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現場を巡る詳細

プレキャストPC床版・壁高欄で施工期間を短縮

NEXCO中日本 東名道用宗高架橋リニューアル工事

 中日本高速道路は、現在、東名高速道路の用宗高架橋下り線(鋼鈑桁、施工区間はP7~A2間72㍍、鋼2径間連続4主鈑桁)における床版取替工事を行っている。同社は、大規模更新事業第一弾工事として位置付けており、5月23日には報道陣に現場を公開する力の入れようだ。現場はJR東海道本線との交差部にあり、施工条件としては非常に厳しいと言える。現場リポートをまとめた。(井手迫瑞樹)


当該区間の補修補強履歴と損傷状況

 今回の工事では、P7~A2の下り線72㍍部分の床版を取り替える。同区間の供用時(1969年)に用いていたのは、石綿スレートを型枠に用いたグレーチング床版(166㍉厚)であったが、交通量が10年間で2倍以上に増加、とりわけ大型車が大幅に増加したことからグレーチング床版の損傷が進んだため、78年に上下線の張出床版部を除く部分について鋼板を永久型枠として用いた201㍉のグレーチング床版に打替え、打替えが困難な張出床版部については30㍉増厚した。その際は張出床版下面スレートの剥落を防ぐために撤去し、打替え部と同様に下面に鋼板を設置した。


用宗高架橋P7~A2(施工前)


床版張出部の損傷状況/橋梁概要と工事箇所の概要


年度別交通台数

 その後、97年に上り線のみ50㍉増厚した。下り線は増厚しておらず、床版にひび割れ、鉄筋の発錆および腐食膨張、コンクリートの浮き、はく離等の劣化が生じていた。損傷は主桁上の床版(中央部)に比べて供用当初のグレーチング床版を母材として使い続けている張出床版部(両端部)に顕著に見られた。またRC製の壁高欄についても顕著な劣化が生じていたことから、今回下り線の壁高欄と床版全体を取り替えている。A1~P7については当初から上下線ともRC床版で、建設時は170㍉であったが、その後50㍉増厚しており、P7~A2ほどの損傷は見られていない。


主な採用工法・材料

 既設床版は全てプレキャストPC床版に取り替える。また、壁高欄は、東日本高速道路などでも実績を有するDAK式プレキャスト壁高欄を中央分離帯側で使用している。左路肩側は、通信管路や落下防止柵アンカー等の壁高欄への埋設物が多かったことから従来の現場打設工法を用いている。


プレキャストPC床版/DAK式プレキャストRC壁高欄

 プレキャストPC床版は既設の鋼桁耐力上、厚くすることはできるだけ避けたいため、継手を一般的なループ鉄筋継手方式ではなく、KK合理化継手方式(川田建設保有技術)を採用、床版の厚みを200㍉(ループ鉄筋継手方式では最小床版厚240㍉)に抑えた。舗装厚は既設の50㍉を本来の80㍉へと厚くするが、舗装重量として2径間での重量増は最小限(約90㌧)に抑制することができた。


合理化継手を用いたプレキャストPC床版の概要図


合理化継手の構造と一般的なループ鉄筋継手構造との違い

 また、桁端部の漏水対策として、A2側端部ではRC製の延長床版を採用している。

 防水工はグレードⅡ(高性能床版防水)を採用した。当初はウレタン樹脂製の高性能床版防水工を採用する予定であったが、施工性などを考慮して、より施工性の優れる防水工はグレードⅡ(高性能床版防水)の規格の適合するアスファルトシート系流し貼り型+反応樹脂型アスファルトウレタン樹脂防水工法を採用した。具体的には床版中央部をシート系の防水工で施工、端部や地覆・高欄立ち上がり部をウレタン系の防水工で施工するもの。床版コンクリートおよび舗装との付着性に優れるシート系を床版面で用いる一方、耐久性・ひび割れ追従性に優れるウレタン系を端部や地覆・高欄立ち上がり部に使うことで、限られた工期内の施工性と耐久性を両立させた。

 中央分離帯にプレキャストRC壁高欄(DAK式プレキャスト壁高欄)を採用したのは、工期短縮と耐久性向上を図るため。「今回の工事では施工規模的に大きな効果がでるとは限らないが、今後リニューアル工事での採用を念頭に品質、施工性を検証する」目的で試行的に実施した。同壁高欄は、従来の現場打ちRC壁高欄よりコストが高くなるが、工期を大幅に短縮できるのが特徴。高炉スラグ微粉末を使ったコンクリートを採用しているため遮塩性が高く、凍結防止材散布による塩害には高い抵抗性を有している。

 具体的には、40N/平方㍉の高強度コンクリートを用い、橋軸方向の壁高欄継ぎ目部分には、オス側を孔明き鋼板ジベル(PBL)、メス側を台形型の箱断面により接合するもので、車両衝突時の安全強度を高めている。また、コンクリート床版と壁高欄との接合は床版上面側に配筋されたループ鉄筋にプレキャスト壁高欄の矩形ループ鉄筋を重ね合わせ、かつそれらのループ鉄筋内に、橋軸方向へ連続する複数の補強鉄筋を配置し、高強度モルタルを打設して一体化する。高強度モルタルにも高炉スラグ微粉末を混入しているため接合部も高い遮塩性を有している。

 また、床版内の鉄筋は全てコンクリートの付着性能に優れたエポキシ樹脂塗装鉄筋「MK-エポザク」を採用するとともに、間詰めコンクリートは膨張剤およびポリプロピレン短繊維「バルチップ」を用いることで、継手部からの(ひび割れから凍結防止剤を含んだ水が入ることなどによる)損傷が起きないよう対処している。なおバルチップは剥落防止対策も兼ねて、床版本体にも混入させている。


MK-エポザク(左写真)とバルチップ(右写真のファイバー)

 施工足場は、JR東海道本線と市道を横断しているため、安全性・施工性に特に配慮しJR東海道本線を横断するP7~P8についてはJRに足場の設置撤去を委託している(採用足場:セーフティSKパネル(パネル式システム吊足場))。また市道を横断するP8~A2については、補修工事で実績を有するクイックデッキ(先行床施工式フロア型システム吊足場)を採用した。基本構成部材は全てシステム化されており専用工具を必要とせず人力で組み立て可能で、部材剛性が高くと水平旋回式の組立方法により吊点からの跳ね出し最大5㍍の先行床施行で作業床を高所での危険作業なしで安全に施工できる――などのメリットから選択したもの。


吊足場組立状況/吊足場組立完了