2016年我が社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ⑥宮地エンジニアリング
i-Constructionの推進で安全施工と品質の確保を図る 女性活躍のさらなる推進
宮地エンジニアリング株式会社
代表取締役社長
青田 重利 氏
当NETの姉妹メディアである「週刊 鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業の一つと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を訪ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。14日は、東京鐵骨橋梁の坂本眞社長と宮地エンジニアリングの青田重利社長の記事を掲載する。
――前年度(15年度)の業績について伺います。
青田 グループ全体の受注高は473億8,000万円で前年度比約150億円の増加。目標の412億3,000万円を大幅に上回った。売上高は399億3,000万円で、目標の400億円には到達しなかったが、ほぼ目標通りとなった。営業利益、経常利益は、ともに進捗遅れの期ズレなどにより、前年度よりやや減少し、増収減益となった。
――今年度の業績目標は。
青田 今年度はグループ全体で受注高405億6,000万円、売り上げ378億3,000万円、営業利益、経常利益ともに10億円が目標。
今年度の目標は、前年度実績を下回った数字だが、これは直轄工事の発注量が前年度23万㌧だったのに対して、今年度は3万㌧減少の20万㌧前後と予測しているためである。例えばシェア率を7%とすると、2,000㌧減少となり、それだけで20億円の違いが出てくる。このあたりを見越して保守的な設定としている。このほか、自己資本比率37%以上、有利負債比率45%以下、ROE5%以上を目標としている。
「筑後川橋(国土交通省 九州地方整備局)」
――具体的には。
青田 高難度あるいは大規模な保全事業では、技術開発を伴った客先への積極的な技術提案が求められている。幅広い技術提案ができるようにPC業者と勉強会を実施している。当社では、保全関連の新商品として、FRP製の伸縮装置、F-Deck(伸縮装置部渡し板)、拡幅歩道など民・学との共同研究開発を進めている。70万橋といわれている既設橋梁の保全は、工事内容によって高・中・低難度に棲み分けられる。当社の役割・使命は高速道路会社の大規模更新・修繕やJRをはじめとした鉄道関連、国交省などの高難度工事にあると考えている。今後は異業種JVの重要性が高まってくることから、ゼネコン等との勉強会も積極的に対応していく。
当社は、ファブ主体の宮地鐵工所とエンジニア主体の宮地建設工業が合併したことで総合エンジニアリング会社としてお客様から高い評価を得ている。今後はさらにファブとエンジの一体施工による安全性と施工の優位性を提言する営業を推進し、鉄道各社などからの受注拡大を目指す。
さらには、東京スカイツリーなどで実証した架設力を東京五輪関連施設、熊本震災復興関連事業などの受注にも結び付けていく。
――事業環境は。
青田 昨今の業界の事業環境をみると、企業存続のためには、一定の事業規模と事業ポートフォリオの多角化、人材の確保・育成および技術開発力が必要であると痛感している。
当社グループとしては、エム・エムブリッジの株式を取得、連結子会社化したのに続き、宮地エンジニアリングはさらなるシナジー発現のために組織統合した。経営資源(人・物・金)を部門にとらわれず、全社最適で日々の業務執行を行うこととした。さらには、太陽光発電による売電事業など収益の多角化を推進している。
エム・エムブリッジとのアライアンスによる更なるシナジー創出のために今般6つの課題に取り組むWGを立ち上げた。グループの受注力強化を図るWG。現場コストの削減を目指す工事部門改善WG。従来から工事部門で行っていた人材の活用・交流を設計部門まで広げて固定費の変動費化を進める設計部門改善WG。グループとしてより精度の高い収支管理体制を構築する予算管理システムの改善WG。また、営業、現場、工場の担当者が三位一体となって個別工事の収支管理に取り組むことが重要であり、そのために「設計変更ガイドライン」の勉強会を実施している。そしてグループのスケールメリットを活かした安価調達を目指す調達部門改善WGである。
――人材の確保・育成については。
青田 i Constructionを担保するCIMやICTなどの活用により、安全施工と品質確保、生産性の向上を図るとともに、現場従事者の労働環境の改善に寄与するためのWGを設置し検討を始めた。
また、女性活躍推進法に基づく女性の活躍を積極的に推進していく。現在、女性管理職は2名おり、今年度は組織のライン職であるグループリーダーも誕生した。技術系女性社員の育成プログラムを作成して、活用推進を図っていくと同時に、昨年度は溶接工に女性を採用したが、今後とも女性技能員の採用については積極的に行う方針である。 また、若い人たちが入社しやすい環境をつくることが重要であり、松本工場跡地など社有地を有効活用して、社員寮を建設するなど、ハード面の整備についても検討していく。(聞き手・佐藤岳彦、文中敬称略)