2016年我が社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ⑧高田機工
橋梁受注に向け各種対策を強化~関東地整より同時に3表彰を授与~
高田機工株式会社
代表取締役社長
寶角 正明 氏
当NETの姉妹メディアである「週刊 鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業の一つと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を訪ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。5日は、IHIインフラシステムの井上明社長と高田機工の寶角正明社長の記事を掲載する。
――2015年度業績は。
寳角 橋梁事業は、受注に向けての研究や分析に基づく対策が功を奏し、10数年ぶりに年度数値目標を達成した。しかし利益では、昨年度前半の山積み不足に伴う悪化を補完できなかった。鉄構事業では、首都圏中心の大型物件の需要増加により大幅に事業環境の改善が進展した。関西圏の物件は相変わらず少ないなかで、選別受注に徹した結果、受注金額は目標におよばなかったが、利益ではセグメントで黒字となった。
――16年度の見通しは。
寳角 橋梁事業では、新設鋼道路橋の発注量は、新名神道路事故の影響で鋼橋需要が懸念され、昨年度より少ない20万㌧程度と予想している。現在(8月中旬)までのところ昨年度と比較して受注で80%、工場生産は120%と順調な状況で推移している。鉄構事業では、需要は昨年度と同程度の500万㌧と予想している。和歌山工場で利益が見込める関西圏の物件は依然として少ない。しかし総じて受注単価は採算ベースに改善しており、関西圏の物件を確実に受注し、首都圏の物件では、難易度と採算性を重点的に検証して選別受注を図り60億円以上の受注を見込んでいる。今年度は中期経営計画の最終年度であり、また来年3月には創立85周年を迎えるのでそれに相応する業績達成を目指す。なお7月に国土交通省・関東地方整備局局長より同時に、「優良工事表彰」、「優秀工事技術者表彰」と「工事成績優秀企業認定」を授与された。これはあまり例がないことで非常に誇りに思うとともに、これを励みにより一層頑張っていきたい。
――設備投資計画は。
寳角 和歌山工場の設備の老朽化や効率低下が進んでいるため、機械・機器類の更新を中心に積極的に投資している。今年度は、3〜4億円程度の設備投資を行う予定だ。具体的には、橋梁工場で、箱桁用多関節溶接ロボットの新設、大型ラジアルボール盤の新設、溶接部疲労向上と防錆向上機器類の設置など。鉄構工場で、最新超大型4面ボックス用角溶接装置とビルトH断面ひずみ矯正装置を注文済みだ。そのほか、多層盛溶接ロボット、特殊開先加工機、CFT構造物の専用エレクトロスラグ溶接装置の導入を計画している。
――新製品、新技術は。
寳角 新製品については、需要が増加している免震・制震技術に関する製品(東日本高速道路と大阪市立大との共同開発による鋼ポータルラーメン橋)と制震デバイス(制震ストッパー、制震ダンパー、座屈拘束ブレース、支承可動化工法、ノックオフボルト)などだ。新技術では、合成床版の断熱温度場法による非破壊検査法。溶接の品質向上に寄与するフェイズドアレイ適用方法。Uリブのガス加熱変形解析手法。多層溶接の変形数値解析手法など。こうした新製品や新技術はもちろんだが、独立独歩で歩む限り、新分野への進出が必要であり、そのための情報収集は積極的に進める。
――課題と対策・戦略は。
寳角 橋梁事業では、WTO物件受注拡大のため、全社員が危機意識を持つことに加え、応札対応部署の人的経営資源の強化、選別すべき受注対象の絞込みを行っている。また、契約金額における比率が増大しつつある現場架設のさらなる原価低減も考える必要がある。一方、鉄構事業は、当面、受注前の精度の良い原価積算と生産管理能力のスキルアップと素早い実行が必要である。そして保有する大型ヤードを活かした海上輸送物件や独自の技術を有する耐震・免震・制震製品および体育館・格納庫などの特殊構造物をターゲットにし、収益改善に取り組む。さらなる原価低減と品質確保を生産部門に求めることに加え、協力会社に対する管理能力などのスキルアップも重要だ。いかに効率的に利益確保ができるかが、経営の重大事項の一つと認識している。(聞き手=秋田正輝、文中敬称略)