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現場を巡る詳細

コンクリート部にはけい酸塩含浸材を塗布

浜松市 浜名湖大橋の鋼桁塗替えに塗膜剥離剤を使用

 浜松市は、浜名湖に架かる一般県道舘山寺弁天島線浜名湖大橋の補修工事を進めている。同橋は1972年に有料道路事業の一環として建設された橋梁で、03年に無料開放され、07年の同市の政令市移行によって静岡県から浜松市に移管された。橋長は836.6㍍。橋梁形式はポステン単純T桁×5連(A1~P5)、3径間連続鋼鈑桁(P5~P8)、ポステン単純T桁×17連(P8~A2)という構造。最大支間長は鋼桁部の60㍍、全幅は10.35㍍(有効幅員は9.5㍍)となっている。昨年度から本格的な補修に入っており、A1~P3間上部工の補修およびP5~P6間の塗装塗り替えを行っている。その現場を取材した。(井手迫瑞樹)

 

コンクリート表面の塩化物イオン濃度は最大0.87㌔㌘/平方㍍

 既設塗膜にはPCBや鉛を含む

 現場は風光明媚な浜名湖にある。JR弁天島駅から浜名湖ガーデンパークや舘山寺方面を結ぶ途上にある浜名湖をわたる長大橋で、夏場は村櫛の海水浴場などで賑わう。24時間交通量は16,718台となっている。塩害対策区分は海上扱いとなっているが、コンクリート表面の塩化物イオン濃度は最大でも0.87㌔㌘/立方㍍と発錆限界値に達していなかった。但し、うき・剥離や鉄筋露出が生じている箇所もあることから防錆およびPCMによる断面修復および含浸材塗付による補修を行う。また鋼桁部分については塗膜を採取して測定した結果、PCB及び鉛を含有していたことから、今回は塗膜剥離剤を用いた2種ケレンで塗り替えている。周辺の浜名湖では海産物の養殖が行われていることから、4月までは実工事ができない。そのため12月~3月までは点検や調査、設計照査を行い、3月から足場を設置し、4~9月に施工している。


バイオハクリX-WBを使用

 2種ケレンで下地形成

 鋼橋の塗膜塗替え

 今回の塗り替え面積は1,770平方㍍。鋼橋の塗り替えにあたって重要なのは既設塗膜成分の把握であり、そのためには塗替履歴を参照することが望ましい。しかし、直近(2001年)の塗替内容は把握できたものの、既設塗膜上に塗り重ねられており、供用時からの塗装および数次にわたる塗替塗装の内容については、情報がなく、把握できなかった。そうしたこともあり、所定の試験方法(JIS K 0102 54.3,JIS K 0102 65.2.1,平成4年厚生省告示第192号 別表第三(部材採取試験法))で既設塗膜を採取して成分試験を行った結果、PCBを1㌔㌘当たり0.17㍉㌘、鉛または同化合物を同20,000㍉㌘含有していることなどが分かった。このため、 ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法、厚生労働省から2014年5月30日に出された通知文「鉛等有害物を含有する塗料の剥離やかき落とし作業における労働者の健康障害防止について」に従い、剥離剤による塗膜除去を行った上で、2種ケレンにより下地を形成し、塗り替えている。

 既設塗膜の膜厚は一般部で700µm、添接部や隅角部などの特殊部では1,000µmに達する。また、塗膜層は(当初の塗装と合わせ)5層(つまり4回塗り重ねている)に達していることが分かり、塗膜剥離剤を採用する基本方針は変わらなかったが、事前に剥離性能およびコストを確認する必要があった。そのため、4種類の塗膜剥離剤を現場で試験した結果、今次の塗膜剥離にはバイオハクリX-WBを2回塗り(1回目0.5㌔㌘/平方㍍、2回目同0.8㌔㌘)で採用している。ただし特殊部については1,000µm以上の厚膜も予想されるため、場合によっては3回目の塗り重ねも検討する’(左上表)。下地は有機ジンクリッチのため塗膜剥離剤で除去することが可能で、(既存塗膜の下地が無機ジンク時のように)別途グラインダーなどの研掃が必要となるといった事態は避けることができる見込みだ。


剥離剤の塗布(左、中)/剥離剤の養生(右)


コンパネも用いる(左)/膨潤する既存塗膜(中)/スクレーパーで掻き出していく(右)

クイックデッキを採用

 周辺環境、作業者の安全に配慮

 施工上留意する点として、元請である中村建設の鈴木航現場代理人は、「周辺環境および作業者の安全への配慮をしながら施工しなくてはいけない」と話す。現場は海苔や牡蠣の養殖など漁業が盛んな地域であり、PCBや鉛の飛散は厳重に避けなくてはいけない。そのため、しっかりとした足場を組み(今後の保全事業への展開も考えて、日綜産業「クイックデッキ」を採用したという)、厳重に密閉した空間とし、外部への塗膜の飛散を避けている。労働者の安全という意味では、「市として防護服や長靴、マスクなどは設計で仕様している」(同市南土木整備事務所)ほか、元請独自の施策として、2種ケレン時における集塵機と施工後のエアシャワーの設置などを行っている。但し、2種ケレン時に下地や微量の残存塗膜に含まれている鉛が舞う可能性もある。事前試験として粉塵中の鉛含有許容量0.05㍉㌘/立方㍍を下回るか確認する必要がある。

 施工は8人態勢。既設塗膜上に塗膜剥離剤(バイオハクリX-WB)を塗付後、24時間以上養生した上で、剥離状況を確認、状態が良ければスクレーパーで塗膜を除去する。通常のブラスト工法と比較して、塗膜と混ざった研掃材を除去しなくて済む分、廃棄物量を大きく減らすことができる。また、水性のため消防法上、非危険物に区分されており、その意味でも安全性に寄与できる。

 課題は猛暑、施工は7月下旬~8月末にかけて行われている。塗膜剥離剤の性能を引き出す意味では理想的な環境も、鋼桁内部の密閉空間で作業する労働者にとっては過酷だ。そのため、「30分おきに強制水分補強、OS-1、熱中症飴の常備携帯のほか、空調服の採用も検討している」(鈴木氏)。

 塗膜処理、2種ケレン後は、有機ジンクリッチペイント(600µm、防食下地)、弱溶剤系変性エポキシ樹脂×2層(200µm×2、下塗)、弱溶剤系フッ素樹脂(140µm、中塗)、弱溶剤系フッ素樹脂塗料(120µm、上塗)を施工する。できる限り8月末に施工を終え、9月いっぱいは足場の解体その他の作業に充てる方針だ。

 なお除去されたPCBや鉛を含む既存塗膜は、別途発注により規定の法令や条件を満たした業者により処分される。PCBについては燃焼法などによる無害化処理、鉛に関しては燃焼により濃度を減らしたうえで灰をコンクリートなどで不溶出化した上で埋め立て処理する方針だ。


浜名湖大橋鋼桁部、残る2径間も塗り替えていく


けい酸塩系含浸材を塗布

 PC鋼材を傷つけないよう慎重にはつる

コンクリート部

 PC桁部は、塩化物イオン濃度もさほど大きくなく、塩害による損傷が著しいとは言い難い状況にある。しかし、全体的にかぶり厚が薄く、鉄筋が露出している箇所が多くみられている。また一部の横締PCでも定着部付近の剥離、損傷などがあった。なるほど現場を歩くと、(未補修径間で)そうした損傷が見られるほか、下部工でも梁部で鉄筋露出が見られる。また、RC巻立補強部でもコンクリートのひび割れや一部鉄筋露出が散見された。上部工もジョイント部では漏水跡や端部の損傷があり、市では「今後、ジョイント取替や床版防水などの補修も予定している」とのこと。


未補修個所で見える損傷(左)/遊間部や巻き立て補強部でも損傷が散見される

 当該径間の補修は既に完了しており、うき・剥離部や鉄筋露出部は鉄筋裏までチッピングした上で、露出鉄筋は防錆処理し、ひび割れ注入(IPH工法を採用した)やポリマーセメントモルタルによる断面修復工を行った。チッピングに際しては、PC橋であることから、PC鋼材を傷つけないよう、事前に電磁波レーダーを用いた非破壊検査機で位置を探査した上で慎重にはつっている。


写真左から、カッター工、はつり工、防錆剤の塗布


写真左から、打継用エポキシ樹脂接着剤の塗布、断面修復材の施工、ひび割れ注入材(IPH)の施工

 仕上げとして、かぶり厚不足の補いと長期耐久性の向上を図るべく、地覆・床版下面及び桁全面2,628平方㍍にけい酸塩系含浸材を塗付した。「コンクリート内部を緻密化することにより、塩分その他の劣化因子浸透の抑制を図る」(浜松市)のが狙い。天井面での施工となるが、「現場施工ではあまりダレることもなく、どんどん吸い込まれていった。ただしポーラスな現場打ちと密実なプレキャスト部材では当然浸透し易さは異なった」(鈴木氏)。用いた材料は「シリケートガード」で「現場での加水をしなくても良いタイプなのでそうした手間も省けると考え採用した」(同)。


含浸工施工前のケレン工(左)/けい酸塩表面含浸材の塗布(右)


 浜松市としては表面被覆やシラン系表面含浸材も比較検討したが、「表面被覆工では部材表面が見えなくなり、点検の支障となることや、紫外線劣化の影響や飛来塩分量、コストなどを考え、けい酸塩系含浸材の採用を決定した」(浜松市)としている。

 設計はフジヤマ、元請は中村建設が担当している。