現在、道路行政を取り巻く状況は大きな岐路を迎えている。人口減少、道路インフラの老朽化、災害発生時の危機管理対策など対応しなければいけない課題は多くある。そうした中、今夏新しく道路局長に就任した深澤淳志局長がどのような方針をもって、課題に対処しようとしているのか、メンテナンス、安全・安心などに重点をおいて、詳細に聞いた。(井手迫瑞樹)
――局長就任に当たっての抱負からお願いします。
深澤局長 まず言えることは、時代にあった道作りが今後ますます必要になってくるということです。道路は主役ではなくあくまでも手段であり、芝居に例えれば舞台に他なりません。舞台に立つ俳優が楽しく演じ続けられるように時代に合わせて装置を換えること――誰のために何のために――を追求することが今後の道路事業に課せられた使命といえます。
――今の時代にあった道路作りとは。
深澤 5項目あります。①人口減少社会の中でも活力を与えることに資する道路整備②成長を支える道路整備③道路を賢く使うための施策④既設道路のメンテナンス対策⑤安全・安心の国土を守るための道路整備です。⑤に関しては2つのフェイズがあります。1つは安全・安心を実現するためにきちんとした道路整備および維持管理を施していくこと、もう1つは災害発生時の危機管理対応を事前に計画し、発災時に的確に対応することです。
――①、②について具体的には。
深澤 今後の日本の発展を考えれば、重要港湾や空港と生産拠点などを結ぶ物流の確保・道路の能力の拡充は大いに必要になってくるものと考えます。例えば、首都圏の三環状は平成27年度には計画の8割が完成し、東名高速と成田空港までを環状道路によって結ぶことが実現されます。また首都高速道路中央環状線は今年度末、外環道の千葉側も平成29年度には完成する予定であり、羽田空港と成田空港の利活用もこれまで以上に重要になってくることと考えます。都市は日本全体を牽引するエンジンでありますから、そのエンジンの性能をフルに発揮するための道路整備は今後も必要です。
地方では安全・安心に住むことができる災害に強い道路整備などが必要であろうと思います。
補助金制度の創設も視野
必要な所にピンポイント
――③のメンテナンス対策について聞きますが、道路の維持管理予算をどのように確保していきますか。
深澤 維持修繕は言うまでもなく必須の分野です。橋梁でいうと全国で約70万橋のうち50万橋は地方公共団体が所管しています。この50万橋の維持管理が今後の一番大きな課題です。地方公共団体においては、道路インフラ(橋梁だけでなくトンネルなども含めた)において5年に1回の点検が義務付けられました。地方公共団体はその点検・分析結果に基づき、長寿命修繕計画を策定、修正し、時期(タイミング)、部位・規模、工法の選定について効率的に進めるべく最適化を模索しています。
こうした計画のもと要求された予算に対し、防災・安全交付金を活用した支援などを行っておりますが、現状では全体の要望の約8割ぐらいが満たせている状況です。ただ、交付金は一律的な意味合いが強く、本当は必要なところにピンポイントにお金がつくような補助金が制度化すれば効率的な維持管理がより適切に実現できると考えており、現在その検討を行っています。
補助金の創設で効率的に維持管理を(写真はイメージです)