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日本大学で公開試験を実施

グリッドメタルをカルバート補強に適用へ

グリッドメタルは無補強時の1.65倍に耐荷力を向上

 曲げ破壊ではなくせん断破壊にすることでシリアスな事故を防止

 日本大学(阿部忠教授、師橋憲貴教授)は、橋梁床版や梁部の増厚補強の際のコスト縮減、工期短縮工法として展開されている「グリッドメタル工法」(JFEシビル)が、カルバートボックスの補強にも適用できるかについての公開試験を日本大学で行った。


既設カルバートボックスの損傷事例について説明する阿部教授

 既設カルバートボックスは、延長2㍍以上のものは橋梁と同様の管理が義務付けられている。一方で、現在までの管理状況は手厚いとはいえず、「塩害や凍害、中性化などの経年劣化により損傷している箇所が少なくない」(阿部教授)状況にある。また、高速道路のカルバートボックスは、「土被りがほとんどなく、大型車の軸重がダイレクトに作用しており、損傷を放置していると曲げ変形による決定的な路面変状を起こす可能性もある」(同)としている。そうした損傷に対し、下面からグリッドメタルとPCMによる補強を行うことで「耐荷力は無補強に比較して1.65倍(無補強の破壊荷重は464kN、補強は762kN)になり、A活荷重をB活荷重化できる。また、仮に母材部分が損傷しても、下面の補強層があることで決定的な曲げ破壊(路面陥没)に至らず、45°の線でハンチ部に至る押し抜きせん断破壊になることで、路面上のシリアスな事故を防ぐことができる」(同)ことを念頭においたもの。


荷重とたわみのグラフ


現場での配筋作業を省力化

 PCMの被り厚も10㍉程度薄くできる

 従来の増厚はコンクリート打設前に鉄筋を組む必要があるが、グリッドメタルは工場で製作・加工されているため、現場での配筋作業を省力化できる。また、表面には亜鉛めっきやエポキシ樹脂粉体塗装を施しているため防錆性能が高く、長期的な(凍結防止剤を含む)塩害にも強い。加えて(軸方向と直角方向に)鉄筋を重ねる必要がないため、PCMの被り厚も10㍉程度薄く(鉄筋相当径D10㍉の場合)できる。そのため、従来の増厚工法に比べて材工コストを1割程度縮減することが可能だ。


施工方法およびカルバート補強の施工実績(手順)


KSボンドでPCMと母材コンクリートを接着

 また、施工については「橋梁と異なりカルバートボックスは基本となる形状が規格化されている」(同)ため、事前に現場を計測した上で、格子筋を製作し現場で施工する。現場では、ウオータージェットなどで脆弱部をはつり落とし平滑化した後に、グリッドメタルを配置しエポキシ樹脂系接着工法(鹿島道路(株):KSボンド)による接着剤を塗布し、PCM吹き付け工法で補強し、表面を小手仕上げした(ケミカル工事(株))。グリッドメタルは天井部、横壁部、ハンチ部分に分けて用意し、継手部は300㍉程度の長さで既設構造物に対して約30㍉程度の厚さになるよう片曲げ加工して合わせるようにしている(写真)。その際も被りはあくまで10㍉取るように注意して施工する。


形状に合わせて曲げ加工


 グリッドメタルは鋼板に切れ目を入れて引き延ばして製作する展張型(A型)と鋼板を切り抜いて製作する(B型)に分かれる。B型は従来の格子状だが、A型はアコーディオン状の「Aに近い形状」(JFEシビル・塩田啓介技術部長)となっている。これは完成品の2~3分の1程度の鉄板にスリットを入れて引き延ばすことで網状の格子筋に成型するためで、生産時の材料ロスを少なくできる。工場の曲げ加工機により、最初から隅角を伴った格子筋も製作可能だ。

 こうしたことから現状最も短い工期で施工できるPCM工法の増厚補強と比較しても「2日程度短縮できる」(JFEシビル)としている。


事前想定通りの試験結果

 カルバートボックス補修・補強分野に積極展開図る

 今次試験では静的載荷試験機(5000kN)を使って、実物の3/5モデル(高さ1.80㍍×奥行2.08㍍×幅1.8㍍)を使って2点載荷、次いで1点載荷試験を行った。4㌧の軸重を考慮した2点載荷では損傷しなかったため、軸重10㌧を考慮した1点載荷試験を行った。1点載荷では464kN時点で供試体が破壊されたため、それと同じ供試体を使いグリッドメタルで所定の補強を行った結果762kN地点で破壊が生じた。また破壊で生じたひび割れは直下でなく、ハンチ部の方向へ向かっていること、破壊は母材で生じ、補強層および界面で生じていないことも確認でき、実験前に想定していた補強性能を有していることが確認できた。


実験状況/補強断面を模擬した箇所(青色の塗料はKSボンド、網状の素材がグリッドメタル)


破壊で生じたひび割れは直下でなく、ハンチ部の方向へ向かっていること、

破壊は母材で生じ、補強層および界面で生じていないことも確認できた

 この実験結果から、今後はカルバートボックスの補修補強を短工期・低コストで施工できる工法として積極的に展開していく方針だ。