道路構造物ジャーナルNET

NEXCO西日本 片側通行規制下での工事を想定

道谷第二橋 半断面床版取替工法を試験的に初採用

公開日:2016.09.16

「現場」を想定して試験施工
 新しい門型形状の架設機械を導入

 今回の床版取替は半断面床版取替工法を採用するが、初採用ということを鑑みて、あくまで上り線を全面通行止めした形で仮想的に簡易な防護柵を配置し、同工法の施工性、安全性などについて確認するいわば試験施工である。①片車線幅の半断面架設を想定、②壁高欄プレキャスト化による架設時の検討および吊治具の確認、③1日当たりの架設枚数の検証と評価、作業時間の設定などを調査、④仮固定および仮受けに必要な内部支保工の検討、接合目地の(二次施工)の架設手順と精度確認、⑤実際を想定した仮設防護柵の解析的検討、⑥橋面工(伸縮装置)の半断面施工の検討(但し、橋面防水工および舗装施工は全断面施工)の6点について照査している。
 桁下には市道(山口市道安養地上角線)があるがクリアランスは約25㍍ある。桁下に足場を設置しているがこれは全て橋梁点検車を利用して構築した。下段と中段に分かれており、両足場とも全面板張り防護の上、下段足場はコンクリート殻が下に落ちないようにネット養生も設置している。また、床版切断はコア削孔機とコンクリートカッターを使用した。


既設床版の切断と撤去

 この施工において斬新な点の一つは、施工車線内のみで組立および運用可能な架設(撤去)装置の採用である。同装置は、橋軸方向10㍍、直角方向4㍍まで対応可能な門型形状の架設装置。同装置はトレーラーで運ぶことができ、荷降ろし後は4本の足が油圧で自動勾配調整できるようになっている。


門型形状の架設装置はトレーラーで運ぶことができる

 また、4本の足が同時に開かず、確実に安全性を保ちながら施工できるように、横つなぎ材を前後左右、クロスに設置している。「以前もお手製の機械を製作したことはあるが、今回のようにシステマチックな形で製作したのは初めて」(同社)。半断面床版取替工法の施工が予想される片側通行規制下の工事はクレーンを車線幅内に配置できない。その課題をクリアするために車線幅内に架設できる門型機械を構築したものだ。架設装置は、重量を考慮すると足を主桁上に載せて支持する必要がある。道谷第二橋の主桁(4主桁)同士の幅は2.8㍍だが、その幅では架設装置の脚間にトラックが入れないので、主桁の上フランジ外側に架かるような形で足を配置し、2.7㍍幅を確保した。トラックは2.5㍍なので片側10㌢ずつの余裕を作り運用することができた。


門型形状の架設装置/上フランジ外側に架かるような形で足を配置

1日3枚のパネル撤去・架設を実現
 パネルの旋回時に車線幅を飛び出さないように設計・施工

 施工は、既設床版(1枚当たり橋軸2×直角5.5㍍、約6㌧)を切断した後、門型架設装置を用いて切断した床版を吊上げ、門内に進入させたトラックの荷台に上に下ろして搬出する。既設床版を引き剥がした後のフランジ上面は多少劣化が進んでいるため、主桁上面をケレンして有機ジンクリッチペイントで防錆処理し、架設前に基準となる墨出しを行う。次いで新しい床版パネルを載せたトラックが門内に進入し、荷台から吊り上げて、慎重に測量しながら桁上に床版パネルを配置していた。床版パネルは、吊り装置で縦横断の勾配をある程度調整しながら、静かに所定の位置に落とし込む。トラックの荷台から吊っていくため当初はパネルの長手方向が橋軸直角方向になっており、パネルを旋回させながらはめ込んでいく必要がある。パネルは、この旋回時に車線幅外へはみ出さないように設計しているが、施工も気をつけながら行う。ある程度位置決めした後はレバーブロックで微調整しながらパネルを配置し、最終的には測量で確認する。こうした手順を繰り返すことにより1日3枚のパネル撤去・架設を実現している。


PCaPC床版パネルを積んだトラックがバックで現場に入ってくる/両側10㌢ずつの余裕がある

荷台上のパネルに吊金具を付けている/吊上げ開始



慎重に旋回移動させ、所定の個所へ誘導していく

側面にはPC鋼より線を挿入するための孔とガイドキーのメス部分が見える

位置合わせがほぼ完了した状況

 新しいPCaPC床版パネルの1枚当たり重量は、1次施工分で2×5㍍約7㌧、2次施工分で約8㌧。2次施工分の重量が増えているのは、床版ハンチや壁高欄形状の違いによるためである。
 架設装置は翌日の架設準備を行うため、前方に移動する。架設装置の自走はできない。手動で前方からチルホール、チルタンクを使って引っ張り移動させる。移動後はストッパーを用いて逸走を防いでいる。薄い勾配防止用の鋼板を用いて、縦横断に対する対応も行っていた。移動時の安全確保と架設装置の経済性を考えあえてシンプルな構造としている。
 パネルを全て架設した後、スタッドジベルを溶接し、間詰め部を打設、壁高欄を現場打ちで打設し(1期分の2径間は現場打ち)完了となる。

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