道路構造物ジャーナルNET

2018年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ⑤巴コーポレーション

生産設計統括のセンタ―化を推進 鉄構エンジニアリング事業を展開

株式会社巴コーポレーション
代表取締役社長

深沢 隆

公開日:2018.09.10

 当NETの姉妹メディアである「週刊 鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を訪ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。第3回目は、巴コーポレーションの深沢隆社長の記事を掲載する。

 ――昨年度の業績は
 深沢 売上高333億6,000万円、営業利益36億1,000万円、利益率10.8%となり、ROEも10%超えと、期初に立てた事業計画値を上回ることができ、創業100周年にふさわしい業績を上げることができた。
 ――今年度の業績見通しは
 深沢 今年度は、平成31年度を終了年度とする中期5カ年経営計画のつなぎの年であり、昨年度並みの業績を目標に鋭意展開中である。この目標を達成できれば、おのずと中期経営計画は達成できるものと考えている。
 しかしながら、労務、鋼材のひっ迫、高騰等の影響もあり、忙しい割には利益の捻出が思うに任せないのが実態である。
 ――御社の建築鉄骨、橋梁、鉄塔の現状、課題は
 深沢 建築鉄骨は、受注残を多く抱え、今までにない高い山積みとなっており、関係者にご迷惑をおかけしないよう、いかに円滑に生産消化するかが最大課題となっている。引き続き、事前検討の充実、提案型の業務推進が求められる。
 橋梁は、昨年度の受注が順調に推移したことから、今年度の生産量は確保できているが、今後の受注量確保に向け、技術提案力アップ、高工事評価点獲得など地道な展開を図っていく。
 東電向け送電用鉄塔はアライアンス契約に基づく発注形態となっており、生産量は確保されている。ただし、厳しいコストダウン要求に応えるべく、仮組省略化などの思い切った生産改革にチャレンジしたい。
 ――設備投資や組織体制の計画について
 深沢 設備投資としては、昨年度は基幹生産部隊である小山工場新管理棟を建設したが、今年度は協力会社用事務所棟の新築を計画している。東北十和田工場においては、隣接地購入、併せてレイアウト見直しによる生産力アップを計画中である。
 組織体制としては、札幌工場を含めた3工場の生産設計を統括して行うセンタ―化を推進中である。
 ――「働き方改革」への取り組みは
 深沢 労働時間の適正化に向けた業務量調整を意識的に行うことにしている。
 併せて、生産効率アップに向けた、老朽化設備更新、自社開発トモエ・オペレ―ション・システム(TOPS)の機能拡張等の基盤整備を計画的に推進中である。
 また、要員確保に向けた待遇面での改善策として、報酬アップ、寮・社宅等の整備、工場棟の耐震補強と併せた形での作業環境改善工事を鋭意進めている。


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 ――新分野の進出と新技術開発については
 深沢 大空間構造分野においては、東京国際展示場における鉄と木とのハイブリッドトラス構造、八戸スケート場におけるH形鋼を用いたダイヤモンドトラス構造(HDT)を提案、採用いただいているビジネスモデルの堅持に今後も注力していく。これにより、東京五輪以降の首都圏を中心に目白押しの状況にあるビル鉄骨大型案件との両輪を上手く回転させたい。
 また、建築構造設計、特殊工事部隊を活用した案件を一括受注し、高難易度の工事は当社が、他の工事は当社の管理下でアッセンブルするビジネスモデル(鉄構エンジニアリング事業)を展開中である。今までにない大型案件の受注につながっており、自社製作工場を保有するという強みを活かしていきたい。
 ――ほかには
 深沢 冷静にみれば、現在の業績は市場環境の好調さに下支えされたものであり、『真の実力』は次のステップで試される。
 現在、平成32年度からの次の3カ年計画を策定するために、次代の担い手をターゲットとした社長主催の勉強会立上げを計画しており、公募型小論文形式で人選を行っているところである。
 環境を整備して、有能な人材を育成していくことが最大課題であり、夢が持てる魅力ある企業づくりにまい進したい。
(聞き手=大熊稔、文中敬称略 2018年9月10日掲載)

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