2016年我が社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ③JFEエンジニアリング
国内老朽化更新需要に注力 緬・合弁会社をODAのマザー工場に
JFEエンジニアリング株式会社
常務執行役員
鋼構造本部長
川畑 篤敬 氏
当NETの姉妹メディアである「週刊 鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業の一つと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を訪ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。26日は、JFEエンジニアリングの川畑篤敬常務執行役員と瀧上工業の瀧上晶義社長の記事を掲載する。
――昨年度の業績についてお伺いします。
川畑 昨年度の鋼橋発注量が約23万5000㌧と、2年連続で25万㌧割れとなったが、受注高は700億円で、内訳は橋梁450億円、その他250億円。売上高は550億円で、橋梁400億円、その他150億円。国内は厳しかったが、ミャンマーを中心に海外が非常に好調で、受注が180億円と大きく貢献した。
「圏央道小貝川橋」
――需要と市況の現状は。
川畑 今年度の鋼橋市場は横ばいと見込む。ただ、全体的に、新設橋梁の発注は下がると予想され、保全改築案件への予算シフトの流れは社会的要請もあり、加速されるとみている。また、政府が計画している28兆円規模の経済対策、補正予算に期待している。
――今期の状況は。
川畑 今年度の目標は受注高では700億円以上で、内訳は橋梁450億円、その他250億円。売上高は650億円で、橋梁400億円、その他250億円。なかでも、大型クルーズ旅客船の埠頭や東京港南北道路トンネル整備など、オリンピックへ向けた東京湾臨海部の整備事業が本格化。既設桟橋や岸壁などの耐震補強やリニューアル需要が拡大すると見込んでいる。
また、社会的要請の高い都市内の高速道路の改築事業では、物流を妨げないよう極めて短工期で行うことが重要で、高度なエンジニアリング力が求められている。このような厳しい条件に迅速に対応するため、昨年度に改築プロジェクト部を新設。設計から現地工事までを一貫して施工・管理する体制を整えた。また、これまでの豊富な実績に加え、革新的な提案や老朽化更新需要に特化した技術開発も進め、今後ますますの受注拡大をめざす。
上期では、四日市港霞ヶ浦北ふ頭地区道路(霞4号幹線)橋梁(P3〜P9)上部工事、富士吉田北スマートインターチェンジランプ橋(鋼上部工)工事、長崎497号松浦1号橋上部工工事などを受注。まずまずの滑り出しといえる。
――海外については。
川畑 昨年度はティラワ桟橋、バングラディッシュ橋梁とODA2件を受注。インド、スリランカなどの南アジア地域を中心に、今後も出件が続くと想定している。年間100億円規模の出件を期待している。
ミャンマーについては、政権が交代し、事業の執行が不安視されていたが、引き継ぎなどにより、多少の混乱が生じた程度で今のところ影響は軽微だ。昨年度に引き続き、ODA案件以外ではミャンマー建設省からの発注が中心になると想定している。さらに鉄道省などの他の発注者からの受注を増やしていきたいと考えている。また、海洋構造物・鉄骨等橋梁以外の鋼構造物へも積極的に取り組んでいく。
5月にJ&Mスチールソリューションズの拡張工事が完了、年産2万トン体制が整った。
これにより、日本仕様の防食仕様を施せるブラスト設備や塗装設備を導入するなど、各製作工程に最新鋭の設備を増設し、ODA案件などで求められる高耐久性仕様の鋼構造物の製作が可能になった。同社を活用し、ミャンマー国内市場の工事を取り込むとともに、ODA案件のマザー工場として、インフラ整備が進む環インド洋地域向けに高品質な鋼構造物を供給し、海外の鋼構造事業の受注拡大をめざす。
海外戦略のポイントは品質。安全管理や施工時での周辺への影響管理やマネジメントも重要だが、最終的には、高品質な鋼構造物を提供することに尽きる。
また、ミャンマー国内初となる鉄道橋での送り出し架設が成功した。現地のエンジニアを入れて作業を実施しており、ミャンマーの技術水準の向上もめざす。
(聞き手・佐藤岳彦 文中敬称略)