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塗膜剥離工法の選択の幅と安全性向上を求めた通達を改正

厚生労働省「剥離剤を使用した塗料の剥離作業における労働災害防止について」を一部改正

公開日:2020.10.22

 厚生労働省は、通達「剥離剤を使用した塗料の剥離作業における労働災害防止について」を一部改正した文書を、19日「基安化発1019第1号」として労働基準局安全衛生部化学物質対策課長名で発出した。同通達は8月に発出されたが、約2か月での改正は異例の短さ。(井手迫瑞樹)

 北陸自動車道黒部川橋で起きた死亡事故などの事例を反映したもので、有効な呼吸用保護具の着用を明記している。また、「剥離剤を吹き付けること等により、労働者が高濃度で剥離剤にばく露するおそれがある場合も、鉛中毒予防規則第40条第1号の「著しく困難な場合」に該当することとし、サンドブラスト工法(ブラスト工法全般を指す)を用いることが可能であること。ただし、この場合においては、可能な限り発生する粉じん量が少ない工法を選択することとし、労働者には有効な呼吸用保護具として送気マスクを使用させること」とするなど、安全性に配慮しつつ、塗膜剥離作業におけるブラストの適用の幅を広げた内容となっている。また、安全義務は基本的には、直上の事業者(例えば四次下請で労災が出た場合、その上の3次下請)にしか問えないが、厚生労働省としては、労働基準監督署を通じて、元請や各発注者に指導していく方針だ。発注者は、事業者(元請以下の施工業者)の技術提案内容や、安全意識、その遂行能力などを事前講習や抜き打ち検査などを行うことで見極め、監督する必要があるが、塗膜剥離手法の手段の幅は確実に広がったといえそうだ。

主な改正点は下記の通り。
・適切な呼吸用保護具の適用
・鉛中毒予防規則第40条第1号の規定により、含鉛塗料のかき落とし業務は、「著しく困難な場合を除き、湿式によること。」を補助する文書である 昭和42年3月31日付け基発第442号「鉛中毒予防規則の施行について」においては、「第1号の「著しく困難な場合」とは、サンドブラスト工法を用いる場合又は塗布面が鉄製であり、湿らせることにより錆の発生がある場合等をいうこと。このサンドブラスト工法を用いる場合は、高濃度の粉じんばく露による労働者への健康障害を防止するため、有効な呼吸用保護具を労働者に使用させること。」とあるが、今回それを明記した。
 ・平成26年5月30日付け基安化発0530第1号「鉛等有害物を含有する塗料の剥離やかき落とし作業における労働者の健康障害防止について」では「剥離等作業は必ず湿潤化して行うこと。湿潤化が著しく困難な場合は、当該作業環境内で湿潤化した場合と同等程度の粉じん濃度まで低減させる方策を講じた上で作業を実施すること。」 とされているが、剥離剤を吹き付けること等により、労働者が高濃度で剥離剤にばく露するおそれがある場合も、鉛中毒予防規則第40条第1号の「著しく困難な場合」に該当することとし、サンドブラスト工法を用いることが可能となった。ただし、この場合においては、可能な限り発生する粉じん量が少ない工法を選択することとし、労働者には有効な呼吸用保護具として送気マスクを使用させることを明記した。
 ・塗膜剥離剤に含まれるベンジルアルコールやジクロロメタンの成分への中毒対策と鉛中毒との複合対策として、送気マスクまたは防塵機能を有する防毒マスクを着用することを原則とした。
 ・剥離剤の吹き付け作業と、剥離剤を吹き付けた後の塗膜のかき落とし作業を近接した場所で同時に行うことは避けることや、剥離剤の取扱い作業は、作業者に体調不良等が生じた場合にすぐに必要な対応が行えるよう、常時作業者の状況を把握できるような体制を確保することを求めている。
 ・とくにジクロロメタンに関しては、気中濃度が高くなり、数十分程度と極めて短時間で吸収缶が破過した事案も認められ、防毒マスクは、吸収缶が破過すると、除毒能力がなくなるので、使用時間及びマスクの状態を作業主任者など作業者以外の者が常時厳格に管理し、定期的に吸収缶を交換する必要があることに留意することを求めている。
(2020年10月22日掲載)

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