いわき工事事務所は、常磐自動車道の暫定2車線区間のうちいわき中央IC~広野IC間約27kmの4車線化事業などを復興創生期間内の2020年度内の完成を目標に進めている。事業の現状と特徴について、田子瑞宏所長に聞いた。(井手迫瑞樹)
常磐道の4車線化事業延長は約27km
橋梁区間は約6km、トンネル区間は約1.8km
――管内の事業概要から
田子所長 当工事事務所は、常磐道のうち、いわき中央IC~広野IC間約27kmの4車線化事業を担当しています。この間を約10件の工事ごとに3工事区(平工事区、四倉工事区、広野工事区)に分けています。構造物の数および延長は、橋梁が22橋約6km、トンネルが2箇所約1.8kmで、構造物延長は全体の約3割で、相対的に高い区間となっております。
4車線化事業概要図(NEXCO東日本 いわき工事事務所提供、以下注釈無きは同)
平工事区/四倉工事区概要図
いわき中央橋(平工区)
真似井川橋/茨原川橋(平工区)
高倉川橋/袖玉山川橋(四倉工事区)
白岩川橋(四倉工事区)
日渡川橋(四倉工事区)
広野工事区概要図/小名浜道路事業概要図
虻木橋(広野工事区)
4車線化事業以外に、ならはSIC、大熊IC、(仮称)双葉ICの新設、広野IC付近延長1.2kmとならはSICの北3km付近延長3.1km、双葉IC付近延長2.4kmの付加車線事業も行っています。加えて、福島県から受託している事業として小名浜道路事業(事業全長8.3km)のうち、いわき小名浜IC~添野IC間2.5kmの建設を進めています。
――4車線化事業の進捗状況は
田子 橋梁下部工が全面展開中です。下部工は全部で126基あり、全基着手済みです。上部工については、この10月に漸く全ての橋梁で製作・架設業者が決まった段階で、現在すべての橋梁が詳細設計中です。
橋梁は、杉内川橋(橋長39m)を除く全てが100m以上の長大橋です。理由としては路線自体が山側に位置していることがあります。ピア高も平均で25m、折木川橋のP9橋脚が最高で高さは48mに達します。主な構造物としては、好間トンネル(1,236m)、大久トンネル(526m)、折木川橋(管内最長の711m)、北迫(きたば)川橋などがあります。
4車線化事業橋梁一覧
施工・構造の面で難工事が予想される好間、大久両トンネル
大久トンネル 地滑り対策で千鳥状に抑止杭を配置
――代表的な構造物は
田子 ネックになる構造物は好間トンネルと大久トンネルです。好間トンネルは直上に好間工業団地を抱えており、土被りも極端に薄いところでは18m、高くても46mしかありません。また、1期線と2期線の離隔も最小で6.2mと極めて近く、掘進には相当の配慮を必要とします。工業団地では車の部品などの精密機械を製造している工場もあるため、工事時の振動や騒音などには格段の配慮が必要となります。操業している工場からは工事で発生する振動が55dB以下になるよう求められてるなか工場に到達する振動は50dB以下に抑制できています。好間トンネルの上部は、工業団地造成時に地山ではなく、盛土した部分があります。水が出てきたこともありますが、溜水であったようで、現在は殆ど水の漏れはないため、覆工コンクリートおよび防水シートといった従前の対策で事は足ります。現在の掘進延長は約450m(10月末現在)です。
好間トンネル概要図
好間トンネルの施工状況
大久トンネルはトンネル北側付近では地滑りの危険性が指摘される区域に入っています。元々、集水井があるのですが、さらにもう1箇所集水井を掘って地下水位を下げて地すべりの安定性を高めます。また、集水井の掘削土はトンネル上の押え盛土に使用します。
大久トンネル概要図
集水井と抑え盛り土(井手迫瑞樹撮影)
元々は地滑り区域で5.7万㎥ほどの大幅な排土が必要であろうと考えていましたが、工期や用地買収が広範囲になるため、その辺の見直しを図りました。再検討の結果、大規模な抑止杭を明かり部に打ち、排土工を1万㎥程度に抑えました。その結果、用地買収も不要になり定められた工程を守られそうです。抑止杭はφ550mm、長さ30m、厚さ25㎜の杭を76本、2列に千鳥状に配置して施工しています。これらの対策をしないと明かり部の掘削やトンネルが掘れないため、掘進と押え盛土、抑止杭の施工を並行しながらトンネル掘削をしています。同トンネルはNATM工法で掘削機械はツインヘッダーとブレーカーを使用して掘っています。
抑止杭の施工(井手迫瑞樹撮影)
――大久トンネルは延長が短い割には苦労しそうですね
田子 現時点では、山自体の岩が固く掘削に手間がかかっています。また、高速道路本線を使用しないと資材の搬入・搬出ができません。更に作業時間は8時~16時半に限定され、土日は作業できない状態でした。しかし11月以降は8時~18時に作業時間が延長され、土曜日も作業できる状態になりました。今後の地滑り箇所の掘進していくため、慎重に進めていく必要があります。地すべり区間では補助工法として長尺鋼管先受工と長尺鋼管補強工を実施しながら掘り進めます。地滑り区域のため、トンネル内計測の他、地表面も計測しながら慎重に施工を進めていきます。掘進速度は通常で1日4mほど、地滑り地区は同2m強ほどとなります。現在は約260m(10月末現在)ほど掘進しています。
施工中の大久トンネル(井手迫瑞樹撮影)
――コンクリート打設・養生の工夫については
田子 PP補強繊維を0.3%混入した中流動コンクリートを使用しています。スランプは23~24cmです。圧力センサーを仕込みセントルが曲がらないように慎重に施工していきます。養生面では30m区間を湿潤状態に保ち、後続はミスト養生しています。貫通後は隔壁バルーンを置き、風の流れを抑制し、乾燥を避けるようにしています。