浜松市は首都圏と関西圏のちょうど中間に位置する人口約80万人の政令指定都市だ。南は海に面し、北は深い山間地を有し、天竜川、浜名湖といった自然にも恵まれ、なおかつ製造業なども盛んな都市である。市域は高山市に次いで2番目の1,558平方㌔を有し、約8,500㌔の道路管理延長は北海道の管理する延長に匹敵する。今後は人口減少、高齢化率の向上も予想される中、どのように道路の整備、維持管理を図っていくか、同市の黒田聡也土木部次長兼道路課長に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)
人口減少、高齢化率上昇に備える
改良率の低さがネックに
――浜松市の地勢的特徴から、旧遠江国の過半を占める面積が目を引きますが
黒田土木部次長兼道路課長 浜松市は、首都圏と関西圏のちょうど中間に位置します。人口は約80万人(798,112人、平成28年2月1日推計人口による)で市域は南北が73㌔、東西が52㌔、面積は1,558平方㌔に達します(伊豆半島とほぼ同等)。この面積は岐阜県高山市に次いで2番目です。7区(中、東、西、南、北、浜北、天竜)に分かれています。人口は平成17年がピークで、平成57年には凡そ66万人程度まで減少するであろうという予測を立てています。しかも平成17年度は20%だった高齢化率が、22年には23%にまで上昇しています。そして57年には38%までに達します。そうした状況を考慮しながら道路整備を進めなくてはなりません。
市域を見渡せば海・川・湖・山などの豊かな自然環境に恵まれ、沿岸部や都市部、中山間地域の多様性を有する「国土縮図型」の政令指定都市といえます。
地域の多様性は、本市の強みとして、特色のある産業や伝統文化などを育んできた一方、広大な市域の中には、政令指定都市で最も長い道路延長や、多くの公共施設が存在します。これらの維持更新のためには莫大な費用を必要とするなど、新たな課題を抱えている現状にあります。
――道路網の現状は
黒田 東西につきましては、東名、新東名、国道1号という軸があります。また南北につきましては国道152号市域を貫いています。現在は、その西側に国道474号三遠南信自動車道の整備が国により進められています。
平成17年7月の合併、平成19年4月の政令市移行により、国道6路線(240㌔弱)、県道67路線(680㌔弱)、市道約7,540㌔を含めた約8,500㌔の道路管理(北海道の管理延長に匹敵する)を行っています。これは全政令市の中でトップの延長です(平成26年4月1日現在)。国道の改良率は86.4%と政令市の平均より3%程度低い数値となっています。同様に県道は73.2%(同4.5%程度低い)、市道は59.5%(同7.1%程度低い)という値になっています。
それを受けまして課題としては、①急速に老朽化が進む道路構造物等の戦略的な維持管理、②震災対策、事前防災、減災対策による災害に強い広域ネットワークの構築、③通学路の緊急合同点検に基づく安全・安心な歩行空間の確保、④広域な市域における各地域間の連携を強化するための幹線道路整備促進、⑤物流・人流機能の向上を図るため、SICや新東名高速道路・三遠南信自動車道へのアクセス道路の整備促進、⑥平成26年の人口10万人当たり交通事故件数・死者数・負傷者数が政令指定都市ワースト1であること(などが挙げられ、さまざまな対策でその解消を図っています。
特に⑥については路線延長が長いにもかかわらず改良率が低いため、一部の路線に交通が集中してしまうことが原因ではないかと考えています。
翁川に沿った三遠南信の現道拡幅整備事業
市道52号は2橋を建設中
――進捗中の各事業路線の目的と概要、現況をお答えください
黒田 まず国道152号天竜区水窪町池島~天竜区水窪町大原区間5.1㌔について、現道拡幅を主とした整備事業があります。同区間は完成後、静岡県浜松市と長野県飯田市を結ぶ高規格幹線道路である三遠南信自動車道の現道活用区間(同区間の南北工区は国が直轄整備)として供用されます。車線数は2車線(幅員7.5㍍)、事業期間は平成26年度~30年代中期を予定しています。全体事業費は約100億円で、現在は、概略設計を進めており、来年度から用地買収に入ります。事業進捗率は1%程度(H27年度末)となっています。
翁川(天竜川支流)に沿った道路であるため、同川を渡河する構造物として橋梁を10橋余り計画しています。100㍍以上の長大橋は計画していません。概ね10㍍程度から最大でも80㍍程度になろうかと考えています。
――ここまで資材を持っていくのは大変そうですね
黒田 そうですね。生コンプラント、アスファルトプラントなどの設備も不足していますので、厳しい状況であると言えます。
――国道152号浜北~天竜バイパスは
黒田 一般国道152号の浜松市天竜区山東から同市浜北区新原間は、天竜区二俣町と浜松市中心部を結ぶバス路線となっていますが、天竜川渡河部を中心に渋滞が発生し、路線バス等の円滑な走行に支障をきたしている状況です。そのため浜北~天竜バイパスにより通過交通を分散し、現道の渋滞緩和を図ることで、路線バスの定時制を確保します。
全体延長は浜北区新原~天竜区船明約7.9㌔で、現在事業を進めている工区の延長は天竜川北岸部の370㍍ほどです。4車線(幅員22㍍(暫定2車線))で整備しており、事業期間は平成3年度~平成30年代中期を予定しています。今年度は橋梁工事を行っており上部工は完了しています。今後は現在整備中の工区の北側延伸を施工していく予定です(天竜川渡河部以南は完了)。残区間の構造物は二俣川渡河部に1橋予定しています。全体の事業進捗率は83%(H27年度末)です。
――市道小池52号線小池町工区事業は
黒田 市道小池52号線は、上島駅周辺土地区画整理事業箇所と市道小池三島線を結ぶ市街地北部の東西交通の要となる道路です。
本路線に隣接して大規模商業施設が立地しており、周辺では慢性的な交通渋滞が発生しています。また、通勤時間帯には、特に交通が集中することから、市民生活への影響が生じています。
本路線隣接区間は、街路事業、土地区画整理事業により整備を進めており、バイパスとなる本区間を整備することにより周辺地域の慢性的な渋滞を解消し、交通の円滑化を図ります。全体延長は遠州鉄道の東側の680㍍(東区小池町~中区上島四丁目)、車線数は4車線(幅員22~25㍍)で平成29年度までの供用を予定しています。今年度は馬込川と狢川を渡河する部分2橋の橋梁上部工を施工しています。事業進捗率は88%(H27年度末)です。
小池狢川大橋(狢川渡河部)
上島東橋(馬込川渡河部)
――ほかSICの設置など
黒田 三方原と舘山寺にSICの設置を計画しています。これにつきましては、本体はNEXCO施工ですが、アプローチ道路を市が担当する予定です。現在は用地買収中で、市は今年度から工事着手しており、NEXCO分についても28年度の工事着手を目指しています。平面タッチのため構造物はありません。
また、車道ではありませんがJR東海道本線天竜川駅の橋上化に伴い、南北自由道路を計画しています。規模は全長70㍍、幅4㍍程度です。
阿蔵高架橋は上部工を施工中
原田橋は詳細設計中
――2015、16年度建設中の事業及び、計画、設計中の構造物は
黒田 今年度は国道152号浜北~天竜バイパスの阿蔵高架橋(天竜浜名湖鉄道(旧国鉄二俣線、風光明媚な鉄道として著名)を跨ぐ部分、橋長213.5㍍、幅員10.5㍍(暫定2車線で建設中)、鋼3+5径間連続非合成鈑桁橋、耐候性鋼材を採用)と市道小池52号線で中小規模のPC橋を2橋建設中で上部工の架設を完了しており橋面工を施工中です。
主な新設橋
他、3橋ほどいずれも10㍍程度の小規模な橋梁で架け替えを行っています。
計画中の橋としては、昨年1月末に右岸の斜面崩壊に伴って落橋した国道473号の原田橋について新たな架け替え整備のため、詳細設計を進めています。
トンネルについては建設中、計画中ともにありません。