道路構造物ジャーナルNET

防錆対策、床組耐疲労、床組連続化を検討

関門橋の長寿命化シナリオを整備

九州大学
教授

日野 伸一

公開日:2014.11.01

 西日本高速道路㈱九州支社は、関門橋の維持管理を適正かつ効率的に行うため、関門橋の維持管理に関する検討委員会を開催し、損傷の定量化評価と今後の長寿命化シナリオの整備を行っている。その議論の経過と現状について、委員長を務める日野伸一九州大学教授に聞いた。(井手迫瑞樹)

 狭隘部は4種ケレンを念頭
 一般部は塗膜剥離材+重曹ブラスト

 ――関門橋の維持管理マニュアル作成に当たっては3つのワーキンググループに分かれて作業を進めていたということですが具体的には。
 日野教授 平成23年度から、防錆対策、床組耐疲労、床組連続化の3つのWGに分かれて作業を進めていました。
 ――防錆対策検討ワーキングから具体的に。
 日野 WG長は日本鉄鋼協会の隠岐保博氏が務めています。関門橋の今後の防錆仕様を定めるWGで一般部と特殊部(接合部)にわけそれぞれ仕様を決めました。
 関門橋の特徴としては、供用後の塗替塗装として塗り重ねしており、過膜厚(最大1,000μm程度)によるひび割れが発生しており、塗り替えの際にはそれを剥ぎ取る必要があります。また、関門橋は当時としても珍しく、下地に亜鉛溶射を使っています。現在も有効に機能しており、母材まで腐食が生じていません。亜鉛溶射層自体も健在であり、塗り替えの際、それを剥ぎ取らないようにする必要があります。各種試験を行った結果、最終的には塗膜剥離材+重曹ブラストによる塗膜除去仕様を決めました。また、支承の鋼材部は一般塗装部と同様に亜鉛溶射+重防食塗装により防食しています。


                    過膜厚の例(左)、関門橋(右)

 特殊部のうち狭隘部等の特にケレンが難しい個所は、4種ケレンによる施工を念頭に色々な塗料を試しています。ひとつ有力になっているのは自己修復型の塗料です。橋梁などへの実績はまだないのですが、プラント(溶鉱炉)などで実績を有する材料があり、促進試験の結果良好な結果が出ています。性能規定については①一種ケレンは狭隘なボルト部には難しくそうしたものに対応するため、本四(本州四国連絡橋)の塗装系ならびにNEXCOのg塗装系を参考に、錆鋼板を使った各種試験方法、判定基準を定めています。

 送気システムを検討
 主ケーブルの防錆対策

 ひとつ残っているのは主ケーブルの防錆対策です。具体的には本四の吊橋と同じように送気システムを入れるか否かを決めます。既に60㍍程度の区間で試験および計測しておりますが、データは理論値通りに出ており、防錆効果の感触はつかめています。ただし、ケーブルバンドの部分から空気漏れも散見されており、気密化を図る必要があります。送気時の適正な気圧、防錆性能の限界についても検討を要します。また、新たなものとしては気化防錆材が使用できないか検討しています。
 なお、ラッピングなどの大幅な取替は、現状の腐食の進行がそれほど進んでいないこともあり必要ありません。除湿すれば健全性は保てると考えます。

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