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アラミド製ロッドを用いて鉄を一切使わない

長崎道の工事用道路で「夢の非鉄製PC橋」の実証橋を建設

 NEXCO西日本三井住友建設は、アラミド繊維補強(AFRP)ロッドをプレストレス材として用い、80N/平方㍉の高強度コンクリートを使用することでせん断補強鉄筋も配置せずに済む、全く鋼部材を使わない新しい超高耐久非鉄製PC橋「Dura-Bridge」を開発していたが、このほど長崎自動車道Ⅱ期線工事の工事用仮橋として初適用した。構造詳細は同様に両社が開発し、既に東九州道などで実績のあるバタフライウエブ構造を適用した。橋梁概要は橋長15.9㍍の幅員6㍍のPC単純バタフライウエブ箱桁橋、ウエブ厚は100㍉、上床版厚は200㍉まで薄くでき、重量も通常のPC箱桁に比べ2割程度軽量化した。今後2年程度、現川橋の工事用橋梁として使用し、2年後には実証橋として様々な試験を行い、実橋適用への貴重なデータを収集していく方針だ。(井手迫瑞樹)


材料は35年前、実験橋は25年前に着手

 三井住友建設 小山工場 25年使用しても損傷なし

 そもそも三井住友建設は、25年ほど前から、非鉄金属を用いた腐食しないPC橋の開発に着手、さらに遡るその10年前からAFRPを緊張材として使う研究を開始していた。同社は独自の実証橋として、1990年に栃木県下野市の同社小山PC工場にいずれも幅員10㍍程度、橋長12.5㍍のプレテン単純桁(プレストレス材もせん断筋もAFRP、コンクリート強度は両橋とも40N/平方㍉)と25㍍のポステン単純桁(せん断筋はエポキシ樹脂塗装鉄筋)を製作し、工場の出入口に実際に設置して使用していた。2014年3月には、供用25年を経ての健全度を確認するためラフタークレーンを走らせて実験を行った結果、架設時とほぼ変わらないたわみ、固有振動数を示し、傷んでいないことを確認している。


「非鉄にこだわる」

 80N/平方㍉の高強度コンクリートがせん断力を担保

 ついで、両社は3年前から非鉄製橋梁の試験を開始したが、そこでこだわったのが文字通り「非鉄」である。鉄筋は一切使わず構造筋は全てAFRPロッドを採用、ウエブはせん断鉄筋を用いる代わりにコンクリート強度を80Nまで上げることで、必要なせん断耐力を確保、鉄筋を不要とした。

 具体的には2,000N/平方㍉の高強度鋼繊維と粗骨材入りのコンクリートをうまく配合し、工場で蒸気養生し丁寧に製作することで、80N/平方㍉以上という所定の性能を安定的に確保することを可能にした。


(左)BWの製作/(右)上床版の製作


ウエブ厚を100㍉と極薄に

 その結果、通常のPC箱桁橋のプレキャストセグメントでは最小でも鉄筋被り厚確保やバイブレーターの施工を考慮するため、ウエブ厚については350㍉程度必要とされるが、今回の実証桁のウエブは、曲げモーメントおよび軸力方向における引張応力にはアラミドFRPロッドによるプレストレスで補強、一方せん断力に対しては、通常のPC箱桁に比べ2倍程度(36~50N→80N/平方㍉)に強度を向上させた鋼繊維補強コンクリートを用いることでせん断補強鉄筋を不要にした。鉄筋で必要な被り厚が不要なため、ウエブ厚は必要な強度分を確保できれば良く、100㍉程度に薄くすることを可能にした。

 上床版も横締めのAFRPロッドのみの配置のため、従来のPC床版に比べ若干薄くすることを可能にしている。


極薄のウエブ厚


耐アルカリ性に強い「テクノーラ」を採用

 定着部で把持し易くコンクリートとの付着も取りやすい

 次にAFRPロッドである。塩害による構造物の劣化が生じないほか、比重も鉄の7分の1と軽量なことが特徴である。材料のアラミド繊維ロッドは、詳細に言えば帝人が生産している「テクノーラ」を使用している。

 一般に土木用途で用いられるパラ型アラミド繊維系補修補強材料は「ケブラー」や「トアロン」といった高弾性タイプと「テクノーラ」の高強度タイプに分かれている。テクノーラが今回選ばれたのはコンクリート中に入れることから耐アルカリ性に強い(共重合タイプのポリマーからなる繊維のため耐アルカリ性能に強い)ため。また、ヤング係数は5万N/平方㍉とアンセンシティブな素材であることからコンクリート打設時の乾燥収縮の影響を受けにくいことがある。成型方法もアラミド繊維を引抜成型したロッドに、撚ったアラミド製の糸を螺旋に撒きつけて樹脂接着して製作したものであるため、定着部で把持しやすくコンクリートの付着も取りやすい形状となっている(前田工繊製)。また、FRPのため紫外線が最大の劣化要因となるが、外ケーブルとして配置する部材については、ポリエチレン管で覆って紫外線劣化を防止する。


(左)アラミドロッド/(右)ポリエチレン管で覆って紫外線劣化を防止

 ケーブルの定着は鋼製の筒の中にアラミド製のケーブル基部を挿入してモルタルを流し込み定着させる。従来のPC鋼材のように全体にモルタルを充填する必要はなく端部のみ定着するだけでよい。


ケーブルの定着冶具