道路構造物ジャーナルNET

アラミド製ロッドを用いて鉄を一切使わない

長崎道の工事用道路で「夢の非鉄製PC橋」の実証橋を建設

公開日:2015.09.16

輪荷重走行試験ではすり磨き現象は生じず  床版防水未設置にも関わらず

 実証橋の建設に先立ち、両社は非鉄製箱桁橋の実物大1/2試験体による載荷試験を行っている。東名高速道路100年間相当の輪荷重載荷試験を行ったもので、プレキャストセグメント同士の継目(接着)部分も模擬した上で試験した。また、輪荷重試験は最終的に床版上に水溜りを作り、すり磨き現象が起きやすい状態も再現して試験した。床版防水を行っていない模擬試験体であったが、床版上面および継ぎ目部の劣化は生じなかった。

継ぎ目部については検討の余地あり

 さて、実証橋はJR現川駅から南に徒歩30分、長崎道現川橋のたもとに長崎道4車線化工事の工事用仮橋として架設された。
 製作は3月初頭から三井住友建設の能登川PC工場で行われた。製作の面で苦労したのがその手順である。「過去バタフライウエブを製作した際は、ウエブだけの製作であるため平面的に作れたが、今回は立体的に製作する必要がある。実際にはウエブを製作後、立てて型枠をはめて上床版、下床版を製作しており、改善の余地がある」(西日本高速道路・福田雅人氏)としている。また、「今回はプレキャストセグメントをマッチキャストで製作していないため、精度上の課題があることは否めない。せん断キーと80N/平方㍉の強度を有する接着用無収縮モルタルでセグメント同士を継いでいるため、大きな問題はないと考えるが継ぎ目については今後も検討していく必要があるだろう」(同)としている。


継目部

 次に現場での架設である。


セグメントの架設

 現場では7月10日に製作用の足場が架設され、21日からセグメント(1ブロック桁高2㍍×幅2㍍)の架設を開始した。具体的に同橋は8ブロックのセグメントに分かれており、220㌧クレーンを使用して1日目に2ブロック、2日目に3ブロック、3日目に3ブロック架設した。その後29日~8月下旬にかけて、上床版下に横桁を現場打ちし、φ7.4㍉のAFRPロッドが9本束ねられたケーブル4本を両側に配置、緊張、定着し、最後に支保工を外して完成した。現場で桁内に入ると、コンクリートの緻密さに驚く。工場製作のため気泡は殆どない。ウエブも数字以上に薄く見えるが堅牢で、叩くと磁器のような音を発する。記者が取材した日はちょうどケーブルの緊張を行っている日だったが、その治具も独特の形状をしていた。初めての現場ということもあるのだろう。各種計測機器をにらみながら慎重に緊張力を導入していた。


(左)慎重に軸力を導入/(右)継目部にセンサーを設置

(左)施工完了した定着部/(右)計器をにらみながら慎重に施工

 同橋は今後、工事用道路として使用される。実橋を用いた車両通行による挙動を検証する。

LCCの優位をどう見るか

 「Dura-Bridge」は画期的な橋梁形式だが、導入にあたってはコストが課題となる。イニシャルコストは通常のPC箱桁に比べ1.5倍程度になるため、これを1.5倍未満になるよう抑制するべく、さらに最適化を追求していく考えだ。もっともRC、PC桁に使っている維持管理費を考慮すればLCCは50年で逆転する見込みで、西日本高速道路はじめとした発注者がどのように較量していくかであろう。また、研究成果を応用し、継手部分を開発した上で、大規模更新事業における取替え床版などの更新部材としての適用も模索していく方針だ。


非鉄橋梁部遠景

桁近傍

桁内は広く、その後の点検もし易そうだ

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