国土交通省中国整備局は、国道2号や9号など17路線、総延長1,911.3kmを所管している。山陽側では広島・岡山都市圏での国道2号を中心とした渋滞問題が大きくなっているため、現道改良・バイパス事業を進め、山陰側では高規格幹線道路のミッシングリンク解消事業に取り組んでいる。その事業概要と進捗状況に加えて、維持管理の取り組みも含め、福田敬大道路部長にインタビューした。
管内渋滞損失時間の半分が広島・岡山都市圏に集中
山陰道の整備率は約46%。国道9号とのダブルネットワークが必要
――管内の道路に対する課題は
福田部長 道路整備では山陽側と山陰側では別の課題を抱えています。山陽側ではかなり早くから高速道路の整備が進みましたが、高速道路だけではまかないきれない交通需要があり、とくに岡山と広島の都市圏では国道2号の渋滞問題が深刻です。管内の渋滞損失時間の約7割が都市圏に集中していて、そのうちの8割が山陽側、岡山と広島の都市圏では管内全体の半分以上になっています。経済活動に与える負の影響が無視できないところまできていますので、国道2号を中心として現道の改良・バイパス事業を急ピッチで進めています。
山陰側では島根県西部、山口県北部における高規格幹線道路のミッシングリンクという課題があります。山陰道の整備率は約46%で半分にも満たない状況なので、地元のみなさまからも自動車専用道路を1日でも早くつなげてほしいという要望をいただいています。山陰側の主要幹線道路である国道9号には脆弱な部分があり、緊急輸送ルートを確保するためにも国道9号と山陰道のダブルネットワークが必要であると考えています。
管内の高規格幹線道路の整備状況
(以下資料・写真は、中国地方整備局提供および国土交通省HPより抜粋)
山陰道計画図
中国地方特有の地勢的な課題もあります。管内の総面積は約31,900km2ですが、その約6%程度の河川氾濫区域に人口の約66%が集中し、洪水や高潮による水害リスクの高い地域で生活や経済活動が営まれています。土砂災害危険箇所も約95,000箇所と全国の18%を占めており、都道府県別箇所数で広島県、島根県、山口県が上位3県となっています。
管内では度重なる土砂災害・水害に見舞われ、平成30年7月豪雨でも大きな被害が発生しました。災害が発生したときに被害を最小限に抑えることを考えなければなりませんし、最速で復旧、啓開する方法を徹底していく必要があります。通常時には、生活や経済を支えている道路の役割は空気のような存在ですが、災害時に通行止めになれば、その影響が如実に出てきます。平成30年7月豪雨で、道路に期待されている役割の大きさを改めて実感するとともに、災害に対する取り組みをさらに進めています。
管内の土砂災害危険箇所と過去の主な土砂災害・水害
平成30年7月豪雨では県道、市道を含めた通行可能区間の地図を提供
大規模土砂崩落が発生した国道31号は被災後5日で仮復旧
――平成30年7月豪雨での対応は
福田 ソフト面の初動対応では、通行可能区間の地図を作成して7月10日からホームページで提供しています。これには非常に多くのアクセスがありました。地図は、各事務所の現地確認情報とETC2.0の通行実績データをITS Japanに提供してもらい作成しましたが、県道、市道を含めたもので作成しないと通行可能箇所の把握ができませんので、各道路管理者から情報を集約して、当整備局が整理を行いました。
通行可能区間地図例
大規模な災害対応では、広島市内と呉市を結ぶ国道31号の復旧作業があります。海側から国道31号、JR呉線、広島呉道路が並走している箇所(安芸郡坂町水尻地区)で大規模な土砂崩落があり、3路線すべてが被災しました。国道31号の海側に県管理の公園の駐車場がありましたので、それを活用して早期に迂回路を確保するべく、6日の被災後、大型車が通行できるように舗装増厚などを突貫工事で行い、11日23時に約680mの仮設道路での通行止め解除ができました。国道31号本線を広島呉道路とJR呉線を復旧するための作業ヤードにすることができて復旧促進が図られたと、高速道路会社とJRからも感謝されました。本復旧は、9月12日に完了しています。
国道31号(水尻地区)の被災状況と復旧状況
また、広域迂回により呉市に入る交差点が大渋滞したことから、急遽、左折専用レーンを追加するなどの対策も行いました。高速道路会社、JRなどの関係者と知恵を出し合い、それぞれの役割分担のもと復旧対応にあたれたことが大きな成果となりました。