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北陸道の通行止めを最小限にして施工

北陸新幹線福井架道橋 北陸道を跨ぐ約131mの桁を送出し架設

公開日:2020.11.27

 鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT)は、9月14日夜間と16日夜間に北陸自動車道(北陸道)を跨ぐ北陸新幹線・福井架道橋の桁を架設した。北陸新幹線 金沢・敦賀間(延長約125km)は、現在工事が進められており、同日の14日~16日夜間には福井県越前市内で北陸道を跨ぐ武生架道橋と第3庄架道橋の架設も実施された。自走台車を用いて、約131mの桁を送り出した福井架道橋の現場を取材した。

手延べ機などをあわせた送出し総重量は2,310t
 108ブロックに分割された桁を200t吊クレーンを用いて地組立

 福井架道橋は橋長235mの3径間連続合成箱桁橋で、北陸道を29°の角度で跨いでいる。今回架設したのは、その中央径間部でP2橋脚近傍部からP3橋脚近傍部の曲線(平面)桁となり、桁長は131.3m、鋼重1,950t。手延べ機72mと連結構、後方連結溝をあわせた送出し部材は延長220.3m、総重量2,310tに達した。


福井架道橋 位置図/架設概要(鉄道建設・運輸施設整備支援機構提供。注釈なき場合は以下同)

福井架道橋 全体一般図

 桁製作は、宮地エンジニアリングの千葉工場(市原市)と横河ブリッジの大阪工場(堺市)で行い、陸送で架設ヤードに搬入した。金沢側の太田BLP1橋脚から福井BvP2橋脚の間にベント15基を構築して軌条設備を設置後、200t吊クローラークレーンを用いて108ブロックに分割された桁の地組立を行った。


桁地組立

 桁は主桁断面方向の全31継手の内、12継手の上下フランジ・腹板・上下フランジと腹板の首溶接部は溶接、それ以外は高力ボルトによる接合を行った。桁の外面塗装については、コンクリートの近似色としたほか、北陸道の直上であり、施工後初期に発生する錆汁が道路上に落ちないように耐候性鋼材ではなく、現場添接部の外面ボルト頭以外はすべて金属溶射を採用して、ボルト部は重防食塗装とした。

橋脚施工を途中で止めてベント上に軌条設備を設置
 降下量を7,000mmから650mmに減らす

 軌条設備は架設済みの桁上に設置されることが多いが、桁上の設備では送出し後の降下量が7,000mmと大きく、北陸道の通行止め日数が多くなる。そこで、軌条設備にあたる橋脚は梁上部から約5~7m下がりの箇所で施工を一旦中止し、ベント上に軌条設備を設置することによって、送出し高さを低くして、降下量を650mmに少なくした。


橋脚の梁上部施工を一旦中止して、軌条設備を設置した

 ベントは1基あたり最大約350tの鉛直荷重を想定し、ベント直下の地盤改良を行い厚さ約300mmの基礎コンクリートで補強した上に構築した。架設時の耐震対策として、送出し側の福井BvP2橋脚と受け手側の福井BvP3橋脚の側部に鋼材を組み、地震で桁が横ズレしても鋼材が桁を支えることで落下を防ぐ工夫を行っている。


桁の横ズレ対策として鉛直の鋼材を設置した(大柴功治撮影)

 床版は合成床版を採用。地組立完了後に、合成床版とともに防音壁も設置して送り出している。これは武生架道橋と第3庄架道橋との3橋同時架設や架設後の降下量低減の取り組みとともに、北陸道の通行止めを最小限にするためだ。路盤鉄筋コンクリート(RC)は側径間架設後に厚さ75cm(積雪地帯の仕様。九州新幹線など非積雪地帯は25cmが標準)で打設する。


合成床版の架設

123mを5回に分けて送り出し
 80t自走台車16台と駆動シンクロジャッキを用いる


架設ステップ図 ※拡大してご覧ください

 14日の架設は、北陸道の今庄IC~福井IC間(上下線)を20時から翌6時まで通行止めをして行われた。送出し設備は、軌条上(2軌条4列)に前方台車、中間台車2台、後方台車を配置し、福井BvP2、P3橋脚上に600t×4台の駆動シンクロジャッキ(大瀧ジャッキ製)、P3橋脚部の斜ベントに200t×2台のシンクロジャッキを設置している。前方台車と前方側中間台車(いずれも100t×16台)および後方側中間台車(80t×16台)は従走台車とし、後方台車には80t自走台車を16台(1列につき橋軸方向に4台×4列)搭載した。


前方台車/後方台車

前方側中間台車/後方側中間台車

福井BvP2橋脚上(左)とP3橋脚上の駆動シンクロジャッキ

 当日は5回に分けて送出しを行った。なお、架設前週には4mの試験引きを行い、設備と人員配置の確認をしている。


送出し開始前

 通行止め規制完了後の21時30分ごろから1回目の48m送出しをP2橋脚側からP3橋脚側に向けて開始した。後方自走台車を主推進力、P2橋脚の駆動シンクロジャッキを副推進力としており、「規制時間内に架設を完了させることを考えると、盛替えを極力少なくできる自走台車による送り出しが最適だった」(JRTT)という。
 送出し勾配はレベルであるが、緊急時に備えて後方台車にはブレーキング装置としてレールクランプジャッキを4台設置する安全対策を行っている。また、駆動シンクロジャッキはその名の通り桁を受けるクローラ(キャタピラ)が駆動力を有しており、今回のような送出し部材の重量が大きい送出しの補助推進力として有効だ。


後方台車に設置されたレールクランプジャッキ

 1回目の送出しで前方台車が軌条設備の先端まで達したため、前方台車を解放し28mの2回目送出しを行って、前方側中間台車を解放、さらに10m(3回目)を送り出して、23時30分ごろに手延べ機をP3橋脚部の斜ベントに到達させた。
 P3橋脚到達時の手延べ機先端のたわみ量は計画上で約-1,300mmとなることから、たわみ処理の作業時間を短縮するため、送出し前に手延べ機の先端にトラニオンジャッキ4台を設置しておき、P3橋脚の斜ベント部到達後即座にたわみ処理を行えるようにした。さらに、後方側中間台車を解放して、桁後方に盛替えたうえで、12m(4回目)の送出しで手延べ機をP3橋脚に到達させている。
 最後の5回目の25m送出しは、後方台車を従走台車とし、後方側中間台車に搭載した50t水平ジャッキ8台(1軌条に4台)とP2およびP3橋脚上の駆動シンクロジャッキを用いて行い、送出しを完了した。


送出し開始直前

後方自走台車を推進力として送出しが進む

手延べ機がP3橋脚部の斜ベントに到達

たわみ処理後、P3橋脚に到達

1夜間目(14日)の送出し完了(上の写真6枚、大柴功治撮影)

1夜間目送出し完了

16日夜間には62.65mの送出しを行う
 シンクロジャッキと仮受サンドルで650mmのジャッキダウン

 16日は北陸自動車道の武生IC~福井IC間(上下線)を夜間通行止めにして、14日の5回目の同様の方法で62.65mの送出しを行った。後方側中間台車は44m送り出した時点で後方連結構の位置まで移動している。


2夜間目送出し完了

 10月6日には同区間を夜間通行止めのうえ、ベント上の5,000kNシンクロジャッキ(1橋脚あたり4台使用)と仮受サンドルの降下設備により、650mmのジャッキダウンを行った。


降下前支点部(左)と降下後支点部(右)

桁降下完了

 元請は、宮地横河JV。一次下請けは、山建(架設工)、大瀧ジャッキ(ジャッキ工)、城西運輸機工(クレーン工)など。
(2020年11月27日掲載 大柴功治)

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