道路構造物ジャーナルNET

景観的特徴を変えず補強

愛知県 橋暦90年 歴史的名橋「殿橋」の上部工連続化による耐震補強

公開日:2015.12.16

中間支点上遊間部をエポキシ樹脂系の充填材で間詰め
 D29鉄筋相当の強度をeプレートに期待

 連続化することに補強が必要になるのは、(連続化した)支点付近の負曲げモーメント(B活荷重)発生個所である。これに対応するため、主桁、床版の中間支点上遊間部をエポキシ樹脂系の充填材で間詰めして発生曲げモーメント(1,990kN/㍍)に対する抵抗断面を確保する。また、床版上面の補強としては、遊間前後2㍍弱(1,900㍉)に炭素繊維成形板(eプレート)を貼り付けた。eプレートはD29の鉄筋相当の強度を期待したもの。遊間は10~20㍉幅(設計値、実際はほとんどない)。eプレートの貼り付けにあたっては、旧軌道敷部の床版を100㍉増厚した。
 軌道敷部は鉄道運行時の枕木が入っていた個所にバラストの代わりにアスファルトを敷設していた状態であったが、今回強度が非常に高い補強材(eプレート)を入れるに当たり、土台となる床版もコンクリートに打ち替えることが適当と判断されたため。


(左)切削状況/(中)人力切削/(右)既設コンクリート調査(硬度)

(左)既設コンクリート調査(中性化)/(中)床版切削/(右)プライマー塗布

(左)タックコート塗布/(中)樹脂モルタル1層目/(右)eプレートの貼付

(左)さらにタックコートを塗布/(右)樹脂モルタル2層目

上から見るとまだら模様の配置が良く分かる

採用した連結工法

 桁連結用の鋼板接着(左写真)は、上部工と下部工の相対変位が予想を超えてずれた時に、落ちない状態を想定した(落橋防止装置的な考え方)。連続化はあくまで床版と樹脂を用いた充填剤の接着で考えており(挙動を一緒にする)、エポキシ充填を行うことで床版連結の炭素繊維が効いてくる。間詰めでがっちり変位させずに構築することによって、断面として捉える。
鋼板接着はその抑えと落橋防止装置として考慮している。充填剤は親水性のエポキシ樹脂を採用。遊間部はゴミなどが入っていることがある。そのため、桁下を削孔し、PCMを注入してまず遊間部に下から栓をし、次にWJで遊間を洗浄し、側面はクラック注入などで用いるエポキシ樹脂のパテで止めて、下から遊間充填用の親水性エポキシ樹脂を圧入していく。「既存の信頼性の高い技術を援用して何とか施工した」(愛知県)。

10㍉以下をWJではつり
 無機系の被覆工法で断面修復

 補修設計
 桁の被り厚も34㍉程度しかなく、既に桁は100%、床版も7割程度、鋼板接着により補強されているが、残部についても補強する。それ以外の若干隙間部には断面修復および表面保護工(無機系の表面保護材を採用)を行う。基本的に劣化している部分は断面修復するが、劣化していなくてもジャンカがある部分がところどころ見られた。そこで、補修と中性化抑制のための表面被覆を兼ねて、無機系の被覆工法(レックスコート工法、右表)がいちばん良いと考え採用した。劣化部は基本的にWJではつるが、コスト縮減と品質の確保を追求し、被りのうち10㍉より上をブレーカーなどではつり、残りのマイクロクラックの発生が予期される残りの10㍉をWJで施工するやり方(北海道開発局などで用いられている仕様)ではつった。その後防錆施工して断面修復施工した。


(左)WJによるはつり/(右)はつった後の状況

(左)表面被覆前/(右)表面被覆後

 床版防水
 アスファルトシート系を採用した。面積は1,300平方メートル。


床版防水はアスファルトシート系を採用した

SMA長寿命化タイプを施工

舗装
 殿橋の舗装厚は「たまたま110㍉と厚い」(愛知県)。一方で舗装下には「非常に値の張るeプレート」を補強材として使用しており、その保護層はエポキシ樹脂モルタル(下が4㍉、2㍉の炭素繊維プレートが入って、上4㍉のエポキシ樹脂モルタルと)上面の被りが4㍉しかない状態。「次回の舗装の打ち替えは四半世紀後になることが予想されるが、その時は今回の工事を知る技術者はもちろんおらず、当然図面は残すが誤って削ってしまう可能性もあるため、できるだけ長寿命な舗装材を採用した」(愛知県)。  具体的には、エポキシ樹脂モルタルの上にシート防水を掛けて、60㍉の改質Ⅲ型のSMAの長寿命化型基層を敷設し、表層は50㍉の改質Ⅲ型の長寿命化型を施工(右上写真)する構造。
 ただし、SMAはしっかり締め固めないと劣化を招いてしまうことが実際の現場で起きている。そのため発注時の特記仕様として管理を厳重に行うよう指導するとともに、温度管理し易く低温でもしっかりと締め固めのできる長寿命化型という「舗装の下になるだけ影響のないものを採用した」(同)。
 伸縮装置取替
 埋設ジョイントをしていてこれが損傷して漏水を招いていた。連続化を決断した理由の一つである。端部も埋設化していたが、こちらは今回の連結化で120㍍繋いでも今の主桁を切らないままで良く、現状では端部の取替は必要ない。

 現状
 桁下から行う補修工事(断面修復と鋼板接着(床版下面)、断面修復、中性化対策、遊間充填))は昨年度発注し、今年の8月に完了している。
 現在は、橋面からの施工を行っており、舗装を剥いで床版の健全性を確認し、損傷箇所は補修した上で炭素繊維プレートを張っている。交通量が多いため、橋面を3分割して施工中、順番は上流側の1車線、下流側1車線、中央部2車線(旧軌道敷の床版の打ち替えがあるところ)アスファルトを撤去して、同部分の床版を10㌢増厚し、eプレートを床版上面に貼りつける工程まで完了している。
 詳細設計は中日本建設コンサルタント。施工は小原建設、一次下請は中部化工など、二次下請は日進機工(WJ)など。

ご広告掲載についてはこちら

お問い合わせ
当サイト・弊社に関するお問い合わせ、
また更新メール登録会員のお申し込みも下記フォームよりお願い致します
お問い合わせフォーム