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バイオハクリX-WB、ヒートレッドM-1、ブリストルブラスターを活用

NEXCO東日本 綱木川橋で鉛含有塗膜を除去

公開日:2015.10.16

1平方㍍当たり700gを塗付
 ヒートレッド 180度程度に局部を加熱して剥離

 既存塗膜の膜厚は一般部で260~280µm、特殊部は310µmほどである。それに対し事前に剥離剤の塗布量について1平方㍍当たり500、700、900gを試験施工した結果、塗付量700gが最適と判断し、それに従って施工している。「500gでは少なすぎ、900gでは多すぎて浸透し辛かった」(同)ようだ。


塗膜剥離剤の吹付け

 塗膜剥離剤は平面部で剥離性能を発揮する一方で、隅角部や添接部では形状などの理由からどうしても既存塗膜を除去しにくい。今回の塗り替え工事では、そうした個所に対してヒートレッドM-1工法を採用した。同工法は900kHzの高周波により、鋼材表面(電流浸透深さ0.1㍉程度)を180℃程の温度で局部加熱(180℃になると自動的に切れる設定にしている)することで、最下層の塗膜を炭化させ、付着強度をゼロにし、その後工程であるケレン処理を容易にするもの。塗膜と近接するヘッド部分(ターンコイル)は、ボルトおよびナットの形状や隅角部または対傾構などの形状に応じて設計および製作が可能なため、様々な形状に対応できる。また、加熱温度は180℃程度であり、鉛の融点(327℃)に達しないため、加熱に伴う煙に気化した鉛が含まれることはないが、10月1日に試験施工を行い煙を採取、成分分析した結果、手元部分に固化した細かい鉛の粒が浮遊していることが分かったため、手元に集塵機を配置し、バキュームし、(鉛化合物の濃度を基準値の0.05mg/立方㍍以下に抑え)ながら施工する対策を施している。


ヒートレッドの温度測定器(左)/施工中のヒートレッド工法(右)

 設備は高周波誘導加熱装置が重さ20㌔(幅340×長さ450×高さ270㍉)、冷却装置も重さ30㌔(幅330×長さ560×高さ460㍉)と比較的軽量であり作業性を阻害しない。電源はケーブルの太さにより離れた個所に設置できる(ケーブル径5.5スケアの場合600㍍)ため、延長の長い橋梁や高架の塗膜除去作業も電源設備の盛り替え作業は最小限で済むことから採用された。
 また素地調整についてはディスクサンダーなどの動力工具を使用するが、発錆箇所や下フランジおよびウエブの下端、桁端部についてはブラスト面形成動力工具「ブリストルブラスター」を使用する。なお発錆部でも層状錆については、ある程度ハンマーやジェットタガネなどによる浮錆の除去を行うことで除錆スピードが飛躍的に早くなることを確認している。なお塗り替えに伴うケレン程度は2種ケレン相当。

 現場施工
 当日(9月下旬)の現場は上り線が塗膜剥離剤塗付後の既存塗膜掻き落し、下り線が塗膜剥離剤の塗布をそれぞれ施工していた。桁下に河川や重要交差路があることから、塗装用足場は夜間に国道を通行規制したうえで組んでいる。それでも最少クリアランスは600㍉程度と低く現場の移動や下フランジ部の施工は苦労することが容易に想像できた。作業員の安全の確保と外部環境への悪影響を回避するため、1回現場に入るごとに使い捨ての高密度ポリエチレン製の防護服(タイベック)で頭から爪先までを覆い、なおかつ防塵マスク、作業用のレンズを装備するため、当日のような涼しい気温でも取材後は全身汗だくで、暑い時期の施工の苦労が思いやられた。


掻き落とし作業

 当日の現場は吹き付け工に1人、掻き落し施工に7人の計8人が従事していた。今後はヒートレッドやブリストルブラスターおよび並行して塗り替えが始まることから、ピーク時には20人に達する見込みだ。なお、作業効率は「塗膜剥離剤の吹き付けが1人200平方㍍/日、掻き落しは1人10平方㍍/日」(ナカムラ)としている。
 実際、記者や同行したNEXCO東日本のインハウスエンジニアリングも塗膜剥離剤を塗布してから4日経った既存塗膜の掻き落しを行ったが、非常にスムーズに除去することができた(写真)。興味深いのは、既存塗膜の品質が塗膜剥離剤の性能にも影響するということ。具体的には下塗と中塗または中塗と上塗間で層間剥離している場合は剥離剤の浸透が上手くいかず重ね塗りをする必要が生じたが、層間剥離が生じていない健全な箇所では図ムーズに浸透し、予定通り1回の塗付で塗膜を全層掻き落すことができていた。


塗膜剥離剤を塗布養生後、膨潤した既存塗膜

記者でもスクレーパーで綺麗に塗膜を掻き落とすことができた

 また、同橋は全層有機系塗料のため、塗膜剥離剤で施工できたが、現場によっては下塗が無機ジンクリッチを使っている箇所もあり、そうした橋梁では一般部でも塗膜剥離剤に何らかの工法を組み合わせる対応が必要になる。
 今後は塗替えも並行して施工していく。塗替塗膜は弱溶剤の有機ジンクリッチ、変性エポキシ樹脂塗装の下塗り、フッ素樹脂塗装の中、上塗り。膜厚は一般部で245µm、増塗部は305µm(+60 µm)。
 施工はナカムラ。(井手迫瑞樹)

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