2018年新年インタビュー③ エキスパートシステムを用いたAI開発に着手
土木研究所・西川理事長インタビュー 新規採用を国家公務員資格者以外にも開放
国立研究開発法人
土木研究所
理事長
西川 和廣 氏
昨年同様、新年最初のインタビューのおひとりに国立研究開発法人土木研究所の西川和廣理事長に登場していただいた。今回は採用の門戸を国家公務員資格者以外にも開いたその狙いや、新しく始めたAIの研究について詳しく話を聞いた。(井手迫瑞樹)
150人中、35歳以下は僅か15人
このままでは組織の継承自体が不可能
――まず、採用の門戸を国家公務員資格者以外にも広げたことについて、どのような意図からこうした施策に踏み切ったのですか
西川理事長 土木研究所は、一昨年国立研究開発法人になりましたが、独立行政法人であることにはかわりありません。従来からの繋がりの中で、国土交通省との人事交流が多く、独自採用でも国家公務員の資格を有する人材を採用していました。しかし、他の独立行政法人を見渡すと土研以外は国家公務員の資格を求めていません。本来、(独法は)総人件費という限られた枠の中ではありますが、採用の仕方は自由なわけです。
昨年、土木研究所に13年ぶりに戻り、理事長として着任した時感じたのは、若い職員が想像以上に少なかったことでした。150人中、35歳以下は僅か15人です。これでは後継者が育てられません。国交省から若干名若手が配属されることもありますが、2,3年で引き上げられることがほとんどです。さらに人口減少が進む中、若手の確保はどの分野でも深刻化しています。このままでは組織の継承自体が不可能になります。そのため採用要件から国家公務員資格を外すことに踏み込んだものです。
3年の任期制は意図的に残す
働き続ける意思があれば、基本的に本採用
――具体的にどのような人材を採用していくのですか
西川 (土木工学を専攻し)修士以上の資格を有する人に来て欲しいと考えています。こうした人は一応大学や大学院で研究の手法を学んでおられると思いますので。しかし、できれば若いうちに来てほしいと考えています。研究手法の基礎が出来ていれば、後は当所で実地も交えながら教育することができます。なお、3年の任期は意図的に残しています。
――それはなぜですか
西川 やはり、入ってきた方は研究者を指向して来るのですが、土木研究所という行政とのつながりが強い職場での研究業務は、想像していたこととのギャップが埋めがたい可能性も考えられ、それに対する配慮からです。国家公務員資格を有している方は最初から本採用ですが、資格が無い方は最初の3年間は有期採用とし、そのまま働き続ける意思があれば、基本的に本採用とします。
――学卒や高専卒の人材は
西川 そうした方も一般職として採用を考えています。基本的には外には出さず、実験など試験研究のエキスパートとなる職員になってほしいと考えています。ただしキャリアパスはより柔軟にし、当初は研究補助員としますが、適性があれば主任研究員かそれ以上への昇格もできるようにしていきたいと考えています。
――こうした改革は国交省離れ、につながる側面もあるのでは
西川 現在、国総研は本省のサポート、土木研究所は現場のサポートという住みわけができつつあります。その枠組みを維持しながら、最終的には技術で頼らざるを得ない集団になれば問題はないと思います。現場では国家公務員であるかどうかではなく、課題に対して明確な技術方針を示せるかどうかだけが問われますから。また、土木研究所は対象分野の業界等に対しても、自信を持って技術の方向性を示すことができる研究所であり続けたいと考えています。採用方法の変更はこうしたことを可能にできる方法であると考えています。
また、研究員のモチベーションを上げるため幹部職についても、国家公務員の資格を持たない人間でも昇任できるような仕組みにします。