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東日本高速道路 鋼3径間連続トラス橋×3連の長大橋

片品川橋上部工の耐震補強 1500㌧ジャッキで支承交換

公開日:2015.09.16

実施工前解析
 予備設計時と大きく変わったのは、座屈拘束ブレースの代わりにブレーキダンパーを用いた点と座屈防止ストラットを省いた点だ。


ブレーキダンパー

 日立造船は、詳細設計前の解析で上弦材の上にある床版も解析の構造条件に加味するなど、より実構造物に近い条件で非線形動的解析をやり直した。その結果「当初設計では垂直材に荷重が集中し、垂直材の間にある斜材が許容値を超過するという解析結果を示していたが、再解析の結果によると床版を介して上弦材にも力が伝わることにより、斜材の多くが許容値内に収まる結果が出た」(日立造船)。そのため実施工では座屈防止ストラットが不要となった。
 また、座屈拘束ブレースの代わりには大林組が開発したブレーキダンパー(減衰力2,600kN~9,800kN)を採用した。
 ブレーキダンパーは自動車のディスクブレーキの原理を応用して、ステンレス板とそれを挟み込むブレーキ材を使用し、摩擦力によりエネルギーを吸収することで制震効果を発揮するダンパーだ。今回、同ダンパーを用いたのは「大規模地震が起きた後、ブレース材であれば損傷した場合その部材全てを取り換えなくてはいけないが、ブレーキダンパーは1、2回程度の地震であれば、取り換えずにまた調整しなおすだけで済むほか、仮に取り換えとなっても、(各部材の先端に設置された)摩擦ダンパーだけを取り換えれば良いため」(東日本高速道路)としている。結果として当初134基を予定していた制震部材は解析条件の変更、ブレーキダンパーへの材料変更により52基にまで削減した。
 加えて解析条件の変更により、当て板補強および取り替え部材も当初の144本を90本に縮減できた。


フレーム図

部材の搬入・移動
 部材の搬入は基本、桁下から行い、「路面上に規制がかかった際にのみ相乗りで上から部材を下すことも行ったとしている。基本的には各橋脚上に作業構台を作りそこに桁下から部材を吊り上げ搬入する。そのため1点当たりの部材重量は最大でも6㌧を超えないようにして製作している。
 また、桁間とりわけB橋の桁間は桁高が大きく異なっており、通常の足場では製作に大きな時間と費用を要する。そのため現場では長大橋の維持管理現場で実績のあるラック足場を採用、変断面の移動についてレールを延ばすこと(2㍍ずつ張り出しては移動することを繰り返し桁間移動できるように足場用のレールを敷設)で幅22.17㍍×長さ5.4㍍、積載重量1.6㌧の桁間移動自在な作業足場を構築し、補強用当て板や添接用部材などの移動、補強施工の簡便化を実現している。


ラック足場。手前に見えるレールを設置することで桁間移動を自在にする

 ただし、撤去・取り替えを必要とする斜材についてはこうした移動足場では積載重量限界を考慮すると難しい。そのため規制をかけて、路面上から該当部に設置した足場に下し、慎重に作業を行った。


大型部材の搬入

補強詳細(A、C橋)
まず、側径間部のA橋、C橋に関しては、支承を全て免震支承(機能分離型支承)に交換する。交換に際し、最も考慮しなくてはならないのは上部工の非常に大きな荷重(死荷重および活荷重)である。支承交換の際には、当然ジャッキアップが必要になるが、ジャッキアップ時の反力は最大のP2橋脚で14,366㌧(ジャッキ1基当たり1,466㌧)に達し、当時国内最大の1,000㌧ジャッキでは対応できなかった。そのため日立造船は1,500㌧の反力にも耐えられるジャッキを大瀧ジャッキに特注して製作。P1~P3およびA2橋脚で使用している。その他は1,000㌧ジャッキを使用して支承を交換した。

 また、支承を交換するためのジャッキアップ時の反力は上部工(格点部)にも作用するが、格点部はそのままでは反力に対して持たない。そのため、端支点上(A1、P3、P6、A2)には格点部にRC巻き立てを行い、その下にジャッキを配置してジャッキアップした。中間支点部は、(端支点部に比べて荷重が作用する量が大きいため)RC巻き立てでは非常に大きな断面になるため、ガセットプレートを拡幅し、リブを設けて補強して、その下にジャッキを配置してジャッキアップし、支承を交換した。供用下のもとジャッキアップ高を3㍉以下に制約して、その中で慎重に既設支承を引き出し、新設の免震支承を据え付けた。


(左)新設された免震支承/(右)1,500㌧ジャッキによる支承交換

 なお、格点部付近のRC巻立てによる補強は、機能分離型支承や変位制限装置の設置のため、ガセットプレート拡幅部および後述のP4、P5部においても施工する。
 当て板補強はA、C橋とも予備設計より僅かに抑えられている。
 また、A2支点でも桁端と橋台の衝突を避けるために制震ダンパー(2000㌧タイプ4基)を設置している。

補強詳細(B橋)
 B橋は桁高が最大で25㍍(P4、P5橋脚上)に達する。「このため免震支承に取り替えるにはジャッキ一基当たり6,000㌧のジャッキアップ反力に耐える必要があり、支承交換は事実上できない」条件下にある。そのため、52個所にブレーキダンパーを設置した。その内訳は対傾構20個所、下横構(斜材)16個所、中横構(斜材)16個所。対傾構についてはP4、P5橋脚の直上部のパネルでは部材の上部先端にのみ2部材分(2個所)設置し、直上部のパネルに隣接する左右のパネルの対傾構については上下両方とも4部材分(8個所)設置した。下横構と中横構はP4、P5の直上部のパネルを中心として、その左右2パネル目と3パネル目にそれぞれ2部材分ずつ上下に設置(各16個所)した。
 部材に発生する応力が許容値を超えている部材については、当て板補強もしくは、部材重量が増え過ぎる箇所は新材料への取替を行っている。P4、P5橋脚上には変位制限装置も設置し、交換できない既設支承を補強する対策も施している。

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