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WJによるハンチ部の切削高さをこれまでの50mmから30mmに縮小させる装置を開発

阪神高速 守口線の床版取替でHydro-Jet RD工法の改良版を採用

公開日:2020.11.10

 阪神高速道路は、阪神高速守口線の大阪市北区南森町2丁目~西天満5丁目内に供用している守S20の床版取替に、玉出入路で採用したHydro-Jet RD工法と平板型UFC床版を採用している。今回は、集中工事時の床版撤去を短期間で行うために採用したHydro-Jet RD工法に焦点を当て取材した。(井手迫瑞樹)

当該径間の供用状況(阪神高速道路提供、以下注釈なきは同)/桁下は大阪市道が走る(井手迫瑞樹撮影)

ハンチ部の切削高さを50mm→30mmに縮小させるWJ装置を開発
 スタッドの露出長を短縮 仮補強材の薄型化が可能に

 同工法は、まず供用中の高速道路の桁下に吊足場を設置し、床版下面からウォータージェット(以後、WJと表記)を使用し鋼桁と接合部(以後、ハンチ部と表記)のコンクリートを所定の高さで除去して、スタッドを露出させる。この工程を一定区間ごとに行い、ハンチ部を鋼製補強材と特殊モルタルによる仮補強材に置き換える。通行止め後に仮補強材を取り除き、床版を橋軸直角方向に切断、1パネル毎にスタッドを切断して床版を撤去する。供用中に仮補強までの作業を実施することで、通行止め後の作業を大幅に低減にさせることができる。
 さらに今回は、本線施工用に以下のような改良を行った。守S20は、玉出入路と違い本線であるため、ハンチ部に鉄筋があり、その鉄筋の位置関係と、上フランジの幅が変化する事により、玉出入路で用いた仮補強材の使用が困難であった。このため、WJによるハンチ部の切削高さをこれまでの50mmから30mmに縮小させる装置を開発した。切削高さの縮小により、スタッドの露出長が短くなり、スタッドに生ずる曲げ応力などを低減できた結果、要求される仮補強材の耐荷性能が低減でき、薄型化が可能となった。さらに、これまでのフランジを上下から噛むような補強材の把持方法を省略できたため、体積が約1/4に小型化された。この薄型化、小型化に伴い、補強材の素材にロストワックス精密鋳造を用いることが可能となった。

既設床版厚は170mm 鋼板接着施すも現在は疲労耐久性が大幅に低下
 所版取替面積は約600m2

 守S20は、橋長65mの上下線一体型の2径間連続鋼合成鈑桁橋。1967年供用時は、単純合成鈑桁2連の構造であったが、その後に桁連結を行い、連続化した経緯がある。今回はその北側35mのRC床版を取り替える。同橋は6主桁で幅員は17.6m、床版の支持間隔はそれほど広くないが、当初の床版厚は170mmと薄く、80年に床版下面への鋼板接着補強を施している。しかし、定期点検の結果、内部のひび割れや上面の土砂化も出ており、床版を一部切り出して、輪荷重走行試験を行った結果、健全な床版に比べ大幅に疲労耐久性が低下していたことが分かった。接着した鋼板接着との間の浮きはごく一部を除いて見られなかったが、貫通ひび割れが生じており、鋼板の一部で腐食も見られた。そのため該当する約600m2の床版を取り替えることにした。


当該径間の損傷状況

 同橋は、本線橋のため、通行止めによる社会的影響が大きく、期間の短縮が求められる。上下2車線一体構造であるため、道路幅員が大きく、さらに主桁は玉出入路が2主桁に対し、6主桁と多い。こうしたことから、Hydro-Jet RD工法を適用し、通行止め後の作業を短縮することを目指した。同工法は、通行止め後は、床版を複数台のロードカッターで同時に切断し、撤去時はスタッドをプラズマ切断するだけで良いため、ブレーカーによる上フランジ上面コンクリートはつりの必要がなく、施工時の騒音・振動を大きく低減できることも期待された。

Hydro-Jet RD工法の概要

大きく変化するハンチ高
 上フランジ幅も同様


 しかし、現場条件は玉出入路と大きく異なっていた(左表)。本橋は両勾配であり、ハンチ高が76~168mmと大きく変化しており、ハンチ高が高いG2桁~G5桁においては、ハンチ筋が配置されていた。図面上のハンチ筋ピッチは125mmであり、玉出入路で使用した仮補強材の幅は180mmであるため、ハンチ筋と必ず干渉する。また、上フランジとハンチ筋下端の純かぶりの無筋ゾーンは40mmを下回る可能性があり、45mmの高さを持つ仮補強材が装置できない可能性があった。

従来の仮補強材ではハンチ筋に干渉してしまう
 さらに、同橋は支間長が長く、上フランジの幅が230~350mmと変化しており、それに従い、上フランジ端部から外側スタッドまでの距離は37~82.5mmと変化していた。これまでの仮補強材は上フランジを上下から噛むような形(オーバーハング)で設置する構造であるため、スタッドと上フランジ端部の距離に合うように複数サイズの補強材が必要となり、大幅なコストアップが懸念された。このため、玉出入路で適用した方法をそのまま適用することは困難であった。

WJのロッド・ノズルをφ40mmから20mmに細経化
 残存かぶり部に粗面が形成されせん断耐力向上も

 そのため共同研究体阪神高速道路飛島建設・第一カッター興業で構成)は、WJの切削高さの縮小と精度の向上、仮補強材の薄型化及び、小型化を行った。WJに使うロッド・ノズルをφ40mm程度からφ20mm程度に細径化することにより、桁と床版連結部のコンクリート切削高さを50mm±5mmから30mm±5mmに縮小させた。一方、切削高さの半減により曲げ応力などが低減できたことに加え、WJを使用することで残存かぶり部に粗面が形成され、後から仮補強部内に充填する特殊モルタルとの一体化により、せん断耐力の向上も評価に加えた。以上の事から、補強材を小型・薄型化し、重量も従来の約7.5kgから約1.8kgに軽量化できた。さらにオーバーハングが不要となり、ロストワックス鋳造(精密鋳造)が可能となったため、コスト縮減と大量生産も可能となった。

仮補強材を小型・薄型化し、ハンチ筋への抵触を回避できるようにした

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