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現場を巡る詳細

供用15年で伸縮装置が破断 交換と共に桁端部を塩害対策

NEXCO東日本深川大橋 箱桁端部全高3500㍉をWJではつり断面修復

 東日本高速道路北海道支社は、深川・留萌自動車道の深川大橋における桁端部の補修を進めている。同橋は平成10年4月に供用された連続PC橋。供用15年を過ぎた平成25年度に、伸縮装置(機械式伸縮継手)の部材が破断する損傷が生じたため、該当部を鋼製フィンガージョイントに交換している。今回は、同様の伸縮装置を撤去し、鋼製フィンガージョイントに取り替えるとともに、伸縮装置の止水機能低下に伴う漏水により損傷している桁端部の補修を行うものである。特にP8については遊間幅の狭い中で、A1側の桁高(3,500㍉)全ての断面を80㍉はつり、塩分吸着剤混入型ポリマーセメントモルタルで断面修復する。(井手迫瑞樹)


深川大橋


A1~P11の床版防水は未設置 

 深川大橋の橋梁形式および設計上の遊間は、(A橋)A1~P4が4径間連続PCI桁橋(遊間100㍉)、(B橋)P4~P6が2径間連続PCI桁橋(遊間150㍉)、(C橋)P6~P8が2径間連続PC箱桁橋(遊間200㍉)、(D橋)P8~P11が3径間連続PC箱桁橋(遊間275㍉)、(E橋)P11~P13が2径間連続PC箱桁橋(遊間150㍉)、(F橋)P13~A2が単純PCT桁橋となっている。現場は10月~4月にかけて凍結防止剤の散布を行っている。

 勾配はA1→A2にかけて(留萌方面に向かって)2.90→0.34→1.12%の下り勾配、片勾配2.00%(同方面に向かって右肩下がり)という構造になっている。

 なお、床版防水はA1~P11については供用開始以来敷設していない。P11~A2のみ平成25年度の舗装改良時にグレードⅠで設置している。


中央線部のカッター排水溝が結果的に塩害を助長

 P8部で塩化物イオン量7.7㌔/立方㍍を確認

 損傷原因

 損傷原因はジョイントの損傷、止水性能の喪失に加え、積雪寒冷地における暫定2車線特有の排水構造がある。


P8桁端部の損傷状況


P11桁端部の損傷状況

 「中央線部のカッター排水溝」(東日本高速道路)がそれだ。冬季には路面の両脇に雪が積もるため排水が機能しづらい。また、中央線部にも雪が積もり、融雪水が路面に流れ出る。そのため中央線部にカッター排水溝を設けて路面に流れ出る水を補助的に集水し排水していた。しかしこれが凍結防止剤を含んだ水を伸縮装置部の桁中央付近に集めてしまい、結果的に損傷を拡大したものと思われる。特にP8(箱桁部)については事前調査により桁端において、塩化物イオン量7.7㌔/立方㍍が確認された。なおP11のジョイント部については、平成25年度の伸縮装置緊急取替時には桁端部の補修が未施工であり、今年度はから来年度前半にかけて残りの個所の桁端部の塩害対策・断面修復およびジョイントの交換を行っていく。


桁端部の塩害を結果的に助長した中央線部のカッター排水溝。同部分そのものの劣化も目立つ


地覆部の損傷/過年度に舗装打ち替えした個所ではカッター排水溝を無くしている


例が無い桁高をWJではつる

 ジェットマスターXYZ-3000を採用

 施工

 補修は当該区間を5日間連続で通行止にした上で施工する。5日のうち3日程度は伸縮装置の取替に充てられ、桁端部の補修に充てることのできる時間は2日程度だ。桁端部のはつりは、事前に塩分量調査を行った上で範囲を決めて、遊間部の狭さ、はつり後の断面修復工の品質を考慮してWJ機械により施工している。


P8は桁断面全高(3,500㍉)×全幅(6,700㍉)を80㍉深さ(かぶり厚+鉄筋裏10㍉)をはつる


 損傷点検および測定の結果、P8を除く桁端部は、塩害が桁断面のうち上面部分に集中しており、はつり面積はそれほど多くない。しかしP8は前述のような塩化物イオン量が桁端部全面に渡って存在したことから桁断面全高(3,500㍉)×全幅(6,700㍉)を80㍉深さ(かぶり厚+鉄筋裏10㍉)はつることにした。「これほどの桁高をWJではつるのは例がない」(ショーボンド建設)。現場では12時からはつり工事を開始し、途中(はつり不要箇所を防護する)鉄板が外れるなどのアクシデントもあったが、昼夜兼行で作業し、予定の24時間以内にはつりを終えることができた。

 WJ機械は、こうした桁端部のはつりで多くの実績を有している「ジェットマスターXYZ-3000」を採用した。同機は鉛直面に設置でき、水平(橋軸直角)方向に移動を行いながら作業を進めるため、時間の短縮やはつり面の平坦性の確保が可能なWJ装置(吐出水量毎分80l、吐出圧力200~220MPa)により施工している。桁高がWJによる桁端断面の鉛直はつり工としては前例のない高さであったことから、確認しながら慎重にはつっていた。吐出ノズルはコンクリート削孔に用いるノズルを使っており、ノズルヘッドに2つのノズルを装着、はつり過ぎを防ぐためのアタック角をあらかじめ設定することができる(PC桁を施工する場合、定着部を傷めないようにしつつ、確実に脆弱部をはつれる)。

 幅方向に最大5㍍、高さ方向に20~100㍉ピッチでWJのノズルヘッドを動かすことができ、細やかな施工が可能。リモコンによる遠隔操作のため施工時の安全性も高い。桁上からコンクリート劣化部をはつりつつ施工できるため、今回のような遊間幅がほとんどない(P8の遊間幅は200㍉)状態でも鉛直はつりの施工は可能だ。周辺環境に配慮し、生じた排水は全てバキューム車で回収する設備も有している。


WJによるはつり工/かぶり厚+鉄筋裏10㍉まではつっていった


バルーンにより型枠材を保持

 塩分吸着剤を配合した断面修復材を用いる

 WJによるはつりが完了した後は断面修復材打設用の型枠を設置した。これまで未経験の狭小部での大きな型枠組み立て作業のため、何度も設置し直すなど施工に苦労しており、7時間を費やした。型枠工は、現場の桁高、遊間幅を考えると自立困難なため、バルーンによる型枠材保持の工夫を行った(写真)。型枠設置後は、塩分吸着剤を配合した断面修復材(アーマー#720PS、塩分吸着剤量5%品、亜硝酸リチウム混入ポリマーセメントモルタル)を4時間かけて打設、4時間程度養生した上で3時間かけて脱型した。


桁高、遊間幅を考えると自立困難なため、バルーンによる型枠材保持の工夫を行い

塩分吸着剤を配合した断面修復材(アーマー#720PS)を打設


型枠自体も巨大なものを使っている

 その後、鋼製フィンガージョイントを据え付け、後打ちコンクリートを打設した上で、通行止めを解除した。来年度には、床版全面の点検及び劣化部の補修、床版防水の敷設、舗装の打ち換えを行う予定だ。設計はネクスコ・エンジニアリング北海道。施工はショーボンド建設。はつり工一次下請は第一カッター興業、二次下請(WJ)は久野製作所

取材協力:ウォータージェット削孔研究会