中日本高速道路は、昨年度から安全性向上3ヵ年計画に基づき3カ年で2,450億円を投資する。加えて、計画終了後は急速に進む高齢化した構造物の耐久性向上を目的とした大規模更新・大規模修繕が待ち構えている。そうした事業をこなすため、組織・個人ともに技術力の更なる向上が必須で、組織改革とともにNEXTスペシャリストコース制度の新設などスペシャリストの育成にも力を入れる。保全分野を中心に猪熊康夫取締役常務執行役員保全企画本部長に聞いた。(井手迫瑞樹)
支社へ大幅に権限移譲
本社は基本方針および企画類の策定など
――まず、笹子トンネル事故後の安全性向上への取り組みについて
猪熊常務 現場の課題を迅速、的確に解決すべく指示命令系統、権限責任の明確化を行うため、従来の建設事業本部と保全サービス事業本部の機能のうち、個々の事業年度計画の立案や執行は支社に権限を委譲しました。本社は経営上の基本方針や計画・規定類の策定、サービスレベルの地域差を生じさせないための審査・調整、支社支援、対外調整などを行う、と定めました。その上で建設事業本部と環境・技術部を統合して技術・建設本部に改組するとともに、保全サービス事業本部は保全企画本部と名称を変更しました。当初より検討を行った結果、現在の案にまとまりました。技術・建設本部と保全企画本部間は部門間の合同会議を設け、コミュニケーションを強化しています。
――報告書で指摘された点検~維持管理における業務のマネジメント能力の向上について
猪熊 改善すべき最重要項目の一つに位置づけ、その技術力を向上させるために、旧組織を改め技術・建設本部内に技術三部と総称される環境・技術企画部、技術管理部、構造技術・支援部を改組、新設しました。環境・技術企画部は点検の高度化に向けた技術開発や人材育成、技術管理部は維持管理の実態に見合った基準等の策定、構造技術・支援部は専門的知見で技術支援を行うとともに組織全体のPDCAサイクルを回すマネジメント能力の強化を担います。
人員体制も強化しています。中日本高速道路は保全・サービスセンターが全部で24箇所ありますが、現場強化のため、昨年から保全担当要員を130人増員(従来の3割増)してきました。彼らには現地でただ点検するだけでなく、一定の判断も担ってもらいます。
また、組織体制の書き方も替えています。社長、各事業本部、支社という関係ではなく、社長と実際の事業を担う支社を直結し、本社機能である技術・建設本部と保全企画本部は支社の執行を支援しつつ外部との折衝を担うスタッフという性格を現せるよう横串を指すような形に変えています。
さて、この組織改変の最大の狙いは、「現場で状況を判断して点検・維持管理していくPDCAサイクルを回していく力を付けさせていくこと」です。現場で見るべき箇所、補修補強すべき部位、手順を判断し、それを支社に持ち込んで本社に予算・技術面でのチェックを仰ぐが、あくまで現場がイニシアティブを発揮することを期待しています。極端なことを言えば、今までは上意下達になれすぎていた。現場から自主的に動いていき、こうした悪しき慣習を直したいということが念頭にあります。