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西日本高速道路 中国道菅野川橋

45度の斜角を有する菅野川橋の床版取替

 西日本高速道路関西支社福崎高速道路事務所は、中国道の菅野川橋の床版取替えを行っている。塩害を中心とした原因により大きく損傷した現在の床版を取り替える工事で5月のGW明けから8月のお盆前にかけて下り線、9月のSW(シルバーウイーク)明けから12月の降雪前にかけて上り線をそれぞれ施工する予定だ。現場取材した内容を伝える。(井手迫瑞樹)


菅野川橋


 旧床版の上側鉄筋近傍に沿って水平ひび割れ

 損傷状況

 同橋は昭和48年以前の仕様で設計され、昭和50年に供用された鋼2径間連続非合成鈑桁橋である。桁上に載るRC床版の厚さは200㍉で、これを平成2年に15㍉切削し50㍉上面に打設する床版増厚工を施工した。しかし、床版の一部を調査した結果、「旧床版の上側鉄筋近傍に沿って水平ひび割れが出ている」(佐溝副所長)が確認された。ここからさらに生じたひび割れに沿って床版下面も損傷、鉄筋の腐食膨張を招き、一部元々施工時の被り不足があったことも相俟って下側鉄筋の腐食膨張、コンクリートはく離が生じている。一方で、床版増厚部のコンクリートと既設床版の界面に沿ったはく離はほとんど生じていなかった。これは「交通量が比較的少ないため、交通規制の時間を十分に確保できたことから、増厚時の施工にゆとりが生じ、良好な品質を確保できたためと考えられる」(同)としている。


損傷状況①


損傷状況②

 累積疲労、打ち継ぎ目からの浸水、除塩不足の海砂の使用

 では、なぜ既設床版に大きなダメージが出ていたのだろうか。

 一つは、山陽自動車道開通までの累積疲労損傷が考えられる。山陽道は平成9年に供用されたが、それまでは中国道が幹線道路であった。交通量も現在こそ9,000台弱であるが、山陽道開通前は12,000台に達しており、大型車混入率も3割程度あった。そのため走行車線を中心に疲労損傷が蓄積されていったことが考えられる。加えて、旧床版の桁端部付近は旧設計のため打ち下ろし(橋軸方向端部をハンチ的に300㍉程度に厚くする構造)がなく、ジョイント近傍の(段差による)インパクトに対し疲労を生じやすい構造となっていた。その端部から疲労によるひび割れが生じ、漏水により凍結防止剤を含んだ水が回り損傷を拡大したことが考えられる。


継ぎ目部分(赤)

 もう一つは床版増厚時の打ち継ぎ目からの浸水である。下写真は4主桁の中央2本の桁に挟まれた床版の損傷状況である。同箇所は床版増厚施工時の打ち継ぎ目直下に当たり、こうした損傷は延長方向にずっと続いている。即ち床版増厚施工の際に打ち継ぎ目付近 の防水工や舗装の継ぎ目の位置を変えず、継ぎ目が舗装面から防水工、増厚部に至るまでほぼ一直線であったことから継ぎ目に沿って路面上の水が浸水し既設床版に供給され塩害の拡大を招いたものと見られる。ここで興味深いのは水が損傷に与える影響の大きさである。下写真は下り勾配(橋軸直角)側の主桁間の床版下面であるが、エフロが生じており、損傷が中央桁間に次いで大きいことが分かる。これは恐らく継ぎ目から供給された水が擦り磨き現象を惹起して新旧床版のはく離を招き、それによって生じた個所から塩分交じりの水が供給されたか、あるいは旧床版のひび割れに沿って水が下り勾配側に伝い損傷を拡大したかのいずれかであろう。上り勾配側の床版の損傷は殆どなく(下写真)、防水工や打ち継ぎ目対策の重要性が改めて分かる現象である。しかし、裏を返してみると、既設床版がこうした深刻な損傷を生じていたにもかかわらず、路面の陥没や床版の抜け落ちはなかった。これは増厚層の性能が良く(上り勾配側の状況を見ると水密性も確保できていたように考えられる)および既設床版との付着がしっかりとしていたためと考えられる。ただし、ハンチ部や地覆近傍、排水機構近傍は損傷が大きく、中には鋼桁の下フランジ上面付近の腐食や沓の腐食、台座コンクリートの割れなどがあり、一端漏水が生じると広範に損傷が出ることもまた確認されたといえる。


(写真左)ほとんど損傷がない上り勾配側の床版/(写真右)下り勾配側は水の影響ができている


(写真左)ハンチ部の損傷/(写真中)支承台座コンクリートの割れ/(写真右)地覆と床版の打ち継目部からの損傷


下フランジ上面の塗膜劣化、腐食も漏水が原因か

 また、既往の文献調査および塩分調査結果より、適切に除塩されていない海砂使用による塩害も劣化要因の一つであると推定されていることから、疲労、凍結防止剤による塩害、内在塩による塩害など複数の要因によって耐久性が低下していたものと推察される。