フライアッシュ、エポキシ樹脂被覆など手厚い塩害対策
NEXCO西日本四国支社 吉野川大橋に着手
西日本高速道路
四国支社 建設事業部長
(取材当時、5月30日に本社技術本部安全管理担当部長)
松室 圭介 氏
西日本高速道路四国支社は、高松自動車道及び高松東道路の4車線化事業、四国横断道の徳島東IC~徳島JCTの建設事業などを進めている。高松道は平成30年度の全線開通を目指している。また、四国横断道は、全国でも指折りの大きさを誇る四国三郎こと吉野川の河口に巨大なPCラーメン箱桁を構築する。それにはNEXCOで初めて高炉スラグではなくフライアッシュを塩害対策に活用する方針だ。詳細を松室圭介建設事業部長(5月30日に本社技術本部安全管理担当部長に異動)に聞いた。(井手迫瑞樹)
高松道および高松東道路を4車線化
四国横断道は吉野川大橋を含む区間を施工
――所管事業の概要と現状について
松室部長 当支社管内の主な建設事業としては、①高松自動車道および高松東道路(鳴門IC~高松市境)の4車線化事業、②四国横断自動車道(徳島東IC(仮称)~徳島JCT(仮称))の建設事業、③松山自動車道における中山スマートIC事業に取り組んでいます。
――まず、高松道の4車線化事業から詳しく教えてください
松室 同事業は平成30年度の全線開通を予定しています。平成25年度から着工しており、現在、土工・橋梁・トンネルといった構造物の工事着手率は100%に達し、最盛期を迎えようとしています。現状では事業延長51.8㌔中、約10㌔の4車線化を完了しています。構造物は土工が38.0㌔(73.4%)、橋梁が6.8㌔(13.1%)、トンネルが7.0㌔(13.5%)となっています。同事業内には37箇所に橋梁、8箇所にトンネルをそれぞれ配置しています。
現在、橋梁は下部工・上部工とも全面展開中で、切盛土も進捗しています。トンネルについては三木トンネル(784㍍)が昨冬に貫通しましたし、今夏には県境にある管内最長(約2㌔)大坂トンネルも貫通予定です。
施工中のトンネル坑口部
橋梁形式一覧
4車線化事業化することで、交通集中による渋滞が解消されるだけでなく、上下線分離構造になることから快適性や安全性が向上し、対面通行に比べて円滑な走行が可能になります。また、災害時でも最低1車線の車線確保が期待され、被災箇所への迅速な対応、物資輸送が可能になります。
和泉層群を含み、切土は注意して施工
近接する供用路線に配慮しながら工事
――同地の地盤条件や施工条件など注意しなければならない点を教えてください
松室 地盤については引田ICから東の区間は和泉層群(白亜紀末期の海成堆積物で形成、砂岩と泥岩の互層構造が特徴)となっており、流れ盤のようなところで切ってしまうと滑ってしまうので、切土には注意して施工する必要があります。また他の4車線化事業と共通する課題ですが、供用路線が近接していることから、目隠しネットや仮設防護柵を設けてお客様への配慮を行いながら工事を実施しています。工事の影響が最小限となるように、関係機関や地元住民の皆様にご協力いただきながら、迂回路や工事用道路を指定しています。また、香川県内におきましては、14,000ものため池が存在し、農耕用の水資源として活用されているため、排水処理などを協議しながら事業を進めています。
また、4車線化事業は、基本的に下部工から立ち上げていきますが、高松東道路など、一部で20年前に建設した1期線の下部工の上に桁を架ける箇所もあります。以前の設計ではホロースラブを想定していましたが、現在NEXCOでは同形式の橋梁は架けていないため、別形式の橋梁に変更しています。そのため、既設下部工に耐震補強を行って現行の耐震性能を確保した上で架設する必要があります。高松道は比較的低い山地部と平野部を通るため、橋脚のピア高はそんなに高くありません。基礎も直接基礎と杭基礎が半々で、杭基礎もそんなに長くありません。
吹田高架橋 全外ケーブルが基本
JR高徳線上はKDトラスを支保工に採用
――4車線化事業の代表的な構造物について言及してください
松室 橋長の長い順から3橋紹介します。まず吹田(ふきた)高架橋は橋長415㍍のPRC10 径間連続ラーメン箱桁橋です。全外ケーブルを基本とした構造で一部内ケーブルを併用しています。民家に隣接しており狭小なヤードの中での施工となるほか、JR高徳線上を跨いでいるため、線路上の桁は特殊支保工(KDトラス)を用いて架設しています。現在は下部工が完成しており、上部工はJR高徳線上および前後スパン部を施工中です。
吹田高架橋のA1橋台
JR跨線部全景(トラス製の仮橋「KDトラス」で支保工を作っていることが分かる
桁上から未架設の径間を望む(吹田高架橋)/PC桁への生コン打設
宮池橋にはSCB工法を採用
2番目に長いのが宮池橋です。橋長364㍍のポステン方式PC11径間連結ホロースラブで、架設桁架設により施工します。SCB工法(プレキャスト横桁を有する連結構造)を採用し免震構造としています。同工法は通常プレテンで施工しますが、今回ポステン方式ヤード製作桁での採用を初めて行っています。これは(施工ヤードを確保するための)溜池の水を抜ける期間の制約があるためで、本線ヤードで製作したポステン桁および工場製作した横桁を架設桁により架設します。下部工の施工は溜池の水を抜き短期間で施工しています。現在は下部工を施工中で上部工は詳細設計中です。
下部工施工中の宮池橋
津田川橋 SCデッキを採用
合成床版の底鋼板には溶射を施工する予定
3番目に長いのが、津田川橋です。橋長304㍍の鋼5径間連続細幅箱桁橋で、トラッククレーンベント工法により架設します。ただしJR高徳線上はJRに委託して送り出し架設を行う予定です。
同橋はⅠ期線施工時に下部工が完成しており、Ⅰ期線の上部工は単純版桁2連と3径間連続箱桁1連の3連橋梁でした。これを2期線では5径間連続の細幅箱桁としました。それに伴い下部工を補強しています。また、JR高徳線上では施工時間の短縮を目的として合成床版(SCデッキ)を採用しています。防食でもJR高徳線上の主桁と合成床版の底鋼板には金属溶射(アルミ・マグネシウム溶射)を施工する予定です。
施工に際しては、津田川上は河川内仮桟橋、主要地方道三木津田線跨道部は一時通行止めにより架設する予定です。
現在は下部工の耐震補強および沓座の改良工を施工中で、上部工は工場製作および仮設準備工を実施中です。
津田川橋