、中堤内では、河川に影響を与えないように新設橋脚を2基と極力少なくしました。他は、既設橋脚を改造して、連結路の桁構造を支持させるようにしました。
新設基礎橋脚に関しては、基礎構築後、ラーメン橋脚を立ち上げて、内回り・外回りの連結路を支持させています。新たな連結路のみを支持する構造にして、既設橋梁を支持するのは既設橋脚に委ねています。
大きな特徴はP82橋脚です。既設橋脚で鋼管矢板基礎上に2柱の橋脚が立っていて、その上にピポット支承があり箱桁を支持している構造で、それが中央環状線の既設構造です。既設基礎と橋脚を活用して連結路の橋桁を支持させるために、ラーメン化と称していますが、2柱の橋脚を連結させて、さらに横梁を張り出させています。これは、新設の基礎と橋脚を減らして既設構造を生かすことによって、河川構造物への影響を最小化するためです。
P82橋脚の構造上の特徴
――P82は、まるで既存の橋脚に鎧を着せたような感じでした。ただ、重い梁と桁が載るので、既設橋脚やその基礎がもつのか、と心配になりました。構造上、耐えられる理由は
高橋 載荷荷重の増加に対して基部(アンカー)の耐力がもたないということで、アンカーボルトの増設などのさまざまな補強方法を模索しました。最終的には、基部の支圧板を拡大しました。支圧板を拡大して抵抗面積を広くすることで、アンカーボルトに対する負荷を低減させています。つまり、足元を広げることで支圧面積も広がって、アンカーボルトに対する負荷が減るので、アンカーボルトがもつ形となります。
既設鋼製橋脚補強
――広げたのは橋軸直角方向のみでしょうか
高橋 全周(四辺)です。堤体のなかに埋まっている部分でサヤ管構造にして地盤(堤体)と縁切りをしていたのですが、掘り上げてサヤ管を取って基部をむき出しにして、素地調整をしプレートをつける施工をして、サヤ管を復旧しています。
――基礎そのものは補強をしなかったのですか
高橋 基礎に対するアンカーボルトの増設はしていません。
――基礎は安全側につくられていたのですね
高橋 動的解析で評価をして、必要な基部補強をしたということです。
――1箇所あたりどの程度の重さが増量されたのですか
高橋 P82のケースでいうと1,405tに達しました
――河川部の架設はFC船ですか
高橋 河川部のP82~A5、P2~BP6の大部分についてはFC船で行い、後は陸上から架設しました
河川上の桁架設
――夜間架設ですか
高橋 そうです。
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