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門型油圧リフターで床版を上下に移動

NEXCO中日本 東名高速富沢第二橋更新工事で全断面床版架設機を採用

公開日:2021.01.29

 中日本高速道路(NEXCO中日本)東京支社は、東名高速道路の裾野IC~沼津IC間の大規模更新事業を進めており、昨秋に富沢第二橋(下り線)床版取替工事を実施した。同工事では一部施工区間が高圧線下となり、クレーンでの施工が不可能だったため、全断面での床版取替が可能な床版架設機を採用したことが特徴だ。また、床版間の接合には天候による工程遅延リスク低減と疲労耐久性向上を図るために2方向PC構造を採用した。

橋長124m 、全長にわたる1,300m2の床版を取替え
 老朽化の進展と床版下面に損傷が発生

 富沢第二橋は、一級河川梅ノ木沢川と長泉町道を跨ぐ1969年3月に供用された橋長124mの3径間連続非合成鈑桁橋だ。平面線形はR=2,000mで、縦断勾配1.3%、横断勾配2%となっている。既設床版厚は180mmで、これまで部分的な下面補修は実施してきたが、増厚は行っていない。


富沢第二橋全景(NEXCO中日本提供。以下、注釈なき場合は同)

橋梁一般図(※拡大してご覧ください)

 2019年の下り線交通量は約17,000台/日、大型車混入率約34%で、新東名高速道路開通前は約35,000台/日、大型車混入率約39%となっていた。凍結防止剤は御殿場保全・サービスセンター管内で約4t/kmを散布している。これら重交通や車両の大型化、凍結防止剤の散布によるものと考えられる鉄筋露出や補修部の剥離などの損傷が床版下面に発生していた。また、ジャンカも散見されていた。床版上面の土砂化は見られず、舗装面のポットホールは都度、補修を行ってきたが、老朽化と床版下面の損傷の抜本的な対策として全長にわたる1,300m2の床版を取替えることとなった。


既設床版下面の状況

舗装面の状況

高圧線下の施工区間で床版架設機を使用
 油圧リフター4基を設置 せり上げ能力は60t

 床版の撤去・架設には、床版架設機と220t吊オールテレーンクレーンを用いた。同橋のA1橋台~P1橋脚間には橋面上17mの位置に77,000VのJR高圧線が通っており、同区間ではクレーンでの施工ができなかったため、A1からP1手前の床版14枚の取替えを床版架設機で行うことにしたのだ。


A1橋台~P1橋脚間に架かる高圧線(大柴功治撮影。以下=※)

 三井住友建設が開発し、本工事で初採用となった床版架設機は、全断面での床版取替が可能で、橋形クレーン形式ではなく門型油圧リフター形式を採用していることが特徴である。リフターの採用により、労働局による機体の完成検査を省略できることから現場工程にあわせて施工できる利点があるとともに、作業休止時は門型油圧リフターを縮めて高さを低く抑えることで、隣接する供用線への影響を低減できる。なお、門型油圧リフターの横幅や基数を変更することで、1サイクルで取替えできる床版枚数が現場条件に合わせて設定でき、半断面施工の対応も可能となっている。


床版架設機。油圧リフターで床版を上下させる(※)

 本工事で採用された機材は、橋軸方向約20m、橋軸直角方向約8mとかなり大型なものとなっている。橋軸方向の梁両端にそれぞれせり上げ能力60tの門型油圧リフターを有している。床版接合方法に2方向PC構造を採用していることから、新設床版(橋軸直角方向13m×橋軸方向2.4m、厚さ220mm)の重量が標準版で約17t、定着版で約25tとなり、その能力を確保した。


床版架設機全体図

既設床版は舗装を含めて撤去
 高圧線への安全対策では3方向レザーバリアシステムを設置

 施工は片側通行規制時に中央分離帯側桁部のコア削孔から開始し、対面通行規制開始後には中央桁部と路肩側桁部のコア削孔、ワイヤーソーでの地覆切断とクレーンによる吊撤去を行い、既設床版をカッターで切断していった。切断サイズは、床版架設機施工部が舗装を含めた全断面撤去で橋軸直角方向10m×橋軸方向2.4m(重量約18.2t)、クレーン施工部が舗装を含め橋軸直角方向2分割で4.575mおよび5.425m×橋軸方向2m(重量6.9t/8.5t)としている。


コア削孔と地覆の撤去

既設床版の切断

 床版の撤去・架設は、P1近傍からA1側に向けて行う床版架設機での施工を先行させ、架設機での2枚の架設が完了してクレーンの作業範囲外に達した時点からクレーンでの施工をP1近傍からA2側に向けて開始した。高圧線への安全対策では、電線から離隔5mの位置に3方向のレザーバリアシステムを設置して監視するとともに、クレーンには稼働領域制限装置を設置している。


施工概要図/床版割付図

既設床版の撤去。床版架設機での施工を先行させた

 既設床版撤去前には、床版架設機施工区間では1日あたり4枚、クレーン施工区間では8枚(16ブロック)の剥離を行った(1日あたりの撤去枚数より1枚多く剥離し、次ステップのための足掛かりとした)。全断面での既設床版剥離では、500kNの油圧ジャッキ2基を1組として4組(合計8基)の剥離機を用いた。計画では3組(6基)としていたが、中央のG2桁にも均等に力をかけるため、1組増設を行っている。


既設床版の剥離

 剥離後は桁上フランジの研掃と塗装作業を行ったが、雨天時対策として桁上がテント構造になる設備を用意して工程が遅延しない工夫をこらした。


雨天対策として設置されたテント構造の設備

桁上フランジの研掃と塗装作業

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