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総務人事畑 独自の社内人事考課システムを構築

復建技術コンサルタント 菅原稔郎新社長インタビュー

株式会社復建技術コンサルタント
代表取締役社長

菅原 稔郎

公開日:2017.06.28

 建設コンサルタント業界東北地方最大手の復建技術コンサルタントの新社長に菅原稔郎専務が昇格した。菅原新社長は総務人事畑一筋であるが、30代後半から40代半ばにかけて業界でもいち早くISO認証に動き、目標管理制度等を充実させ、同社独自の品質マネジメント、人事考課の仕組みを確立させるなど、裏方としてエンジニアリング集団を支えてきたという自負がある。その菅原社長に今後の新社長としての抱負、経営の方針を聞いた。(井手迫瑞樹)

「信頼」は何物にも代え難い
 ISO導入 社内の旗頭から外部のコンサルタントへ

 ――新社長は総務人事畑出身と聞きました
 菅原社長 そうです。だから遠藤(前社長、現会長)から社長就任の打診があった時には、エンジニアリング集団の中で事務系の社長は任に堪えない、と固辞したのですが、押し切られてしまいました(苦笑)。
 ――とは言っても社内では「最後の拠り所」と見なされています
 菅原 コンプライアンスを守る=信頼は何よりも代え難いですから。受注減への対策は時間があれば手を打てますが、法に触れることによって蒙る信頼の失墜は、即会社を危機に晒します。法令順守はもちろん、全ての設計業務の信頼性を確保するため、業界に先駆けて独立したセクションとして「検査課」を設置しました。ここでのチェックを経ない限り成果物を納入できない体制を敷いています。
 実は若い頃5~6年だけ総務人事畑から離れていたことがあります。
 ――どのような分野におられたのですか
 菅原 業界でISO9001導入の動きが出た時に、当社では前例がほとんどない中、いち早く認証取得に取り組み、品質システムの構築を行いました。取得後は、建設会社や同業他社、官公庁にも取得の動きが出て、その結果、非常に多くのコンサルティング依頼が来たことから、一時期総務部を離れ、人事研修部という部署を新設し、社内業務の傍ら5~6年外部のコンサルティング業務を行いました。

品質マネジメントは経営そのもの
 成果主義とコンピテンシーの導入

 ――コンサルタント業務まで行うとは、相当深くコミットされたのですね
 菅原 単に規格を取得するだけでは底が浅いと感じました。品質管理や経営知識が無いと駄目で、一番勉強していた時期だと思います。品質マネジメントは経営そのものであることが分かってからは、目標管理を人事制度にリンクさせる手法を社内に導入しました。それも標準的な手法を導入するのではなく、あくまで当社の業態を考慮して、独自の評価制度・賃金制度を組みました。
 ――既存のシステムを変えるわけですから反発も大きかったでしょう
 菅原 経営側はもちろん労組の代表にも入っていただいて委員会を作り、同意を得ながら成果主義的なものに組み直して行きました。最も独自性のある制度としては、コンピテンシー評価(高業績社員の考え方や行動特性を聞き取り、それをあるべき姿として他の社員に示すことで全体をレベルアップさせる手法)を、早くから導入したことです。

技術の専門知識はありません
 方向性の明示と働きやすい職場の創出

 ――そうした総務人事や経営企画を担ってこられて新社長に就任したわけですが、抱負は
 菅原 私は技術のことは分かりません。社員に頼るしかありません。だから「全員経営」というのが就任に当たっての信条です。事務系の社長として「会社の進むべき方向を明確に伝えること」、「社員が働きやすい職場を作っていくこと」が私の役割です。受注し、会社に売上をもたらすのは、あくまで担当者である技術および営業職ですから。
「真実の瞬間」(ヤン・カールソン著)というCS経営のバイブルのような本があります。スカンジナビア航空の再建を描いた本ですが、再建の鍵となった「真実の瞬間」は、客室乗務員と乗客のコミュニケーションでした。顧客との接触場面で、どれだけ顧客のニーズに応え、或いは好印象を与えることができるか、それが経営を左右したわけです。当社にとっての「真実の瞬間」は、営業職または技術職が顧客の疑問や要望(潜在的なものも含む)に対して、どれだけ適切に応えることができるかだと思います。これを培い、社員一人一人が経営者と同じ視点を有して対応できるようになることが理想です。
 そのためには、前提として、働く人も会社も健康であることが大事です。働き方改革が叫ばれていますが、できるだけ残業をしない、労働時間を減らすことが社員の健康確保、ひいては定着率の上昇につながり、収益性を高めることに寄与すると考えています。
 ――専務時代も、残業を減らすことを各セクションへ強く要望していたと聞いています
 菅原 コンサルタントの財産は「人」ですから。人をなおざりにすれば結局会社も健康体ではいられません。会社の経営を健康にする試みとしては、経済産業省の健康経営優良法人にチャレンジすることにしています。

民需と関東以西で受注増
 CMやアセットマネジメント分野の拡充目指す

 ――ここ数年の経営状況は
 菅原 完成高は55億円前後で推移しています。受注高は平成24年度がピークで73億円、26年度47億円、27年度47億円ときていましたが、28年度は63億円まで上昇しました。


しばた千桜橋(宮城県宮城郡柴田町内)

丸森大橋(宮城県伊具郡丸森町内)

過去3年の業績推移

 ――その原因は
 菅原 エネルギー関連や造成関係といった民需が10億円程度まで上昇したことがまず挙げられます。あとはCM業務、そして官公庁の受注も増加したことです。地元の東北地方整備局管内に加えて、関東地方整備局管内の業務も受注できるようになりました。技術部隊は東京だけでなく関西にも配置し、エリア拡大を目指しています。
 ――今後伸ばして行こうと考えている分野は
 菅原 今月ISO55001(アセットマネジメント)の登録審査がありまして、7月末に認証取得の予定です。インフラの老朽化対策などメンテナンス技術は当社の得意分野でありますが、その裏付けとしての国際規格認証により、さらに顧客の信頼を高めていきます。
また、PPPやPFI等のビジネスチャンスの広がりにも期待をしています。
東北全体としての復興事業は進んでいますが、福島県沿岸部についてはこれから本格化します。中間貯蔵施設の計画・設計や廃炉計画など、東北に本社を置く企業として福島県の復興に関わる業務には今後も積極的に参画していきます。待ちの姿勢でなく、事業を提案・創出していく気概、進取の気風があればまだまだ成長していけると考えています。

15年後は100億円受注へ
 人員も1.6倍増に拡充したい

 ――長期的な経営目標は
 菅原 昨年、役員・部長・副部長といった会社幹部で勉強会を開きながら、長期ビジョンを策定し、15年後に100億企業達成を目指す構想を立案しました。
本年度から始まる第14次中計もこれを前提にした3ヶ年計画としております。
基本的に企業は維持・発展するものであり、存在する限り常に成長し続けなければならないし、成長なしに企業の活性化は図れないと考えております。
ただし、労働時間削減への取り組み、企業風土の変革を進めるため、当面の3ヶ年は体力をつける3年と位置付けています。
 ――現在の社員の人員規模は
 菅原 308人です。100億円売上時は480人まで増やす方針です。ここ数年は毎年10人程度新卒採用していますが、今年度から新たにリクルーター制度を設けて、採用活動を強化する方針です。


資格保有技術者の推移

 ――新卒の定着率はどうですか。建設業界は一時期、官に人材が流れるなど非常にきつかった時期がありましたが
 菅原 当社も震災前後の一時期は人材流出が大きかった時代があります。ただし、最近は官の社会人採用も落ち着いたようで、以前のようなことは起きていません。
 ――団塊の大きな事業を経験した人材が高齢化する中で、どのように技術を承継していきますか
 菅原 基本的に育成は現場で行うしかないと思います。高いノウハウを有する技術者とともに業務を進めることで、学びとっていくことが最短の技術承継だと考えています。
また、技術力向上に対するモチベーションを上げるため、技術的に優れた人材を表彰する「マイスター」制度を15年前に創設しており、要件を満たしたマイスターには50万円、準マイスターには10万円の賞金を毎年授与しています。
 ――ありがとうございました

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